●カメラの向こうの観客を呑むような、迫力あるステージングが続く後半戦
休憩明け、後半戦のトップバッターを務めたのはReoNa。まずはMCでカメラの向こうの観客へと語りかけて自身の世界を醸成すれば、昨年夏に発表したキラーチューン「ANIMA」のアコースティックバージョンで自身の出番をスタート。
こちらもアコースティックでも、そこに込められた想いの熱さや総量は変わらない。2番の歌い出しにはぐいっと観る者全てを引き込むようであったし、逆にほぼアカペラとなったDメロで極限まで絞った歌声には濃密な想いが凝縮。スリリングかつアグレッシブな原曲とは異なる方向からの迫力が、この曲にはあった。
そしてピアノの独奏に続けて歌い出したのは、「Disorder」のアコースティックバージョン。彼女が世に出るきっかけとなった、”神崎エルザ starring ReoNa”としての楽曲のひとつだ。彼女の持ち味でもあるウィスパー気味な歌声には、やはりこの曲でも最初から迫力が宿る。
そのうえでどこか切なげな表情で歌い出したかと思えば、一転して表情に力強さを宿らせていくDメロなど、ロッキンな原曲とはまた違った見どころや聴きどころ満載。昨年「ANIMA」を通じてさらに強化された”強さ”を、アコースティックでも現出させられることを証明した。
続いて登場の早見沙織は、まずはスウィングナンバー「eve」から披露。グルーヴ感あふれる歌声が、この場所に似合って似合って仕方ない。元々早見はキャリア初期からキャラクターソングも含めて高い歌唱力が評価されてはいたが、こういった楽曲でしゃくりなども効果的に用いて、よりグルーヴ感をもって歌いこなす巧みさは年々磨かれる一方。2サビではロングトーンの直後にトランペットのソロをエスコートするなど、佇まいも含めて1曲目から早くも”完璧”だ。
続く「yoso」も、メロウ感のあるシティポップを数多く歌ってきた彼女の音楽性ド真ん中の曲。節回しの良さに加え、カメラに正対せず少し斜めに構えて立った2サビをはじめ魅せ方まで含めて空気感を作ってみせる。リズムに乗って自らの歌声を会場中に、いや世界中に向けて響かせていく早見自身は最高に気持ちよさそうで、後奏部分のスキャットなどでは”音楽の生まれる瞬間”を味あわせてくれた。
歌唱後には二度目の出演を喜びつつ、このライブの直前に開催された”アニサマ2021”発表会での自身の発言を引用し「みんなの気持ちを軽くできるステージにできたら」と意気込みを語り、「ESCORT」の披露へ。昨年のアニサマナイトでも歌ったこの曲もまた会場の雰囲気にピッタリのジャジーなナンバー。
2サビ後にはバンドメンバーの紹介からソロプレイの披露へとつなげただけでなく、それぞれの時間をたっぷり取って魅せ場も作る。そうしてオーディエンスを満足させるのと同時に、早見自身もそれを最前で楽しみつつ音に合わせて身体を揺らし、最後にそのリレーを受け取るとパワフルに歌い上げたのだった。
そして最後にもう1曲、カバー曲を歌うことだけを予告して歌い始めたのは、なんとMISIAの「オルフェンズの涙」! ここでは早見は、歌声のもつ力をまっすぐなパワーへと全振りし、今までのどの曲よりも壮大に歌い上げていく。本家のイメージや楽曲に力負けせず、その魅力を見事に引き出してただただ五感を引きつけると、大サビ後にはここでもダイナミックにスキャットを乗せて歌いきり、暗転とともにステージを後にした。
●アニサマへの想い炸裂! トリ・オーイシマサヨシ魂のライブ
そこにサイレンの音が響き渡ると、夜の街の映像を導入に「楽園都市」でこの日のトリ・オーイシマサヨシのステージがスタート。映像通り夜の似合う、情熱的かつスタイリッシュなナンバーに持ち前のハイトーンボイスを響かせていき、ホーンセクションが生きるバンド編成も楽曲の魅力をさらに引き出していく。それらが溶け合って生み出される音楽には、このムーディーなステージにも合うオトナな格好良さがあった。
が。曲明けのMCでオーイシがいつも通りの軽快なトークを展開するなか、突然「ブラボー!」と”アニサマ2021”発表会で司会を担当していた鷲崎健が乱入。爆笑必至のやり取りを繰り広げると高槻かなこもステージに登場し、鷲崎が「なんてカラフルな世界!」の曲題が自身の曲題に酷似している……と主張した流れから、ステージ上の3人によるその「What a Pastaful World ~なんてスパゲティ世界~」の披露へ。
