●分かり合いたいと思うと壁に気づく

――ミニアルバムに収録されているその他の曲についても教えてください。まずは「紙飛行機」。

学生時代の気持ちを思い出しました。私が高校生のときはまだ自分が何をやりたいのか、ちゃんとは定まっていなかったので、歌詞に共感できたんです。レコーディングのときも、高校時代ならこういう歌い方をしていただろう、ということを想像しながら歌いました。学生ならではの未来が広がっていくような無敵感のある、素敵な曲です。

――歌詞に使われている言葉のチョイスが可愛らしいです。

全体的に可愛らしいです。Aメロに「ヒラリヒラリ揺れたカーテンが 左の肩を撫でる」という歌詞があるのですが、思い返してみると確かに、教室の窓ってどれも左についていたんですよね。それで、気になって調べてみたんです。そしたら、日本は右利きの人が多いから、太陽の光が左から差し込むようにしないと、多くの人に影が差しちゃうという理由があるらしくって! そういう学びもあったアルバム制作でした。

――アルバム2曲目が「MAZE」、そして3曲目に収録されているのはこれまでの2曲とは雰囲気の異なる「SLYCAT」です。

妖艶なお姉さんをイメージして歌いました。収録しているときにも「楽しそう」と言われたくらい、楽しくレコーディングができました。この曲には私個人の要素がほぼないので、完全にキャラクターを作って歌っています。だからこそ、表現するのが面白かったですね。皆さんに「こんな表現もできるんだ」と、驚いてもらえたらいいな。

――続く曲は、「RainyDay」。

可愛い女の子が主人公の曲で、アルバムのなかでは最も素朴なイメージ。純粋な気持ちを呼び覚まして歌いました。全体的にセリフっぽい歌詞になっていたので、その分、歌詞の登場人物の気持ちになりきることを意識しています。

――ミニアルバム5曲目の「twinkle star」は、「MAZE」とは違った意思の強さを感じる曲です。

「MAZE」は前向きながらもまだ迷っていたのに対して、こちらは「私が強くなれる」と確信していて、実際に上手くいき始めています。そのため、「MAZE」とは違った力強さをイメージして歌いました。こちらもカッコいい楽曲に仕上がっています。

――アルバムのラストを飾る「足音が聞こえる」は、ご自身で作詞された一曲です。

友達と路上ライブをやっていたときに「足音が聞こえない」という曲を作ったことがあるんです。当時は、専門学校と大学のダブルスクールをしていました。大学の部室では、キャラメルポップコーンを食べた後のプラスチックのカップを鉢植えにして、植物を育てていたんですよ。水をやりながら、芽が出るのを楽しみにしていたのですが、結局は咲くはずの季節を超えてしまって。芽が出なかったその気持ちと、このまま声優として生きていけるのかという想いを合わせた曲が「足音が聞こえない」。この機会に作詞させてもらえるなら、それと対になるような、今の私だからこそ書ける気持ちを乗せた曲にしたいと思って、「足音が聞こえる」を作りました。

――自分の人生を思い返しながらこの曲を作った。

そうですね。家族や友達であっても、分かり合いたいと思うと壁に気づくことってありませんか? なぜか、境界線が強くなるんですよね。それって夢も同じだと思うんです。目指したからこそ難しさを知る。そして、無駄なんじゃないか、線引きされてしまっているんじゃないかと強く感じてしまう。1番のAメロは、その思いを言葉として綴りました。

――極端な話、興味がないとその境界線すら見えない気がします。興味を持って関わろうとしたからこそ、輪郭がはっきり見えるようになる。

そうです、そうです! 私にとっては夢でしたが、違った解釈をしてもらって構いません。できるだけ、色々な人の気持ちに寄り添っていきたいので。それでも、私に興味を持って聴いてくださるのであれば、これは私が夢を叶えたいと思ったときにできた曲が元になっています、ということをお伝えしたいですね。あの時からここまでの歩みが、この曲に詰まっています。

●目標は世界平和……?

――ミニアルバムについて色々とお話いただきましたが、今後はどのようなアーティストになっていきたいと思っていますか?

人生のなかで、気持ちがふさぎ込んでしまう日ってあると思うんです。特に最近は。そうやってふさぎ込んでしまった人に「一緒に生きているから明日も、ちょっと頑張っていこうね」と伝えられるような、そんなアーティストでいたいですね。応援するというよりかは一緒に手を取って歩いていく、というイメージです。

――優しさがひしひしと伝わってきました。では、アーティスト活動の中でやってみたいことは?

皆さんを前にして歌いたいです。インターネットを介したサイン会をやってはいますが、やっぱり皆さんに直接お会いしたいという気持ちがあるんですよね。ただ、私のネットサイン会に来てくださる方々って、すごく仲が良くって。参加者の誰かの名前が呼ばれると「おめでとう!」って祝福のコメントでいっぱいになったり、私が作業しているときに雑談で盛り上がったりするんですよ。そうやって、私を通じて色々な方が楽しい時間を過ごしてくださるのが、とても嬉しいんです。なので、これからも「つながり」を感じられるようなことはしていきたいですね。私がどんな活動をすればみんな喜んでくれるかなぁ。アイデア、募集しています。

――すごく、平和な世界ですね。

そうなんです(笑)。

――このつながりが広がれば、世界が平和になるかもしれません。

確かに。じゃあ、アーティスト活動で今後やっていきたいことは……世界平和で! すごく大きな目標になりました(笑)。

――とてもいい目標だと思います! 最後に、いまの芝崎さんにとって「声優」「歌」がどういう存在なのか、教えてください。

この質問の答え、すごく迷いますね……。実は他の皆さんがどう考えているのか、事前に「●●さんにとって声優とは」というワードで検索をしたんです。カンニングしたのですが、結局見つかりませんでした(笑)。

――なんと(笑)。

だから、今考えますね! そうだなぁ、私にとって声優とは……やっぱり「つながり」かもしれません。私自身、活動を通じて知らなかった世界をたくさん見せていただいています。声優になっていなければ知り合えなかった人と、たくさんつながれました。また、キャラクターを演じるときも、その子が生きている世界と私たちの世界をつなぐ表現をしたいと思っています。そういう意味でのつながりですね。歌も同じです。学生時代の経験やこれまでの声優活動があったからこそのメジャーデビュー。点と点がつながったからここに届いたんです。アーティスト活動の第一歩を踏み出したことで、また新たなつながりが生まれるんじゃないかな。その中で、皆さんの世界を広げるきっかけにもなれたら、とても幸せです。今後も世界とのつながりを大切に、活動していこうと思います。

●メジャーデビューミニアルバム『Follow my heart』リリース情報
・初回限定盤(DVD付)
・通常盤
CD収録内容
M1.紙飛行機
M2.MAZE
M3.SLYCAT
M4.RainyDay
M5.twinkle star
M6.足音が聞こえる
DVD収録内容
・リード楽曲「MAZE」MV
・MV撮影時Making