「整いました! 」でおなじみの芸人・ねづっちが、2021年2月27日に著書『会話を整える』(主婦の友社)を発売した。出版元の担当者さんによれば、「リモートワークが増えている中、公私ともに得意な話術を持っていると、円滑に話が進むのでは? 」と考えたという。そこで企画されたのが、なぞかけをはじめとする話術でピン芸人として活躍しているねづっちによる「会話本」だ。本の中には、ねづっちのなぞかけ思考をビジネスシーンで活かすヒントがたくさん詰まっている。
今回は、『会話を整える』の内容をもとに、会話が苦手なビジネスマンも必読な、コミュニケーションのコツ、 会話の整え方についてお話を伺った。インタビューの最後には、得意のなぞかけも炸裂!!
誰とでも円滑にコミュニケーションをとるためには?
――ねづっちさんはこれまでにもなぞかけの本を出していらっしゃいますが、今回はそうした著作とはテイストが違いますよね。
ねづっち:そうですね。編集者さんから、なぞかけに必要な思考はビジネスシーンでのアイデア出し、発想力にもとても役に立つのではないかということで、単なるネタ本ではない会話本を書いてみませんか、とお話をいただきまして。僕の単独ライブを観に来てくださったり、すごく熱心にやってくださったんですよ。今まで、純粋になぞかけ本ばかり書いてきたので、新しいジャンルというか、そういうものを書いてみようかなって。
――新境地という感じですか。
ねづっち:いやあ~、新境地かどうかはわからないですけど(笑)。1人だったら不安でしたけど、色々お手伝いもしていただいたので。
――ビジネスマンの中には、人とのコミュニケーション、会話に自信がないという人も多いと思います。本を読ませていただくと、ねづっちさんもけっして喋るのが得意ではなかったそうですね。
ねづっち:はい、得意ではないですね。
――どうやって自信を身に着けたのでしょうか?
ねづっち:いや、自信は今もないんですよ(笑)。ないんですけど、とりあえず暗い人って話しづらいじゃないですか? だから、普段心がけているのは、人とはできる限りにこやかに明るく接した方が円滑になるんじゃないかっていうことぐらいですけどね。あとは雑談の中で趣味を聞いたりして、例えば共通の趣味だったらそこから話が膨らみますし、違う趣味であってもそれがどんなものかいろいろ聞いてくれると、やっぱり人って自分の好きなものに対して饒舌になるじゃないですか? うちの事務所の社長も、歴史のことを聞いたらめっちゃ話してくれるんですよ(笑)。そうやって話を引き出すというか、そういうことをすると相手も普通に接してくれるというか、敵視はしないと思うんです。それが円滑にコミュニケーションを取るコツなんじゃないかと思います。
――そういうことを考えるようになったのは、芸人さんになってからですか?
ねづっち:まあ、芸人になってからですね。若いときはそんなこと考えもしなかったですから(笑)。
――芸人としてブレイクするまでに、色んなアルバイトも経験されたと思うんですけど、そういう場での同僚や上司との接し方を考えたこともありましたか。
ねづっち:もちろんあります。基本、どんな人も喜怒哀楽があるわけで、普段ムスッとしている人も、のべつムスッとしているわけではないので。やっぱりにこやかに話しかけて、仕事以外の雑談で距離を縮めていくしかないですよね。
プレゼンには「なぞかけ」を活用できる
――では、演芸場のステージに立つときに、お客さんの興味を絶えず引き続けるためにどんなことを考えていらっしゃるのでしょう。
ねづっち:コンビだったら相方との会話でネタが成立しますけど、僕の場合はピンで漫談をやっているので、常に目の前はお客さんなんですよね。だから、お客さんに対して問いかけるイメージですよね。お客さんを置いて行かないように、僕が一方的に喋ってネタをやるんじゃなくて、ネタの前振りから絶えず問いかけていくようにすると、お客さんは頷いたり、いろいろ反応してくれるんですよ。だから一緒にネタを進めていくイメージでやってます。
――それは客席が満員でも、少なくてもまったく変わらずに?