パスタの名を散りばめた軽快なラブソングを3人で楽しげに歌っていくと、Dメロには好物のペペロンチーノを食してご満悦の大橋彩香のワイプまで登場。ここまでなんでもありな1曲をただの悪ふざけにしなかったのは、ステージ上の3人の確かなボーカル力あればこそだろう。メインボーカルを務めた鷲崎の歌声は高音部では澄み、要所要所ではハスキーな成分を付加してオーイシとも早見とも違ったソウルフルさを現出。オーイシも女声パートのハモを原キーで歌うなど、それぞれのテクが光っていた。
盛り上がりそのままに、再びオーイシ個人のターンへ。作品のタイトルを織り込んだ”THE アニソン”である最新シングル「世界が君を必要とする時が来たんだ」を高らかに歌い、非常にキーの高いサビもスカッと歌いきる。他者への楽曲提供も多いオーイシだが、自身が生み出す彼にしか歌えないアニソンがたしかに存在することを再認識させられた。
ラストナンバーを前にオーイシが、初出場の年と昨年のアニサマナイトの2回自身を救ってくれたアニサマへの感謝を述べる。そして「僕にとってのヒーローは聴いてくれる皆さん。そのヒーローが活躍できる場所を一生懸命作ってくれるのがアニサマ」と熱い想いを語ってから、ラストナンバーとして歌ったのは「英雄の歌」。
イントロが流れた瞬間映像はモノクロになり楽曲自体のシリアスさを際立たせ、オーイシの表情も真剣な……いや、この歌を絶対に届けきるという信念が乗った魂の表情。直前のMCも相まって、世界中の”英雄”一人ひとりが彼の一挙手一投足に心を揺さぶられっぱなしだったはず。それが今、"アニサマナイト2"という場で最後の1曲として発信されたことにも、大きな意味を感じずにはいられなかった。
イベントのラストを飾ったのは、出演者全員による「なんてカラフルな世界!」。オーイシのタイトルコールと同時にイントロが始まり映像に再び色が与えられると、オーイシに呼び込まれた全出演者がステージ上に勢揃い。画面には、各パートを担当するアーティスト直筆の歌詞が同時に表示されており、この日バージョンのスペシャルなリリックビデオを生で生み出していたかのよう。
度々ハーモニーを重ねていた鈴木と早見をはじめ関係の深いアーティスト同士で息を合わせる場面も挟みながら、最後はとにかく楽しく華やかに笑顔でちょっと気の早い夏祭りは幕を下ろしたのだった。
ED映像の最後のメッセージ通り、いよいよ次は”アニサマ2021”。2年ぶりにさいたまスーパーアリーナに帰ってくる世界一カラフルなアニソンフェスが無事開催されることを、2万8千人の”英雄”が会場に集える日が来ることを、心の底から願うばかりだ。
●Animelo Summer Night Ⅱ in Billboard Live
2021.03.14
【SET LIST】
M1.Anti world(King of Anison ver.) / 高槻かなこ
M2.プラチナ / 高槻かなこ
M3.夜空 / 鈴木みのり
M4.エフェメラをあつめて / 鈴木みのり
M5.Groovy! / 早見沙織×鈴木みのり
M6.START DASH / 大橋彩香
M7.ヒトツニナリタイ -Acoustic Ver.- / 大橋彩香
M8.シンガロン進化論 / オーハシアヤカ×オーイシマサヨシ
M9.NOISY LOVE POWER☆ / 大橋彩香
M10.ANIMA -Acoustic ver.- / ReoNa
M11.Disorder -Acoustic ver.- / ReoNa
M12.eve / 早見沙織
M13.yoso / 早見沙織
M14.ESCORT / 早見沙織
M15.オルフェンズの涙 / 早見沙織
M16.楽園都市 / オーイシマサヨシ
M17.What a Pastaful World ~なんてスパゲティ世界~ / 鷲崎健 feat. オーイシマサヨシ&高槻かなこ
M18.世界が君を必要とする時が来たんだ / オーイシマサヨシ
M19.英雄の歌 / オーイシマサヨシ
M20.なんてカラフルな世界! / 高槻かなこ、鈴木みのり、大橋彩香、ReoNa、早見沙織、鷲崎健、オーイシマサヨシ