中途半端になっちゃうのが嫌い
――「ラップバトル」に出場する場面もありますが、対決相手の「ハゲボウズ」役は、以前NHKの朝ドラで共演した「番長」こと、板橋駿谷さんですよね?
そうなんです! 「分からないことがあったら何でも聞いてね」って言ってくれたので、遠慮なしにぶつけられるというか、お互いにまったく容赦しない感じですごく楽しくできました(笑)。俳句とラップって、全くかけ離れたものだと思っていたんですけど、テンションが違うだけで「言葉を届けるってことでは一緒じゃん!」って思えるようになりました。
――撮影を機に、広瀬さん自身も「俳句」や「ラップ」に目覚めたりすることも……?
いやー、残念ながら私には俳句のセンスがまったくないんですよね(笑)。ラップもできたらカッコいいだろうなぁとは思いますけど、頭の回転がめちゃめちゃ速くないといけないから、自分には絶対無理だろうなぁ……。
――今回演じた杏は、広瀬さんがこれまで演じてきた役柄とは一味違う印象ですか?
杏には、相手とちゃんと言葉のキャッチボールが出来る時と出来ない時とがあって、突如スイッチが入ってバーって一気にしゃべったりもする、ちょっと変わった子なんです。だから今回は最初から最後までちゃんと"変人"でいたいなぁと思っていたんですけど、演じているうちにだんだん「杏って根はすごくピュアで優しくて、可愛らしい子なんだなぁ」って気付いて、途中から割と普通な感じになっちゃいました(笑)。でもよく見るとずっと1人だけニヤニヤしていたり、今までになくちょっと気持ち悪い要素もあったりして、前編の杏は逆にちょっと変わった子すぎるかも……(笑)。後編の杏は、周りの人たちがつい味方したくなっちゃうような子になったらいいなぁって思いながら演じたので、多分可愛くなっているんじゃないかなぁと思います(笑)。
――現場の雰囲気はいかがでしたか?
昴役の宮沢氷魚さんを始め「こんなに面白い人たちがいっぱいいる現場なんだ!」って、ビックリするほど個性豊かな方ばかりが出演されているので、撮影の合間に笑いすぎて頬っぺたが痛くなっちゃって、セリフが上手くしゃべれないこともあったくらいなんです(笑)。なかでも毎熊(克哉)さんが割とどこでもターゲットにされていて、みんなからイジられていた記憶がありますね。「いるか句会」の主宰を演じた田辺(誠一)さんも本当に面白い方で、常に笑いがさく裂してました(笑)。
――個人的には、荒川良々さんが広瀬さんのお父さん役というのも気になります(笑)。
良々さんとは、私がデビューして数週間しか経っていないような頃に一度だけ映画でご一緒したことがあったんです。その時私はまだ台本にも載っていないくらいの本当に小さな役だったんですけど、良々さんが「あれ、すずちゃんだったんでしょう?」って覚えててくださって。今回こんな形でまたお会いできたのがすごくうれしくて、撮影中はずっと良々さんのことを観察してました(笑)。
――字がキレイなことでも知られる広瀬さんですが、杏と同じように、日々心に思い浮かんだ言葉を書き留める習慣があるとか……?
たまにスケジュール表の裏とかに、その時思っていることを書いたりしてるだけなんですけど、私にとってのストレス発散法というか、無性に字が書きたくなる時があるんです。ふと頭に浮かんだ人に宛ててお手紙を書いたりすることもあるんですけど、それこそ1文字1文字、自分の納得いくまで何十回も書き直すタイプなので、結果1行も書けずに終わる……っていうのも結構ありますね(笑)。
――そういった意味では、杏に共感する部分もありました?
ありました。書いていると落ち着くんですよね。自分から生まれた言葉って、なんだか安心するんです。「この言葉は私を裏切らない」って。そういう気持ちはちょっとわかりますね。でも逆にお芝居の時以外に「ワーッ」って感情を剥き出しにて怒ったりしたこととかは、多分、人生で5回もないと思います(笑)。去年久しぶりにすごく怒った出来事があったんですけど、「あ、これは歴代2位の怒りのレベルだ!」って自分で思ったくらいなので……(笑)。
――以前「撮影中、スタッフさんは別に"広瀬すず"のことを見ているわけじゃなくて、それぞれ自分のお仕事に関わる部分を見てるだけなんだ、って気付いて恥ずかしかった」とお話されていたのがとても印象的だったのですが、いまはもう注目されることに慣れました?
いや、変わらないです。いまもまだ恥ずかしいです。基本的に恥ずかしがり屋なんですよね。人に見られて何かをするのが、本当に得意じゃなくて……。スタジオで写真を撮っている最中に周りのみんなに見られるのも得意じゃないし、こうやっていまみたいにインタビューをされている時に見られたりするのも得意じゃないし……。「見てないですって言いながら、でもやっぱり見てるじゃん!」って。いつも、そんな風に思いながらお仕事しています(笑)。
――人に見られることが苦手な広瀬さんが、女優のお仕事を続けられている所以とは?
やっぱり、何事も中途半端になっちゃうのが嫌いなので、途中で辞めると気持ち悪いから……っていうのもちょっとありますけど(笑)、もともと私は「お仕事してみたい!」と思った方たちとご一緒できる運がすごく強いので、すぐに惹かれちゃうっていうのもありますね。「こんな作品に出てみたい!」とか「こんな方たちと一緒にやってみたい!」っていう気持ちは自分の中にまだまだいっぱいあるので、苦手でも続けられているんじゃないかなぁと思います。
――では最後に、ドラマを楽しみにされている方にメッセージをお願いします!
言葉を介して人と人がどんどんつながって、1つになっていくような感覚というか、「単語ひとつ変えるだけでもこんなふうに伝わり方が違うんだ!」って、言葉からどんどん想像が広がっていくところに、俳句の魅力や奥深さを感じたんです。クスっと笑いながらも、登場人物たちの関係性の中に温かさや優しさみたいなものが芽生えて、どんどん温度が高まっていくような作品になっていると思うので、ぜひそれを感じ取ってもらえたらうれしいです。