スーパー戦隊最新作であり、シリーズの記念すべき第45作目となる開始予定の『機界戦隊ゼンカイジャー』3月7日から毎週日曜あさ9時30分よりテレビ朝日系にて放送スタートする。

そして放送に先駆け、現在『機界戦隊ゼンカイジャー THE MOVIE 赤い戦い!オール戦隊大集会!!』(監督:中澤祥次郎)が上映されている。『騎士竜戦隊リュウソウジャー 特別編 メモリー・オブ・ソウルメイツ』『魔進戦隊キラメイジャー THE MOVIE ビー・バップ・ドリーム』との3本立て映画として公開されている本作も、大きな話題となっている。

『機界戦隊ゼンカイジャー』のメインライターを務めるのは、歴代「スーパー戦隊」シリーズや「プリキュア」シリーズでおなじみの香村純子氏。大の「スーパー戦隊」ファンだという香村氏は、シリーズ第35作を記念した『海賊戦隊ゴーカイジャー』(2011年)で"レジェンド"戦隊ヒーローをゲストに迎えた傑作エピソードをいくつも手がけている。そして、個性の違う2つの"戦隊"のぶつかりあいが熱きドラマを生んだ『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』(2018年)での活躍は、記憶に新しいところだ。

シリーズ史上かつてない「人間ヒーロー1人とロボット4人」で構成されるスーパー戦隊の物語を、香村氏はどのように描くだろうのか。第1話放送を目前に控え、香村氏に『ゼンカイジャー』の注目ポイントを訊いた。

プロフィール
香村純子(こうむら・じゅんこ)。1976年生まれ、愛知県出身。脚本家。「スーパー戦隊シリーズ」は『炎神戦隊ゴーオンジャー』(2008年)より参加。『天装戦隊ゴセイジャー』『海賊戦隊ゴーカイジャー』『非公認戦隊アキバレンジャー』、アニメ「プリキュア」シリーズでも『Go!プリンセスプリキュア』『キラキラ☆プリキュアアラモード』に参加。『ヒーリングっど・プリキュア』(2020年)でシリーズ構成・メインライター、『動物戦隊ジュウオウジャー』(2016年)『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』(2018年)でメインライターを務めた。

――『機界戦隊ゼンカイジャー』でもっとも気になる点は、ヒーローが人間1人とロボット4人という前例のないメンバー構成ですが、最初に香村さんがこの設定を聞いたときは、どう思われましたか。

ええっ!?というリアクションしかなかったです(笑)。特徴的なビジュアルになりましたけれど、白倉(伸一郎/プロデューサー)さんからは「逆に、中身は王道ストレートな"戦隊"でやってほしい」と言われていました。

センターにいるのが『秘密戦隊ゴレンジャー』(1975年)のアカレンジャーをモチーフにしたゼンカイザーで、周りにいるのが大獣神(恐竜戦隊ジュウレンジャー/1992年)などの歴代戦隊ロボモチーフだ、というところまでは、私が参加するまでに決まっていましたね。

――従来の「スーパー戦隊」と比べて勝手が違うかなと思ったことは?

今までやらせていただいたものと取り組み方は変わりません。『動物戦隊ジュウオウジャー』(2016年)でも最初は1人の人間と4人の"ジューマン"の組み合わせでしたし、『ゼンカイジャー』のキャラクター構成って、意外と今までの「スーパー戦隊」と変わらないんです。

私がシナリオを書く段階では、特に変わったことをやっているわけではありません。むしろ、私の手を離れてから、現場スタッフの方たちのほうが大変なのかもしれませんね。現場からのフィードバックがあって、「こういう描写だと撮影が難しくなるので、他の手で行きましょう」なんて意見がこれから出てくるんだと思います。

――4人のキカイノイド(ジュラン、ガオーン、マジーヌ、ブルーン)が"人間"ではないことで、キャラが描きやすくなった部分はありますか。

キカイノイドなので頑丈さがあり、少しくらい吹っ飛ばされるシーンがあっても平気かな、というところでしょうか(笑)。こういう言い方が適切なのかどうかはわからないですが、ヒドい目に遭ってもギャグで済んでしまえるような、パワフルさを描くことができますね。

普段のキカイノイドはロボットと人間の中間くらい――"ロボ人間"という感覚であって、私としてはそういった特徴も踏まえつつ、人間と変わりなく描いていくことができれば、と思っています。

――あえて言えば紅一点のマジーヌがそうなのかもしれませんが、生身の女戦士がいないのには本当に驚かされました。

そうですよね。私も最初は驚きましたよ! 白倉さんを問い詰めましたが、「とにかく今年の戦隊はこれなんです」と言われ、受け入れることにしました。まあ、アイドル枠は榊原郁恵さんがいますから(笑)。(※榊原郁恵の「榊」は木へんに神が正式表記)

――確かに、往年のアイドル榊原郁恵さんがゼンカイザー/五色田介人のおばあちゃん"ヤツデ"役で出演されるというニュースにも驚かされました。少し気になったのですが、このヤツデというお名前、「やつで」は「八手」と漢字で書くことができますね。八手といえば「三郎」を連想してしまいます。これは"狙った"ネーミングなのでしょうか。

特に、何かネタを"仕込んで"いるわけじゃないですよ。考えすぎです(笑)。ゼンカイジャーのセンターが『ゴレンジャー』モチーフだから、ゴレンジャーの"親"なら「八手三郎」からいただくのがいいんじゃないか、ということで決まりました。

白倉さんが企画の"叩き台"を作ろうとしているごく初期の段階で、「三郎の息子、四郎が主役」みたいなことを話していて、それを引きずっていたところもあったかもしれません。ちなみに介人のお父さんが「功」、お母さんが「美都子」というのも同じく『ゴレンジャー』から連想したネーミングです。

――『ゴレンジャー』主題歌「進め!ゴレンジャー」を歌われた佐々木功さん、堀江美都子さんオマージュですね。他にも『ゼンカイジャー』の中で、歴代スーパー戦隊を意識されている要素はありますか。

現段階ではまだ明かすことのできないものもたくさんありますので、それはぜひテレビを観ていただき、確かめてほしいところですね。

――映画の予告編やプロモーション映像を拝見しますと、駒木根葵汰さん演じるゼンカイザー/五色田介人は底抜けに陽気で優しい熱血漢といった印象で、従来のレッドよりも"明るい"雰囲気を打ち出しているように思えます。

歴代スーパー戦隊にも、熱血だけどどこか抜けている"バカレッド"というべきキャラクターがいっぱい出てきましたし、介人もそんなに珍しいタイプではないですよ。白倉さんからは、『キラメイジャー』のヒーローがみんなわりと"しっかりした人"たちだったので、『ゼンカイジャー』ではみんな"ダメな人"にしたいというリクエストがありました。ですからヒーローのイメージは『キラメイジャー』からガラリと変わるかもしれませんね。