イヤホンなどのオーディオ製品を日々チェックするのは、筆者にとって仕事であり趣味でもある。こういう時世なので電車に乗る機会はめっきり減ってしまったが、かつて通勤時には他人の耳元をチラ見してどのメーカーのイヤホン(あるいはヘッドホン)を使っているのかをよくチェックしていた。星の数ほどあるイヤホンメーカーの中でも“いぶし銀”のような存在感を放っていたのが、これから紹介する「RHA」だ。

  • RHA TrueControl ANC

    RHA TrueControl ANC

RHAは、英国スコットランドの“音楽の都”グラスゴーに本拠を構えるオーディオブランド。手頃なクラスから最上位の有線イヤホンまで、シルバーのアルミ素材を使ったデザインが印象的で、近年はワイヤレスイヤホンも精力的に送り出してきている。

私のようなイヤホン好きはさておき、一般的には知る人ぞ知るといったブランドかもしれないが、身につけているユーザーを見かけてしまった暁には「おっ!」と二度見、いや三度見くらいはしてしまう(実際した)。要は、RHAは個人的にも気になるブランドである、という話だ。

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    RHAは英国のオーディオブランド。パッケージにはユニオンジャックがプリントされている

そんなRHAから2020年末に登場した、同社初のノイズキャンセリング(NC)搭載完全ワイヤレスイヤホン「TrueControl ANC」(実売34,900円程度)。“類を見ないNC性能”や、“NC常時ONでも⾃然なサウンド”を謳い、さらに上質な外観デザインも目を惹く。実機にじっくり触れる機会を得たので、使って分かった良いところ・気になるところを紹介しよう。

  • RHA TrueControl ANC

    在宅ワークの味方にも。“デキるビジネスマン”感を演出してみた

クールなデザインのイヤホン&ケース

TrueControl ANCのパッケージを開封すると、アルマイト処理を施したアルミフレームで覆われた充電ケースが真っ先に現れる。触るとひんやりしており、RHAのロゴが入った部分はマットな仕上げでさらりとしている。RHA製品らしいクールな佇まいだ。

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    Xperia 10 II(左)とTrueControl ANC(右)を並べたところ

このアルミフレームを指で押し上げ、回すようにスライドさせながら開くと、中からイヤホン本体が登場する。完全ワイヤレスのケースにしては比較的大きなサイズだが、高級感ある仕上がりが所有欲をくすぐるだけでなく、「いい音が聞けそう」という期待も高まる。

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    アルミフレームをスライドさせると、イヤホン本体が現れる

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    充電ケースのボディをアップで見たところ。高精度に加工されている

イヤホン本体の外装も、充電ケースと同じようなマット加工が施されていて触り心地が良い(ただし、若干指紋が目立つこともある)。デザインも特徴的で、一般的な完全ワイヤレスイヤホンと違って耳に当たる部分に滑らかな凹凸があり、これが耳にピッタリとフィットすることで外れにくく、遮音性も高めてくれる。イヤホンファンならすぐに「(耳型を採って作る)カスタムイヤホンに似ている」と気付くだろう。

実際に耳に装着してみると、このデザインは理に適っていることがよくわかる。耳穴(外耳孔)だけでなく、その周囲のくぼみを埋めるようにイヤホンがフィットするので安定感があり、NCオフでもある程度の遮音効果が得られる。NCをオンにすればさらに外の喧噪が遠ざかり、自分が聞きたい音を集中して聞ける。音楽再生時にボリュームを上げすぎずに済み、結果として耳にも優しい環境が手に入るので、難聴防止にも役立つ。

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    イヤホン本体。充電ケースと同じようなマット加工が施されていて触り心地が良い

TrueControl ANCの⾳響設計には、RHAのイヤホン製品のエッセンスを投入。「ワイヤレスイヤホンにおける原⾳再⽣」をテーマに、6mm径ダイナミックドライバーの能⼒を最⼤限引き出す内部設計と、RHAサウンドチューニング技術を採用している。Bluetooth 5.0に準拠し、コーデックはAACとaptXに対応する。

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    耳にフィットするデザイン。内部に6mm径ダイナミックドライバーを備える

