内田有紀を更新し続けている

――ちなみに『ドクターX ~外科医・大門未知子~』シリーズで演じる麻酔科医・城之内博美役は、ご自身の中でどのような位置づけになりますか?

私にとって、同じ役柄をこれだけ長く担当させていただくのは初めての経験だったので、ある意味「自分の核となる役である」と思います。「城之内先生がいるからこそ、違う役柄としても飛躍できる」といったような気持ちが、ここ何年かずっと私の中にもありました。私にとって大変大切な役柄です。

――“ショートカットの内田有紀”から、年齢を重ねてさまざまな役柄を経験し、本作で妖艶な相子を演じるに至るまで、ご自身のなかではどのような変遷があったのでしょうか。

私はもともと体育学校出身で、体育の先生になりたかったくらいなので、きっとDNA的には体育会系なんだろうとは思うんですが、デビュー直後は「ボーイッシュで、明るくて、元気な内田有紀を演じ切らなきゃ!」って、任務を背負いこみ過ぎていた部分もありました。一度そのイメージが定着したからには、期待してくださるファンの方々を裏切ってはならないと。でも、結婚して一度この世界を離れてから再びこのお仕事を始めるにあたり、「女優として覚悟を決めなければ残っていけない」ということが分かり、「誰にどんな風に思われても良いから、いまの自分の全てを使って演じなければ!」と思っていた頃、『最後から二番目の恋』の長倉万理子役が巡ってきた。そこで、いまの自分のお芝居では、貴一さんにも(小泉)今日子さんにも全く追いついていけないことを思い知らされ、改めて演技コーチについてもらい、お芝居の勉強をし直すことにしたんです。女優として大きな意識改革が起きたことで、自分の中にあった女性的な部分も自然と出せるようになり、「内田有紀にはこういう役だよね」という固定概念が外れて、演じる役の幅が広がってきた。その結果として、「高須相子」という役を呼びよせられたんじゃないか、と思っているんです。

――決して20代の頃に「北区つかこうへい劇団」でお芝居を学んだことだけが転機になったわけではなく、30代に入ってから“内田有紀像”を常に更新してきた、ということですね。

そうですね。まさに「内田有紀を更新し続けている」という言葉に尽きると思います。「つかこうへい劇団」で学ばせていただいていた頃の自分はまだ若くて、生意気でした。若さゆえに乱暴なところもあって深く掘り下げることもしないから、つかさんが教えてくださったことも、あの頃はまだ自分の身体に叩き込めていなかった。そこから一旦リセットして、30代になって再び戻ってきた私をもう一度奮い立たせてくれたのが、『最後から二番目の恋』のあの役だったんです。貴一さんを始め、身を削るようにして演じていらっしゃる先輩方の背中を目の当たりにしたときに、「役者として自分ももっと変わらなければ!」という強烈な思いが沸き起こったんです。

――そして今回、中井貴一さんと再び対峙されたという訳ですね。「高須相子」という強烈な役柄を経て、これからどんな景色が見られそうですか?

放送が始まって、視聴者の皆さんが相子をどんな風に捉えてくださるのか正直怖い気持ちもありますが、いまの自分が精一杯、真摯に向き合った作品なので、楽しみでもあります。きっとその反響を受けて、また次の景色が少しずつ見えてくるんじゃないかと思っています。相子の存在は私の女優人生においても深く突き刺さり、そう簡単には抜け切ることがなさそうです。でもこれも自分の宿命だと受け入れて、もうしばらく相子と一緒に歩いていこうかと。掴めそうで、なかなか掴めない相子のことを、いますぐ手放すのは惜しいので(笑)。