――1年、もしくは2年という長きにわたって放送されるテレビシリーズである「プリキュア」の現場は、ほかの現場との違いはあるのでしょうか?

すごく"子どもたちに向けて"ということを意識している現場だなという印象を受けました。言葉遣いや、キャラクターの個性のバランスも考えられていますよね。

原作がある作品だと、いかに原作をアニメに落とし込んでいくのかということが大事になっていくと思うんです。でも、「プリキュア」はそうした意識が見ている子どもたちのほうに向いている。

アフレコで毎回変身のセリフを録っていたんです。画としては変わらないから、録らなくてもいいじゃんって思われる方もいると思うんですけど、変身にいたるまでの気持ちが違うから毎回収録するというふうに説明していただきました。そんなところにもそうした作品作りの姿勢が表れていたのかもしれません。

――映画の演技で苦労したところはどんなところでしょう。

映画では何者かがのぞみになりすまして電話をかけるシーンがあるんです。普段のぞみは言わないようなセリフだったので、のぞみに聞こえるのかという心配がありました(笑)。テンションが低いのぞみってのぞみらしく聞こえないというのは、10年たっていますが新しい発見でしたね。のぞみはテンションで演じてたんだなって。

――逆に映画で楽しかったところは?

エゴエゴを追いかけるシーンが、いつもの『5』の雰囲気ですごく好きでした。先行して追いかけちゃうのぞみとレモネードがいて、お姉さんたちはちゃんと後ろをフォローしてから追いかけるっていう。このチームワークが『5』だなって。完成したのを見て、より好きになりました。

――今回の作品は「みんなのゆめ」がテーマですが、三瓶さんが「プリキュア」を通じて叶えた夢は何でしょう?

ドリームを演じたことで、女の子の役も演じることができるんだなと自信を持つことができました。ドリームは、自分がとらわれていたものを壊してくれた存在です。その後、いろんな役に出会うきっかけになった作品でもあるので、ターニングポイントだったのかもしれません。あの時は自分が女の子を演じるとは夢にも思っていなかったので(笑)。

それと当時、自分の子どもと一緒に「プリキュア」を見たいなと漠然と思っていたのですが、それが今は一緒に見ることができている。これってシリーズが長く続いているおかげで、それは応援してくれている方たちのおかげなんですよね。

――お子さんはお母さんがプリキュアだということはご存じなんですか?

知らないんですよ。言ったことなくて。そのうち気づいて「そうだったの!?」という反応を楽しみにしています(笑)。いまはちょっとネタとして寝かせてます。普通に毎年おもちゃを買って、いち視聴者として楽しんでいます。

テレビシリーズが放送されていた当時、映画館で劇場版を鑑賞する子どもたちを見た時に、「この子たちの初めて記憶に残る作品、好きで見る最初の作品になるのかもしれないから、真摯に向き合っていかなくちゃいけない」と強く感じた記憶があるんです。それがシリーズとして続いて、いまの子どもたちが普通に楽しんでいる姿を間近で見ると、現場で変わらず「プリキュア」を大切に作ってくださっているんだなということをすごく感じています。

――長きにわたってシリーズが続く「プリキュア」ですが、三瓶さんがつなげていきたい思いは何でしょう。

「プリキュア」は、女の子の憧れなんですけど、でもそれは遠い憧れではなくて、自分もそうなりたいと思える、ちょっと身近な憧れなんですよね。そうした「プリキュアみたいに」が、外見だけではなくて、心もそうあってほしいなという思いが、押しつけではなくて自然に伝わってくれると、作り手としてうれしいです。

そして、一つの作品がこんなに続いてくれていることで、共演したことがない人も「プリキュア」ファミリーみたいにつながっています。こんなにたくさんの出会いをくれたのは、「プリキュア」だからこそ。シリーズを通して繋がっているのが、作っている人たちだけではなくて、見ている人たちともそうであってほしいなと思っています。

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