ちなみにTrueControl ANCには、イヤホンを外さずにワンタッチで周囲の音を聞ける「アンビエントモード(外音取り込み機能)」が備わっている。NC搭載イヤホンでは当たり前のように搭載されている機能だが、TrueControl ANCの同モードは⾃動で人の声の帯域を強調するように設定されていて、駅のアナウンスやカフェなどの店員の声が聞き取りやすいのが特徴だ。取り込んだ外音のボリューム調整はアプリから行える。

イヤホン単体の連続再生時間は5時間(NCオン時)となっており、実際にNCオン・aptXコーデックで使ってみたところ、ほぼ5時間でイヤホンのバッテリーが切れた。ただ、バッテリーの片減りが起こり、たとえば右側は残量ゼロだが、左側にはまだ4割以上残っていることもあった。左右同時接続やロールスワッピングには対応していないようで、ここは改善を望みたいところ。なお、充電ケースと組み合わせると最大20時間再生できる。

イヤホン本体と充電ケースはマグネットで引き合い、充電用接点が確実にカチッとはまる仕組みを装備。イヤホンをケースから出していざ音楽を聴こうと思ったらしっかりはまってなくて充電されていなかった、というガッカリな事態が起きにくく、安心できる。

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    充電ケースからイヤホンを外したところ。丸いマグネットと、充電用接点が見える

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    イヤホン側のマグネットと充電用接点

ケースはUSB Type-Cの有線充電に加え、Qiワイヤレス充電にも対応している。対応する充電パッドを持っていれば、ポンとケースを置くだけで手軽に充電できるのがうれしい。急速充電にも対応し、約15分の充電で1時間以上再生できるという。

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    充電ケースはQiワイヤレス充電にも対応する

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    イヤホン本体の充電用接点は、開封時はシールで覆われているので剥がすようパッケージに記載されている

専用アプリ「RHA Connect」で自分好みの設定にカスタム

今回は、主にソニーのAndroidスマートフォン「Xperia 10 II」と組み合わせて試用した。TrueControl ANCはGoogleの「Fast Pair」に対応しており、ペアリング状態にしたイヤホンをスマホに近づけるだけで画面に通知が表示され、ワンタップでペアリングが完了。Bluetoothの設定画面を開いてイヤホンの型番を探して……という、ワイヤレスイヤホンにありがちな初期設定の手間が省けて快適だ。iOSの場合は、Fast Pairは利用できないので、普段通りに設定アプリからBluetoothの設定画面を開いてペアリングする必要がある。

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    Fast Pair機能を使ってXperia 10 IIとペアリング

iOS/Android用の「RHA Connect」アプリが用意されており、ここから各種設定ができる。イヤホン本体には各種操作のためのタッチセンサーを内蔵しており、アプリで機能割当をカスタマイズ可能。デフォルトでは、右側イヤホンのスワイプで音量調整、左側イヤホンのスワイプで曲送り/曲戻しができ、どちらもダブルタップでNCモードの切り替え(NCオン/アンビエントモード/NCオフ)が行える。

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    RHA Connectのメイン画面

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    タッチセンサーのデフォルトの機能割当

今回の試用機ではなぜか左側のイヤホンがスワイプ操作をうまく認識しなかったので、スワイプの代わりにダブルタップで曲送り、トリプルタップで曲戻しをするように設定した。こういった柔軟なアサインができるのはありがたい。

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    左右イヤホンのタッチセンサーの機能割当をカスタマイズできる

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    左側のイヤホンのスワイプ操作をオフにし、ダブルタップに曲送りを割り当てた。トリプルタップの項目は自動で追加され、ユーザーが任意の機能に変更することはできない

ほかにも、イコライザーによる音質調整が可能で、デフォルトの「中性」を含む5種類のプリセットが用意されている。ユーザーが自由にイコライザーをカスタムして保存することはできないが、個人的には(このあと触れるが)イコライザーなしでも充分満足できるサウンドが楽しめた。

イヤホンの耳からの着脱をセンサーで検出すると自動で音楽を一時停止/再生する「装着検出」機能のオン/オフを切り替えたり、音声ガイダンスの言語をデフォルトの英語から日本語などに変更したりといったカスタムもできる。イヤホンのファームウェア更新も行えるので、今後の機能強化にも期待できそうだ(3月5日にはさっそく本体ファームウェア Ver.1.0.0.0.40が提供された)。

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    アップデート中、充電ケース内のLEDインジケーターは黄色く光る