――毒液を浴びた時雨に生命の危機が訪れ、これを救うため為朝がミラクルな攻撃法を思いつく、という展開はとてもスリリングでした。時雨は毒で死にかけたり万力で挟まれたり、酷い目に遭うことがけっこうありましたね。

いやもう、不憫な男なんです。ずいぶん痛い目や辛い目に遭ってきましたよね……。辛い目といえば、時雨も為朝も宝路も"異性とのイベント"については、あまり喜ばしくない結果に終わることがあります(笑)。そういうとこも不憫なんだなあ……。

――エピソード10「時雨おいかける少女」の熱烈すぎる時雨ファン・古寺良世(演:大和田南那)との衝撃的な結末なんて、悲惨なあまりに"笑い"へとつながる秀逸な展開でした。笑いといえば、エピソード28では充瑠と時雨がハコブーの"感情"を取り戻すための一環として見事な漫才を披露されていて、放送当時大きな話題となりました。

あのエピソードも思い出深いですね。もともと漫才とかお笑い全般が好きで、せっかく漫才をやるのならいいかげんなものはお見せしてはいけないと思っていました。しかも「ぺこぱ」さんのネタをパロディとして取り入れているので、軽々しくやったら絶対に火傷してしまうぞと、覚悟を決めて真剣に取り組みました。璃央がシュウペイさんの役割(ボケ)で、僕が松陰寺太勇さんの役割(ツッコミ)をやりましたが、時雨と松陰寺さんの特性がどこか似ているとずっと思っていたので、あの回で漫才ができてうれしかったですね。

――カメラを向けられたら反射的にポーズを取ってしまうような、ちょっとキザな時雨の振る舞いについてはいかが思われますか。

時雨は、そういうのがカッコいいんだと思っている、滑稽さを楽しんでほしいと思って演じています(笑)。『キラメイジャー』の作品世界における俳優・押切時雨のファンには、エピソード10の良世ちゃんみたいな熱狂的に惚れ込んでいるタイプと、「またなんかヘンな仕事やってる」「またヘンなポーズ取ってる」って期待しているタイプの2つに分かれてるんじゃないかと思っています。その2つのバランスで彼が成り立っている。ちょっとヘンな俳優として(笑)。

――水石さんと時雨との共通する部分はありますか?

時雨という人物には、演じる僕の性格もたくさん反映されています。1年間彼を演じたことで、どんな現場に行っても制約や作風を守りつつ、自分らしく自由に楽しくお芝居をするという"原点"を改めて教えてもらった気がします。そういった大切な気持ちは、これからも忘れてはいけないぞと心に刻んでいます。

――『キラメイジャー』は必要以上に殺伐とした展開にならず、特に正義側のキャラクターからは常に前向きな明るさや勇気、元気をもらっている感覚がありますね。

僕たち演じる側も、そんな風に思っています。毎回の台本を読むたびに、明るい気分になりましたし、放送されたエピソードをご覧になったみなさんから寄せられた言葉も、明るさや希望を感じさせるものばかりでした。今はまだまだ厳しい状況が続いていますが、こんなときだからこそ『キラメイジャー』という作品がみなさんの心の支えになればいいなと思いますし、その思いが届いていると信じています。

――昨年から続く"コロナ禍"のため、子どもたちと直接触れ合うことのできるイベント関連が相次いで中止となったのは残念でした。そんな中で、東京ドームシティ・シアターGロッソのキラメイジャー"役者公演"に出演されたときは、どんな思いを抱きましたか。

ステージから客席を見渡すと、子どもたちの目がキラキラ輝いているのがわかって、感激しました。ただキャッキャッと喜んでいる子がいると思えば、目の前で何が起こっているのかよくわかってなくて「キラメイジャーって本当にいるんだ……」みたいな感じでポカーンとしている子がいたりして、みんな純粋にショーを楽しんでくれているんだなあって思ったんです。改めて、僕たちがヒーローになったことを実感できるひとときですね。毎回、アクションもお芝居も全てを込めてやっています!

