――昨年の『M-1』では突然大きな声を出すという少し変えた漫才を披露されましたが、審査員の松本人志さんは「“静”の漫才を期待していた」と。あの声を張り上げていくスタイルは、変革願望の表れだったのでしょうか?
伊藤:もちろん勝つためにという気持ちはありましたが、僕、普段からデカイ声を出すこともあるんですよ(笑)。だから、あの日無理していたわけではないんです。ただ、去年に関しては声の出し方も無理くりな感じで、流れの中ではなく、急にワンポイントで爆発的にブチ切れて、そこから無理やり着火していく感じでした。そういう粗さがバレちゃったかなと。
――そこを面白いと感じる人もいると思いますが。
伊藤:僕らもそうだと踏んだんですけどね(笑)
畠中:実は一昨年の『M-1』に出た時に、何カ所か伊藤がデカイ声で突っ込む瞬間があったんです。それがネタの中でめちゃくちゃ大きな笑いを生むポイントだったので、そこから一年、ネタを作っていくなかで、そういうポイントを増やせば増やすほど大爆笑が生まれるはずだという感覚がありました。伊藤がデカイ声を出すやり方はキー・ポイントだったはずなんです。
伊藤:でも、去年の予選の時に感じたのは、準々決勝で決勝よりもデカイ声を出すネタをやったんですけど、反応がイマイチよくなくて。その時確かに、求められていることと違うのかなと思ったんです。これが松本さんに言われたこととリンクするんです。そういうのではないと、オズワルドは。ネタの中でアクセントとして大きな声を出すことはいいけれど、それをメインで進めるのは違うと。松本さんが言ってくれたことは、準々決勝のネタの反応を思い出すと、ああ、こういうことなのかなって思いました。
――松本さんは『松本家の休日』で、『M-1』での発言の真意を説明し、「大きい声を出すというより、テンポをあげていくやり方がいいと思う」と明確なアドバイスをされていましたね。
伊藤:松本さんが審査の日よりかみ砕いて説明をしてくれて、チューニングを合わせていったほうがいいと。あの熱量の調整みたいなものは、コンビの課題というよりも、僕の課題だと思っています。
畠中:松本さんに言っていただいたことで、なるほどなと。それだ!と僕らも思ったので、今後のネタを作る上で参考にしたいと思っています。
伊藤:なんとなくの方向性は見えてきているけれど、一番やっかいなのは、それをお客さんが気にしすぎないでほしいなと。観ていると時に僕がデカイ声出したら、「お! デカイ声出したぞ!」となっちゃうのはダメじゃないですか(笑)
畠中:「松本さんの言うことを守っていないじゃないか」って(笑)
伊藤:逆に小さい声で言っていても「そっち取りましたか」みたいな。
――同じく審査員のオール巨人さんには大きい声を出したほうがいいと正反対のアドバイスをもらい、それは迷いますよね。
伊藤:これが難しいのが、「迷いません」と言い切っても失礼なんですよね。だからノーコメントにします(笑)。松本さんも巨人師匠も、僕たちがどっちを選ぼうが好きにしろ、だと思うのですが。
畠中:でも、『松本家の休日』で指摘されるまでは明確な答えを見つけていなかったんです。それを受けて、まだお客さんの前で完璧に出来たネタを披露していないので、もちろん単独ライブではそれを意識してネタを作ります。どういう反応になるか楽しみですね。
伊藤:ただ、単独ライブには間に合わないので、年末までに完璧に仕上げる感じです。
畠中:もちろん単独ライブでいいネタを出すつもりですけど、その後も、めちゃくちゃネタを変えるっていう意味です。1年とか1年半かけて少しずつ直していくので、本当に種だけですね。とりあえずは。