これまで長瀬が演じてきた『池袋ウエストゲートパーク』の真島誠、『タイガー&ドラゴン』の山崎虎児、『うぬぼれ刑事』のうぬぼれより、本作の観山寿一は「プロレスラーだというのはちょっと現実離れしていますが、人間性としては一番地に足がついている」と、磯山氏は言う。

そして、「42歳だからいいなと。人生経験を積んで、いい意味でおじさんなので、普通の人が感情移入しやすい人物像になっているのではないかなと思います。それでもちょっと想像の斜め上の人ですが」と、年齢を重ねて人間味も増しているようだ。

プロレスや能という濃い要素を入れても、長瀬であれば人間ドラマを真っすぐ描けるという。磯山氏は「本当は普通に家業が嫌で飛び出した人が25年ぶりに帰ってきて親の介護をするという話でもいいんですけど、長瀬くんが演じるならもっと振れ幅広くできると思い、能とプロレスというお題が生まれた。コアな部分は、普通の42歳男性の悲哀、家族を大事に思う気持ちであり、ノーマルな人だと思います」と語る。

本作は長瀬のモノローグで進行。そこに等身大の長瀬がにじみ出ているようで、宮藤氏は「心の声を書いているんですが、そういえば今まで長瀬くんが演じてきたキャラクターは思っていることを全部言う人だったなと。思っていることを言わない役は新鮮です。基本的に家の中にいるから、そんなに感情をむき出しにできないだろうと思って、そういう設定にしたんですけど、狙い通りにいけば、今までなんでやらなかったんだろうというくらい等身大の長瀬くんになっている」と手ごたえを感じている。

寿一の父・寿三郎を演じる西田は、『うぬぼれ刑事』では長瀬演じるうぬぼれの父役、『タイガー&ドラゴン』では父子のような関係性の落語家の師匠を演じてきた。宮藤氏は「西田さんは長瀬くんと相性がいいので、介護する人、される人というシーンになったときに、悲壮感がなくできるかなと。お互い軽口をたたきながらそういうシーンを作れると思い、西田さんしかいないと思いました」と起用理由を説明。

磯山氏も「セッション感がすごくて台本の何倍もしゃべってしまうくらいアドリブが続く2人なので、明るい介護でいくならほかに候補がいないと思いましたし、お互いにすごい好き同士なのでいいなと。新しい方と新しい関係性を作るのもいいと思いますが、今回は決定版ということで西田さんにお願いしました」と、迷いなしのオファーとなった。

そのほか、寿三郎の一番弟子にして芸養子でもある寿限無役に桐谷健太、寿一の弟・踊介役に永山絢斗、寿一の妹・舞役に江口のりこと豪華キャストが出演。また、謎の介護ヘルパー・志田さくらを戸田恵梨香が演じる。

磯山氏は戸田の起用について「『流星の絆』で、詐欺をするという設定で、桐谷さんをだます看護師など七変化されていたときに魔性感がすごくて、今回、戸田さんに演じていただかないと成立しないという感じがあったのでご快諾いただいたときはうれしかったです」と明かした。

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