――時雨のキャラクターソング「Perfect Blue」は時雨のクールな面をいっそう強調するかのような大人っぽいバラード曲でした。キャラソンについてのご感想を聞かせてください。

『キラメイジャー』主題歌を歌う大西洋平さんが作詞・作曲を手がけてくださいました。洋平さんはこの曲を作るにあたり本編を研究されて、時雨の深層心理をイメージしたり、キャッチーなフレーズ……「はさまれる」とか「変だよね」とかを入れ込んでくださったり、とても強い"愛"を感じました。出来上がった曲には、時雨という人物の真面目さや、遊び心など、たくさんの特性を詰めていただいてます。

最初にひととおり収録したときは、ちょっとカッコよさげで終わっちゃったなあと思い、満足のいく出来ではなかったんです。そこで、その日一緒だった瑠生に相談してみました。「もっと気持ち悪くしたいんだけど」って(笑)。そうしたら瑠生から「マイクをナメ回すようにして歌えばいいよ」とアドバイスをもらい、なるほど~と思ってマイクの下で手をグニョグニョさせながら歌ってみると、ディレクターさんが「すごくよくなった! これで最初から最後までもう一回録りなおそう!」と言ってくださいました。こうして、さわやかさがありつつ、なんか気持ち悪さもあるという、絶妙なバランスのキャラソンが生まれました(笑)。

――キラメイブルーのスーツアクターを務められた竹内康博さんとのコンビネーションはいかがでしたか?

スーパー戦隊シリーズで活躍を続けているレジェンドの竹内さんがキラメイブルーを演じるということで、お会いしたときは緊張しました。でも、現場でお話ししてくださる竹内さんは本当に気さくで、空き時間には誰よりもたくさん剣をふるって練習されていた。実在の人物で、もっとも押切時雨に近い方なのではないかと、ずっと思っています。僕が自由にやったお芝居をぜんぶ許してくれる上に「亜飛夢が面白いことをたくさんやるだろうから、変身後の俺もたくさんヘンなことやっておくよ」なんて言ってくださるんです(笑)。この1年、僕と一緒に押切時雨/キラメイブルーを"生きて"くださり、本当に感謝しています。

――エピソード19「相棒」では、時雨と魔進ジェッタ(声:大河元気)の心が入れ替わり、ジェッタの心を持った時雨として演技されていましたね。

変身前も変身後も、中身がジェッタになりますから、僕と竹内さん、元気さんとの連携がしっかり取れていないと成立しないお話でした。最初に竹内さんが(ジェッタの魂が入った)ブルーを演じられたので、翌日お会いして「どんな感じで演じられたんですか?」と尋ねると、「とりあえず、両手を広げて止まれないようにしたよ」って言うもんですから、えっ、えっ、ええっ!? なんだそれ!って戸惑いましたね(笑)。続けて竹内さんから「なんでも好きにやったらいいと思うよ」と言ってもらえたので、竹内さんが好きにやっていいというんだから、大丈夫だ、好きにやろう!と思いっきりヘンな動きをやってみました。そうしたら、後で元気さんから「すごい芝居だったね……声を入れるのはめちゃめちゃ大変だったけど」って、すごく困ったような連絡をいただきました(笑)。「すみませ~ん!」と思いましたけど、みなさんのおかげで自由な芝居ができて、ありがたかったですね。

――『魔進戦隊キラメイジャー THE MOVIE ビー・バップ・ドリーム』の予告編では、時雨の頭にまたもや"妙なもの"が挟まっていましたが……。

そうなんです。映画ではなんとカキ氷機を被せられ、エピソード3での"イヤな思い出"が時雨の脳裏に甦る……という展開です。脚本の荒川稔久さんに「時雨がまたなんか被ってるんですけど」と聞いたら「いやあ、3話の万力が好評だったからね」って言われましたね(笑)。マンリキ邪面はこの1年間で筆頭に挙げていいくらいの"時雨のイヤな思い出"ですが、こうやって"くりかえしギャグ"のように出てくるのは演じるほうにとっては"おいしい"展開でした。映画をご覧になる方は、ぜひ時雨のやせ我慢ぶりや、苦痛に歪む表情をお楽しみください!

――夢の世界に飛び込んで悪と戦う映画にちなんで、水石さんの今後の"夢"を聞かせていただけますか。

自分の演技によって"何か"を人に伝えられるんだという、役者として原点というべき喜びを『キラメイジャー』で感じさせていただきました。その喜びを信じつつ、他の映像作品に取り組んでいけたらと思います。

今後演じてみたい役柄やジャンルはいろいろあるんですけど、特に「コメディ」がやりたいですね。人が笑ってくれるのは、すごくプラスのエネルギーになりますし、いちばんわかりやすいストレス解消法なんじゃないでしょうか。たくさんの方たちに"笑い"を届けられるような物語に携わり、魅力的な人物を演じてみたいと思っています。これからも、キラメイジャーともども応援していただければうれしいです。

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