本当の基幹システムをクラウドで稼働させるには
昨今、デジタルトランスフォーメーション(DX)の一環として、「アプリケーションのモダナイゼーション」を掲げるITベンダーは多い。アプリケーションのモダナイゼーションという考え方は新しいものではなく、数十年前から、メインフレームで動くアプリケーションのオープン環境への移行は企業にとって課題と位置付けられている。クラウドサービスの導入事例としても、「基幹システムの移行」を主目的としているものが少なくない。
しかし、三澤氏は「どうして、基幹システムがクラウド上で動くと簡単にいってしまうのだろう」と疑問を投げかける。「基本、基幹システムは書き換えないと、汎用的なパブリッククラウドでは動かない。汎用クラウドはシェアド・ディスク型データベースをスケールアップ/アウトさせることは不可能だからだ。汎用クラウドに合わせ基幹システムの書き換えが発生し、莫大なコスト・時間がかかり不安定さにつながる。それを解決したのがOCIで、今まで困難だった基幹システムのクラウド化を実現できるようになった」と、三澤氏は説明する。
また、三澤氏は、レガシーアプリケーションの課題に「スケーラビリティ・柔軟性」「料金体系」「運用の自動化」があるが、OCIに移行することで、これらが解決されると話す。
オンプレミスよりもクラウドサービスのほうがスケーラビリティや柔軟性の点で優れているのは言わずもがなだろう。料金も従量制で、コストのかかる運用も自動化されるので、重厚なレガシーアプリケーションの場合、コストは下がることになるはずだ。
加えて、三澤氏はもっと根本的な問題として、レガシーアプリケーションをOCIで稼働させるメリットとして、セキュリティの強化を挙げる。
「実のところ、基幹システムのインフラにパッチを定期的に当てている企業は少ない。OCIに移行すれば、パッチが定期的に適用され、セキュリティホールがない状態で運用が可能になる。またネットワークとデータの暗号化もそれほど行われていない。OCIに移行すれば、すべての暗号化が実現する。まずは、これが基幹システムの正常な進化ではないだろうか」(三澤氏)
レガシーアプリケーションを正しく進化させる
そして、三澤氏は「レガシーアプリケーションは正しく進化させましょう」と提言する。正しい進化とは何か。その好例として、三澤氏は野村総合研究所(NRI)を紹介した。
NRIは、商用のミッション・クリティカルなビジネス・プラットフォームの運用環境として、「Oracle Dedicated Region Cloud@Customer」(オラクルのクラウド環境を顧客のデータセンター内に設置)を導入し、NRIの専用クラウドとして利用することを決定した。NRIはオンプレミスの基幹システムをほぼ書き換えることなく、クラウド環境に移行することを選択したわけだ。
「NRI様では、巨大かつミッションクリティカルなシステムをクラウド化することを決定した。サービスの安心・安全を担保しつつ、クラウドネイティブのテクノロジーを取り入れ、新しいサービスの開発も視野に入れられている」と、三澤氏は話していた。
さらに、三澤氏は「ヒト・モノ・カネを格納する仕組みは今までにない脅威にさらされており、それらに備える必要がある。ミッションクリティカルなシステムのデータベースを提供するわれわれは、責任をもってこうしたことを訴えていかなければならない。われわれは『ベンダーロックイン』をしているといわれることがあるが、自社製品でお客さまを囲い込みたいわけじゃない。お客さまのニーズにあわせてデータベースを進化させてきたにすぎない。シェアド・ディスク型データベースを汎用テクノロジーでスケールアウトさせることは、どのベンダーもできなかった。そして、Autonomous化し、さらにConverged化した。クラウドネイティブのデータベースとして進化し続けている」と語る。
そして、三澤氏は企業に対し、「レガシーの一言で片づけないで、基幹システムをどう正常に進化させるかを真剣に考えて行くことが重要。一気に夢のような世界は訪れない」とアドバイスする。
DXに関しては、攻めと守りの両面から取り組む必要があるという。攻めのDXとは、ビジネスモデルや新規事業の立ち上げなどを、また、守りのDXとは業務効率化の実現など社内改革を指す。
三澤氏は「守りとなるバックエンドのDXを整備しておかないと、攻めのDXが追い付かない。われわれは、守りのDXの正しい進化を支援するとともに、新しいテクノロジーによって攻めのDXもお手伝いする」と話す。あわせて、「経営者の方には、経営にはヒト・モノ・カネのデータがまずは重要。これらが活用できているか、活用できる仕組みができているかということを考えていただきたい」と三澤氏。
コロナ禍において、社会や企業は変化を求められており、ITシステムのクラウド化もそのひとつと言える。ITシステムのクラウド化にあたっては、DXに関連付けて考えていく必要がある。自社に成長をもたらすDXを実現するために、クラウドをどう活用すべきか。もう一度、改めて考えなおす時なのかもしれない。