この迫力はもう映画だ! 主演の伊東健人さんも太鼓判
声優の伊東健人さんに、主人公の「僕」としてオーディオドラマ『夜に駆ける』に参加した手応えをメールで聞くことができました。完成した作品を初めて聴いたときの感触について、伊東さんは次のように話しています。
「あまりの迫力に、こりゃもう映画だ……! と思いました。音声だけでも情景がとてもはっきりと浮かんできますし、ストーリーの重さもあって、のめり込みすぎて怖さすら覚えます。登場人物達の動きや、時には聴いている自分=『僕』の細かい首の動きまで考えてドラマが作られていて、作品作りに関わったすべての人の愛を感じました」(伊東さん)
日ごろから声優として、アニメ作品やゲーム、映画の吹き替えなど多くの創作に携わっている伊東さん。今後のソニーの立体音響技術にどんな可能性を感じたのでしょうか。
「映画などの配信サービスが一般的になっている今、ちょっとした時間、移動中や喫茶店で映画作品を観る事も当たり前になってきました。外ではイヤホンやヘッドホンで音を聴くのが主になりますし、そのような場面で今回の立体音響技術が活躍するのではないでしょうか。人って、目からの情報は今はいらないなって気分のときもあるから、そんなときは立体音響で上質なオーディオドラマ! そんな時代がきても良いですよね」(伊東さん)
街の喧騒、耳鳴り、ゴミ箱、そして……“聴きどころ”に迫る
今回、筆者はインタビュー取材のためにソニーPCLクリエイションセンターのイマーシブサウンドスタジオに足を運び、スタジオに設置されたマルチスピーカー環境で、ソニーの立体音響技術によって作られたオーディオドラマ『夜に駆ける』の元の音源を聴かせてもらいました。
自分が「僕」になって、物語に登場するキャラクターたちに相対しているような「音の世界の生々しさ」に驚き、あっという間に引き込まれてしまいました。「僕」と「彼女」がビルの屋上で会話を交わすシーンでは環境音の包囲感に圧倒されます。物語の中で重要な役を担う金網の質感が、音だけでとてもリアルに再現されます。喜多氏をはじめ、ソニーPCLのサウンドエンジニアリングチームが持てるノウハウを駆使して、実録音でさまざまな生音を録り下ろしたそうです。
ソニーの立体音響技術をベースにしていることのメリットは、ビルの屋上のシーンで「僕」たちの足下から押し寄せてくるような自動車の低い走行音など、上下方向への豊かな音の広がり感にもよく表れており、物語の後半に向かって徐々に張り詰めていく緊張感が味わえました。
サウンドデザイナーの喜多氏は「鼓動や耳鳴りなど、キャラクターの心理を描写するためにデジタル制作の効果音をドラマティックに活かすことにも腐心し、社内のチームで試行錯誤した」と話しています。一例を挙げると「Chapter2 -夢中-」の冒頭、オフィスを舞台に繰り広げられるシーンで、「僕」に襲いかかる耳鳴りによる心理描写も聴きどころです。
演出を手がけた中村氏は、「声優の方々による演技力を頼りにしつつ、効果音の緊迫感をうまく高めながら徐々に主人公の『僕』が追い込まれていく心理もていねいに描こうと大事にした」と話しています。「Chapter2 -夢中-」冒頭のオフィスで繰り広げられるシーンは、この物語の大事なターニングポイントではあるものの、「僕」に感情を寄せながら聴いていると、とてもつらくなるシーンでもあります。「上司」と「先輩」のウェットな掛け合い、ゴミ箱を蹴飛ばす効果音など「胸に刺さるようなインパクトのある音」をていねいに作り込みながら、クライマックスにつなげていく巧みな「音による演出」に思わず息を吞んでしまいました。
中村氏は「僕」と「彼女」の心の距離が次第に近づいていく「Chapter1の線香花火のシーン」もお気に入りと話していました。「彼女」を演じた、楠木ともりさんのチャーミングな演技も要チェックです。
次回作の構想は? プロデューサーに聞いてみた
ソニー独自の立体音響技術により、今までにないユニークなオーディオドラマが制作できることをオーディオドラマ『夜に駆ける』がしっかりと証明してみせたと言えそうです。プロデューサーの髙山氏は同じ立体音響技術を活かした作品の構想をいくつか温めているそうで、「例えば歴史に名前を残した偉人の生き様を追体験できる伝記物だったり、ホラー作品も見事にハマるのでは」と話していました。
あるいは、場面を想像できる1枚の写真や抽象画をスマホやタブレットの画面に表示して、チラ見しながら想像力を膨らませつつ楽しむオーディオドラマがあってもいいかもしれません。視覚情報を少しだけ補足してあげれば、「宇宙のはるか彼方で繰り広げられる闘い」や「世界の秘境を旅する冒険記」などのオーディオドラマも描けそうです。人気声優の方々による「立体音響・朗読会」もぜひ聴いてみたいですね。アーティストの方々が活躍できる新しい場所にもなると思います。オーディオドラマ『夜に駆ける』が拓いた道がどこへ続いていくのか、期待が膨らみます。
オーディオドラマ「夜に駆ける」配信開始👂
— YOASOBI (@YOASOBI_staff) January 26, 2021
「タナトスの誘惑」をベースに脚本化、伊東健人さん、楠木ともりさん、細谷佳正さん、木村昴さんが作品を彩ります。
立体音響技術を活用した臨場感の中、「夜に駆ける」の新たな世界をぜひイヤホンやヘッドホンでお楽しみください🎧https://t.co/Zw1CNjaUZm pic.twitter.com/ut7teIwS9r