――パブリックイメージとしては明るい人ですよね。確かにボヤキのイメージはありますが(笑)。

明るいんですよ。家に帰ったら全く喋らないとか、そういう人ではないですけど、まずは1回発想がネガティブに入るっていうね。来週は楽しみにしていた家族旅行だぞとなっても、「どうせ雨くらい降るんでしょ」とかね。まあ、実際、僕の場合、雨はよく降るんですけど(笑)。

――雨男でしたね。ちなみにそういう反応になるのは、子どもの頃からですか?

子どもの頃からなんじゃないかしらね。ネガティブとポジティブが共存してるんですよ。大学に入るときも2年浪人して、最終的に行きたい大学には行けなかった。僕にとっては大変最低な出来事で、唯一の挫折なんですけど、でも振り返ると、その挫折だけが今の僕を支えてるんです。あの大学に行ったから、NACSにも出会えたし、この仕事をすることに繋がった。最大の挫折が、今に繋がっている。だから、すべてをポジティブに考えられるんです。何があったとしても、僕にとって必要なことなんだなと。そういった意味で細かいことにはネガティブだけど、大きく見るとポジティブなんです。どっちよ! みたいなね(笑)。

  • (C)2021「騙し絵の牙」製作委員会

■年をとっても、みんなから愛される存在でいたい

――これだけ人気者で仕事が途切れなくても、不安はつきまとうものですか?

ありますよ。でも私の場合、ワーカホリックではないから。休めるんだったら休みたいし。ほんとにありがたいことに、事務所と話し合いながら「これやりたい」「それやりたい」とやってきたら、確かに忙しいんだよね。でも非常にギャンブル性の高い仕事だから、やっぱり不安にもなります。こうやって主役ができるのはありがたいけれど、主役はどうしても結果を背負いますし。それによって自分のイメージを左右されることにもなるから、その辺なんかはネガティブになりうるポイントではありますよね。

――本作に登場する國村隼さん演じる大作家の二階堂は、速水以外からは「腫れ物に触る」ような扱いも見られます。この先、重鎮と言われる立場、超ベテランになったときにはどうありたいですか?

あんまり怖い人にはなりたくないよね。年をとっても、みんなが気軽にいじってくれる人になりたいというか。いじられない人にはなりたくないんです。ただそこは難しくてね。バカにされるのとは違うから。バカにされるわけじゃないんだけど、いじってもらえる気軽さは持っていたいと思いますね。

――「洋ちゃん」と愛される。

そうそう。先輩たちでいうと、大杉漣さんとか、小日向文世さんとか、浅野和之さんとかね。あの辺の方々って、みんな気軽に接することができるんですよね。だけどみんなから愛されていて、尊敬されている。人間としてもいい人で、そして何よりお芝居が素晴らしいからだよね。そこはすごく大事なところだし、そのうえで、自分がいると緊張するような人にはなりたくないと思いますね。

――最後に完成した映画の手ごたえをお願いします。

この映画の1番面白いところは、ストーリーだと思うんです。騙し騙されという展開。観てくれた関係者の評判もとても良くて。こないだ見たネットニュースで、映画評論家の人が選んだ3月公開のおススメ映画でも1位になってて嬉しかったなぁ。意外だったのは、僕の北海道の事務所の社長は女性なので、女性目線で観ていて、松岡茉優ちゃん演じた高野とか、木村佳乃ちゃんが演じた江波とか、女性たちの頑張りがよかったと言ってました。雰囲気的に男性の映画と思われがちだけど、女性の活躍がカッコイイ映画なんです。

■プロフィール
大泉洋
1973年4月3日生まれ、北海道出身。俳優のみならず、タレントとしても高い人気を誇る。大学在学中より続く演劇ユニットTEAM NACSのメンバーでもある。96年10月から出演を始めた『水曜どうでしょう』が人気を博し、北海道以外でも知名度を増していく。04年から本格的に東京へ進出し、『救命病棟24時』『ハケンの品格』などで俳優としての力を認められ、今や押しも押されもせぬ主演俳優となった。『探偵はBARにいる』『駆込み女と駆出し男』で日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞。第71回NHK紅白歌合戦では白組司会を担当。今年は柳楽優弥とW主演を務めるNetflix映画『浅草キッド』も控える。