レベル調整やノイズ低減も。細かいマイク機能が便利

PRO X WIRELESSで利用できるBLUE VO!CEのリアルタイムフィルターは次の7つと幅広く、調整スライダーは全部で31。これに入力ゲインとマスター出力レベルのコントロールが入る。

  • 可変3バンドEQ
  • ハイパスフィルタ(エアコンやエンジン音の低周波ノイズ除去)
  • ノイズリダクション(ファンや雨などの一定の不要音除去)
  • エクスパンダー/ゲート(犬の吠え声、子どもの声などマイクでしゃべっていないときの不要音除去)
  • ディエッサー(不快なスー音、ギー音の除去)
  • コンプレッサー(全体の音量を平均的にして聞きやすくする)
  • リミッター(出力を圧縮して望ましくないレベルまで到達させない)

調整項目が多すぎると感じる場合は、プリセットを活用すればよい。8種類の標準プリセットに加え、有名ストリーマーのカスタムセットが5種類含まれている。他ユーザーが公開しているプロファイルをダウンロードして使う事もできる。

  • 専用アプリのlogi G HUB。Gシリーズの設定はここですべて行え、電池の正確な残量もここでわかる

  • 音を変更するBLUE VO!CE機能を入れると右に設定が表示される。大きく7種類の設定がある

  • 設定項目の一つ「エクスパンダ―/ゲート」。メイン画面からはしきい値のみ変更できるが、同項目に入ると6つのパラメーターを変更でき、設定内容は非常に多い

  • 初期プリセット以外に、他ユーザーが公開した設定をダウンロードすることも可能だ

PRO X WIRELESSはDTS Headphone:X 2.0の立体音響に対応する。ゲーミング利用では「敵の足音やどの方向から撃っているのか」を判断するのに重要なポイントだ。通常の音楽を疑似サラウンド化する機能もあるが、音質的には今一つなので設定しない方がよいだろう。

なお、ライティング等の設定・確認、BLUE VO!CEのエフェクト、DTS Headphone:X 2.0はWindows環境でのみ利用できるlogi G HUBと言うアプリが必要となるが、アプリなしでも、手元の複数のAndroidスマートフォンで一般的なUSB Audioアダプターとして認識された。

  • 立体音響はDTS Headphone:X 2.0に対応。非対応音源に対するDTSスーパーステレオモードも用意されている

  • 出力に関しても10バンドのイコライザーが用意されており、ゲームごとに変更することが可能だ

お手頃価格の光らないゲーミングヘッドセットも

Gシリーズはゲーマー向けの製品だが、コロナ禍で状況が変わりつつある。一般向けのロジクール製品で「ヘッドセット」を見ると、伝統的なヘッドセットのHシリーズ、プレミアム製品となるZoneシリーズ以外にゲーミングヘッドセットのG933s、G533sも表示されている。

  • 原稿執筆時のロジクールサイト。一般向けのヘッドセットの一覧のハズだがゲーミング製品が含まれていた

コロナ禍でWebカムやヘッドセット不足になりはじめの頃、ロジクールに質問したことがあるが、当時は「ヘッドセットとしてフリップミュートがあるAstro A10もおすすめします」と言う回答をいただいた。

「Astro」とは、ロジクールのゲーミングブランド「ASTRO Gaming」のこと。もとは(PS4とかXBOX360のような)コンソールゲーム市場で人気を博していたゲーム周辺機器ブランドで、ロジクールが2017年にASTRO Gamingを買収し、その製品群を現在ロジクールが販売している。2018年に日本市場にも製品投入しており、Astro A10はこのブランドのエントリーモデルだ(2021年1月21日には上位版「A20」と「A40 TR」のリニューアル版が発売した)。

一般的なゲーミングヘッドホンは「光る」のだが、Astroシリーズは光らないという点で在宅ワーカーにおススメしたのだろうと思う。今回レビューしたPRO X WIRELESSも光らないので在宅ワーカーにも向いているし、装着感や普段の音楽/動画視聴用にも向いていると感じる。

オンライン発表は音質(と画質)にもこだわって欲しい!

さて、筆者はメーカー各社の製品発表会を聞く機会が多い。が、コロナ禍で主流となったオンライン発表会では、登壇者が在宅環境の場合も多く、意外と視聴者を考慮したサウンド環境が用意されていない事がある。

部屋の残響音が入ったり、外部を含めた環境音もよく入る。スピーカーの音が回り込んでハウリングを出すこともある。とある勉強会ではノートパソコンのファン音が耳障りな配信もあった。一方、今までのオフライン発表会(実際の会場で行われるリアルな発表会)では、小規模でも音響スタッフを手配しており、聞き取りやすさに配慮している。そんなオフラインと同等の音質をオンラインでも継承されているかと言われると、Noと言いたいときもある。

ストリーマーがよいマイクを使用しているのはリスナーの事も考えているからで、発表会でもその配慮は必要だ。筆者的にはライバルとのコミュニケーション能力に差をつけるのは機材が関係すると思っている。

そういう意味ではマイクに特徴があるPRO X WIRELESSをオンライン会議で使うのは面白そうだ。BLUE VO!CEを一から設定するのは難しいが、とりあえずプリセットのBroadcasterと、標準で含まれているプリセットでテストしてみるとよいだろう。

もちろん、ヘッドセットをしているのは格好悪いという人もいる。この場合はヘッドセットではなくパソコン内蔵でない外部マイクを使ってみるとよい。また、G HUBで公開されているプロファイルを試すのもよい(もちろんビジネス向けヘッドセットを使うのもよい)。

ゲーミングデバイスを必ずしもオフィスワーカーにすすめる必要はないが、PRO X WIRELESSはマイクの音質にこだわった人向けのデバイスだ。見た目は大きめのヘッドホンと同じだが、リスナーが得られる声の品質は非常に高い。またヘッドホンとしての音質も高く、ワイヤレスでありながら「有線同等の遅延レス」はBluetoothとは一線を画す製品となっている。

一方、ゲーマーに対しては「地味でもいい」と言う人にはおすすめだろう。同じメーカー、同じドライバを使用しているG933sと比較して強烈なアピールポイントがあるかと言われると難しい。あえて言えば装着感とマイク、電池持ちがメリットとなり、アナログ入力に対応していないのがデメリットだ(G933sは無線/有線USB接続に加えて3.5mmのアナログ入力にも同時対応している)。装着感等は店頭でチェックしてみる事をおすすめしたい。