――ご自身が仮面ライダー(クロノス)に変身することを知ったとき、どう思われましたか。

出演して初めのころは、まだ自分が"変身"できるなんて思ってなかったんです。出番も少しだけだったのが、その後もちょこちょこ出番をいただき、あるとき「仮面ライダーになってもらいます」と言われて、あまりの驚きでひっくりかえりましたね(笑)。まさか40歳を過ぎて仮面ライダーに変身できるなんて、想像もしていませんでした。

もう、めちゃくちゃうれしかったですよ。何といっても仮面ライダーになることは、もしかしたら宝くじに高額当選するよりも確率が低いんじゃないかと思うんです。子どものころに仮面ライダーの変身ベルト玩具を着けてライダーごっこをしていた僕が、本物のベルトを着けて、最強の仮面ライダーに変身できるなんて……。これは、心してかからなければいけないなと、気持ちを引き締めました。

――仮面ライダークロノスの姿を初めてご覧になったときの印象を教えてください。

檀正宗の初"変身"シーンを撮影したのはものすごく寒いロケ地で、合間にドラム缶に火をくべて暖をとっていたのを覚えています。このときクロノスを初めて見て「こんなにカッコいい仮面ライダーに変身できるのか」と喜んだのと同時に、これは責任重大だなと、さらなるプレッシャーを感じました。

――エグゼイドをはじめ、すべての仮面ライダーを圧倒する"ラスボス"となるクロノス/正宗を演じるにあたって、どのようなことを意識されましたか。

何よりまず"悪役である"という部分を強く意識しました。それまでも俳優として舞台に立ち、いくつかの悪役を経験してきましたから、それらの風味を織り交ぜつつ、自分にしかできないクロノス/正宗のカラーを出したいと思って演技しました。

でも、意識して深く突き詰めていったのではなく、毎回の台本をいただいて役を演じていくうちに、自然と表現がエスカレートしていった感じかな(笑)。正宗はよく"絶叫"をするのですが、これは普段の音楽活動で出す声とは、出し方がぜんぜん違っていました。声帯を痛めるかなとも思いましたけれど、そんなことを言っていられない。クロノス/正宗にのめり込んで、しっかりと取り組むことが大事だと思っていました。

一度、正宗の"叫び"を撮ったとき、周りにいた鳩の群れがびっくりしてぜんぶ飛び立ってしまったことがありました(笑)。一回"絶叫"演技をやり出すと、もう止められないというか、どんどんテンションが上がっていくんです。最終決戦のころになると、もうノドが枯れるほどずっと叫んでいましたね。もう正宗の決めゼリフ「君たちは、絶版だあああああっ!」が口癖になりました(笑)。

――『エグゼイド』で貴水さんは「Wish in the dark」「JUSTICE」と2曲の挿入歌、そして『ゲンムVSレーザー』では主題歌「Believer」を歌われていますね。2018年の『超英雄祭2018』に出演されたときは、日本武道館へ集まった大勢のファンの前で「Wish in the dark」「Believer」を熱唱された上、正宗になりきってのハイテンションなMCも最高に盛り上がりました。

あのときの興奮もすごく記憶に焼き付いています。客席のみなさんがペンライトの色をクロノスカラーの"緑"に切り替え、緑の光でいっぱいにしてくれました。あれはとても気持ちのよい光景でしたね。ファンのみなさんからの熱き応援に感動して、思わずステージで「No絶版だあああああっ!!」と叫んでいました。あんまり「絶版だああああっ!」ばかり言ってるとみなさん気が滅入ってしまうかなと思い、じゃあ僕の言うことを聞く人は絶版にはしない、No絶版だ!って、勝手にフレーズを作っちゃったんです(笑)。

――ファンの気持ちを大事にされる、貴水さんのあたたかな真心にも感動します。

『エグゼイド』が放送されていたころの出来事なのですが、お母さんと一緒に撮影現場を見学に来ていた小さなお子さんが僕のところに駆け寄ってきて、自分で描いたクロノスの絵をプレゼントしてくれました。そのとき「仮面ライダーに出演するというのは、こういう子どもたちの思いを受け取ることなんだ」と感じ、心を打たれたんです。

あの子たちが成長して大人になったとき、ふとクロノス/正宗のことを思い出してくれたりするのかな……なんて思うと、もう「君たちはみんなNo絶版だ!」と言ってあげたくてたまらなかった(笑)。普段あまり子どもたちと接する機会がなかったものですから、お手紙やイラストをたくさんいただいて、本当に励まされましたね。だからこそ、多くの人々が楽しめるエンターテインメント作品を作れるよう、いっそう頑張らないといけないぞと、奮起しつつ撮影に臨んでいました。

最近は海外の仮面ライダーファンからのメッセージをいただくこともあり、ライダー人気のすごさを感じます。いつも仮面ライダーを愛してくださるファンのみなさんからは、とてつもないパワーをいただいています。

僕自身が仮面ライダークロノスのファンですし、人生を良い意味で変えてくれたキャラクターとして強い愛着を持っています。これからも出演オファーをいただければ、いつでも駆けつけますよ。"強く思えば、願いは叶う"というのが僕の信念なのですが、今回クロノス/正宗が復活したことで、それが証明された気がします。『仮面ライダーゲンムズ -ザ・プレジデンツ-』、楽しい作品となっていますので、どうぞお楽しみください!

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