ねづっち:変わらないですね。もう、コロナになってからお客さんが2人、3人のときもありますから。そっちの方が仲間意識が強くなります(笑)。それだけ少ないと、本当にお客さんと雑談するときがありますから。「どうします? 」って。「ネタっていうか、俺横に座って喋りましょうか? 」とか(笑)。それぐらい言うとすごく笑ってくれますけどね。同じネタをやっても、日によってウケるウケないというのはありますから、その場の空気はすごく大事だと思います。
――プレゼンや会議など、ビジネスシーンに於いても、その場に応じて人との距離を近づける会話を心がけることが大事でしょうか。
ねづっち:そうだと思います。興味を持ってくれなかったらプレゼンとかも聞いてくれないと思うので。僕は社会人経験がないのでイメ―ジですけど、そういうプレゼンをするときって、相手を納得させるというか、「ああ、そうだよな! 」って思わせるのが一番大事だと思うので。この本にも書いてありますけど、説得力を持たせるために、例え話を入れていくとか。「人材採用するときに、とりあえず一斉に確保するけれど、それはミニトマトの掴み取りをするようなものであって、1つ1つは精査していないから、中には質の悪いトマトも混ざっていますよ」みたいな。そういう例えの出し方は、ちょっとなぞかけに似ていると思います。
――なるほど。プレゼンする機会があっても、結構刺さらないことも多いんですよね(笑)。
ねづっち:はははは(笑)。問いかけてみるのも、大事かもしれないですね。一方的に話してもなかなか伝わらないことが多いですから。それに、身振り手振りとか表情もすごく大事だと思います。
――最近は、みんなマスクをしていますから、表情を読み取るのもむずかしいですよね。
ねづっち:そうなんですよ。お客さんも、「これ、今笑ってるのかな? 」というときがありますから。ウケたのかウケてないのかわからない(笑)。
アイデアを生み出す方法とは?
――本の中で「アイデア出しにもなぞかけ思考を」として、ブレーンストーミングについても触れていますね。ねづっちさんご自身が日々アイデアを生み出すためにやっていること、習慣などはありますか?*
ねづっち:習慣としては、1日1つ、1分ぐらいの漫談動画を作るというのを日課としてやっています。それはYouTubeに上げているんですけど、2014年からやっているので7年目で、もう2,700本ぐらい上げてると思うんですけど。
――2,700本! すごい数ですね。それはどうやって作っているんですか?
ねづっち:なぞかけのクイズをするときもあるんですけど、基本は朝起きて、ニュースを見て1分ぐらいのネタにできるものがないかを探すんです。Yahoo!ニュースとか、それこそマイナビニュースさんを見たりとか、自分がネタにできそうなものを探して動画を作るというのを毎日習慣にしてずっとやってます。
――例えばどんなものがありますか?
ねづっち:最近のニュースだと、9歳の孫がおばあちゃんの家で宿題をやっていたら市役所の職員を名乗る人から電話が来て、おばあちゃんが電話を切った後に銀行に行くって言うから、「おばあちゃん、それ詐欺じゃない?」って9歳の孫に止められて、実際に市役所に問い合わせたらやっぱり詐欺だったという話があって。そこから連想するもので何かできないかと思ったんです。僕の場合は、なぞかけも漫談もいつもオチから考えていくんです。この話だと、この子が9歳ということで、「詐欺からおばあちゃんを救済(9歳)しました、この子の年齢と一緒ですね」っていうオチができて。それで「行動も早い、まごまご(孫孫)してない」とか。「9歳ということは小学3年生、きっとまわりからも賞賛(小3)されたはず」っていう。
――おお~! なるほど。
ねづっち:そういう動画を毎日上げてます。
――1つ1つ感心してしまいますね。それを毎日やっていくうちに、思いつく速度もどんどん速くなってきたんですか。
ねづっち:速くなっていきますね。それを実際に舞台でやるんですけど、まあウケるときもあればスベるときもありますよ(笑)。でも、「オチから考える」発想って、会社でも結構使えるんじゃないですかね。企画アイデアとかも、ゴールから考えてみたりとか。
――そうやって習慣化するものがあると、仕事にも役立つかもしれないですね。
ねづっち:そう思いますよ。それぞれその人の仕事に合った何かを見つけて、毎日ちょっとの時間でいいので。
歩く時間はアイデアを生み出す時間
――ちなみに、ねづっちさんは毎日演芸場に出演していらっしゃるということで、体調管理もしっかりされているのではないかと思います。そのあたりはいかがですか。
ねづっち:体調管理……毎日酒飲んでますけどね(笑)。まあ運動はやってますけどね。ジムに行ったりとか、ジムに行かない日は1時間ぐらい歩いたりとか。あとは現場と現場の時間が空いたりすると、その現場間を歩いて行ったりすることはあります。
――やはり、体を動かすことで思考も活性化されますか。
ねづっち:歩いているときって、結構いろいろ考えごとが進みますよね。歩くのってすごく良いと思います。それが科学的に実際にどうかっていうのは知らないですけど。
――歩いているときに整うこともあるのでしょうか?
ねづっち:あります、あります。気分よく整います。晴れやかに。
――晴れやかに(笑)。一挙両得という感じですね。特別に何かを、というよりは普段の行動の中でアイデア出しにも体にも良いことをしているんですね。
ねづっち:そうですね。秋葉原から新宿まで歩いたりしますから。
――え~! ? 結構な距離がありますよね。
ねづっち:今はどこで時間をつぶすのもむずかしいじゃないですか? 歩くのが一番良い暇つぶしになりますね。