3つめのポイントは、電子シャッターの進化です。一般的に電子シャッターといえば、無音、無振動で撮影できることや、超高速シャッター、超高速連写が選べることなどがメリットとして挙げられます。その一方で、動体ゆがみが生じやすい、ストロボが使えない、フリッカーレス撮影ができないといった制約もあるため、これまでは利点と欠点を天秤にかけて使用するか否かを判断する必要がありました。
そんなデメリットのほとんどを高いレベルで解消したのがα1の電子シャッターです。動体ゆがみを抑えるアンチディストーションシャッターがα9 IIからさらに強化されたほか、電子シャッターでのストロボ撮影や、電子シャッターでのフリッカーレス撮影に新たに対応しています。「今まで撮れなかったものが撮れる」というのは言いすぎですが、「撮りにくかったものが撮りやすくなる」ことは間違いありません。
細かい部分にも使い勝手を高めるさまざまな改良が
4つめのポイントは操作性の向上です。AFをはじめとする操作レスポンス全般がいっそうスムーズになったほか、タッチパネルの反応が改善されたこと、メニューUIのリニューアル、フルサイズのHDMI端子の採用など、各部にさまざまな改良が施され、これまでのどのαよりも気持ちよく、ストレスなく扱えるようになっています。
高価だからこそ撮影意欲がいっそう高まる
α1を日々使えば使うほど、カメラとしての使い勝手のよさを実感できるようになってきました。まだ試していない機能もあるので、今後さらに新発見もありそうです。
ただ、100%満足ではありません。今のところ、私の採点は「90点」。特に気になるマイナスポイントは、高解像である反面、被写体によってはモアレや偽色が生じやすいことです。α1以前にメイン機として使っていたα7R IVは、生地の目が細かいスーツなどの一部の衣類を撮るとその表面に稀にモアレが生じ、ビジネスシーンの撮影が多い私の仕事用途ではずっと悩ましい問題になっていましたが、その悪癖はα1でも見られます。ちなみに、α9 IIではモアレはあまり目立ちません。
また、液晶モニターのサイズが他社の上位機に比べて小さいことや、液晶モニタが左右方向に可動しない点も不自由です。それらが必要なときは、外部のHDMIモニターやスマホにつなぐべきなのかもしれません。
トータルで見れば、写真を撮るためのハードウエアとして(マイナス10点はあるものの)ほぼ快適に使える、非常に自由度の高いカメラといっていいでしょう。88万円という価格については、プロ/アマチュアを問わず、どんなときでも失敗をせずに狙った被写体を確実に捉えられる道具だと思えば惜しくないはず。筆者のような「少しでも元を取ろう」と考える貧乏性カメラマンの場合、高ければ高いカメラであるほど撮影意欲がいっそうわき、結果として仕事が捗る、という効果もあります。