この性能で38,000円前後という実売価格は、日本メーカーの交換レンズとしては“撒き餌”ともいえるほど格安です。もっとも、タムロン製品は数十万円するようなレンズはないので、ただ単に良心的なのだと思います。

もちろん、改善してほしい部分も見受けられましたので、あえて難点を挙げておきましょう。本体にはスイッチなどの突起部がなく、フォーカスリングもくるくる無限に回る仕様。さらに鏡筒の表面も滑りやすいため、カメラとの脱着がしづらいのです。常用レンズとして、カメラにほぼ付けっぱなしにする人が多そうなので、そこはタムロンも割り切ったのかもしれませんが…。

オートフォーカスの動作が緩慢な点も気になりました。おおよそのポイントまで動いたあと、前後への微調整があります。これはファームウェアで改善できそうな気がするので、ぜひともお願いしたいところです。

悩ましいのが、3本のうちどれを買うかということ。特に、20mmと24mmで迷う人が多いのではないでしょうか。個人的には、カメラ1台レンズ1本で身軽に出掛けるなら、やはり35mm。広角好きならば、24mmで一本勝負も楽しいと思います。街角を撮り歩くなら24mmと35mmの組み合わせがハマりますし、20mmを同じタムロンの28-75mm F2.8と組み合わせるのも合理的じゃないかなと思います。異色ともいえる広角トリオですが、こうして選ぶ楽しみを与えてくれたタムロンにあっぱれ!です。

作例(35mm F/2.8 Di III OSD M1:2)

  • 柔らかさや優しさが感じられるボケ味はさすがタムロン。やや口径食(周辺の丸いボケがラグビーボールのような形に歪む要因)が見られるが、このレンズの小ささや安さを考えたら十分すぎる性能だと思う(α7R IV使用、ISO100、1/160秒、F2.8)

  • 渋いトーンも情感たっぷりに再現。F2.8のほどよい被写界深度の浅さが、立体感も生み出してくれた。被写体や状況を選ばないレンズともいえる(α7R IV使用、ISO200、1/80秒、F2.8)

  • 広角マクロの魅力は背景や遠近感のアレンジの多彩さにある。並んだ空き瓶を真上から広角で撮ることで放射状に見せた(α7R IV使用、ISO200、1/160秒、F2.8)

  • 交差点で信号を待っていたら、たまたまカートを操る外国人の一群が。慌てて撮影したのでフレーミングが少し中途半端になってしまったが、出会い頭に強いのも35mmの魅力だ(α7R IV使用、ISO100、1/8秒、F2.8)

  • 発表直後、F2.8ではボケが物足りない…という意見も散見したが、決してそんなことはない。とりわけ35mmは絞りを開ければボケを生かした写真も撮れる。スナップが楽しくなる一本だ(α7R IV使用、ISO100、1/8秒、F2.8)

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