信長は、ピュアすぎるがゆえの狂気という新たな解釈で描かれた。池端氏は「確かに信長みたいな人とつきあっていくのはしんどいですが、おもしろい人なんですよね。かわいらしいところもあるので、憎めないんです」と信長への思いを明かし、「信長役の染谷(将太)さんがとても魅力的でしたね。染谷さんが憎めない信長をうまくやってくださいました。信長は書いていても楽しかったです」と染谷の演技も称えた。
佐々木蔵之介演じる豊臣秀吉については「元々武士ではないですし、地を這うように生きていたところを這いあがってきたような人です。その人が天下をとるわけですが、秀吉には秀吉の切なさみたいなものがあります。這い上がってくるためにはひどいこともしなければいけなかっただろうし、心にもないお世辞を言って人の中に入っていくということもあったと思います。出世欲だけで生きているとか、人を蹴落とせばいいというような単純な人物ではなく、自分を押し殺して這い上がっていかざるを得ない切なさがあるといいなと思って書きました」と説明。
「秀吉役の佐々木蔵之介さんは、先を読んで芝居されているなと思っていました。秀吉は、光秀や信長とは全く違うキャラクターです。あの色の濃い演技は、自分の立ち位置をハッキリと分かってらっしゃると思いましたし、それで正解だと僕は思っていました」と語った。
さらに、「松永久秀(吉田鋼太郎)も非常に書いていて楽しかったです。悪党と言われた人ですけど、人懐っこくて愛嬌があっておもしろいんです。帰蝶(川口春奈)も生き生きしていて、信長を操るおもしろさがあり、セリフを書くのが楽しかったです」と、それぞれの役に思い入れたっぷりの池端氏。
「『麒麟がくる』は、どの人物も針を大きく振るといいますか、中途半端に描かないようにしていました。人物が生き生きとしているような描き方は、戦国時代を書く一つの考え方だろうなと思っていました。戦国時代は戦いばかりで、人を疑い、毒殺し、親兄弟も骨肉の争いがあり、本質的には暗い時代だったと思うんです。でもやはりドラマとしては、そういった人間が何を目指したのかという、夢の部分を書くことで弾んだものにしたかったです」と、それぞれの役に込めた思いを明かした。
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