BPOは、実際に行われなかった対決が編集によって作り上げられて放送倫理違反となり、番組も打ち切りとなった『ほこ×たて』(フジ)と、今回の『99人の壁』について、「視聴者との約束を裏切る」という問題点が通底すると指摘。
NHKと民放連が96年に定めた「放送倫理基本綱領」の「放送人は、放送に対する視聴者・国民の信頼を得るために、何者にも侵されない自主的・自律的な姿勢を堅持し、取材・制作の過程を適正に保つことにつとめる」との規定に照らし、放送倫理違反という決定を通知した。
■制作者たちが築いてきた財産の継承を
一方で、フジテレビがこの決定を待たず、制作体制の再点検のほか、「視聴者との約束」を考える勉強会の定期的な実施、制作上の問題を誰でも相談できるホットラインの開設などを盛り込んだ再発防止策の導入を示したことに対し、「これらの取り組みが実を結び、同様の問題が再発しないことを切に望みたい」とコメント。
そして、聞き取りを行ったベテランの制作者たちが「90人しか集められなかったなら今回は『90人の壁』だと番組内で言えばよかった。MC(佐藤二朗)のキャラクターならできたはずだ」「エキストラを補充するにしてもその人たちに解答権を与え『99人の壁』にする方法はあった。広めのジャンルのクイズを複数準備しておき、エキストラに得意なジャンルを選んでもらえばよかった」といった臨機応変なアイデアや、窮地を面白さへの突破口に変える柔軟性を持ち合わせいることを、「制作者たちが築いてきた財産」とし、今後は「ぜひ継承してほしい」と望んだ。
■「番組作りが楽しい」若い制作者の声に希望
『99人の壁』は昨年3月7日から、新型コロナウイルスの影響もあって、しばらく放送がなかったが、3カ月後の6月6日の放送では、「ブロッカー」の99人全員をリモートでつないでモニターに表示し、新たに開発した早押しアプリを駆使することで、再開にこぎつけた。
「ブロッカー」は東大生で、最初は画面上に「東大生99人をやっつけろ!!」というテロップが出ていたが、一部のリモートが切れるハプニングのたびに「98人」「97人」などと実態を反映した数字に変え、早速、誠実に番組制作に臨んでいく姿勢を見せた。MCの佐藤二朗は、スタッフたちに「ふんどし締め直してがんばろうや!」と何度も声をかけたという。
収録現場をまわすスタッフは、偽りの数字がなくなってから「ワクワクする」「後ろめたくなく番組を作れるのは気持ちがいい」「楽しい」と、聞き取りで胸の内を語っていたそうだ。意見書では「若いスタッフの口から『番組作りが楽しい』と聞けたことに希望を感じる」、さらに、コロナ禍という大きな“逆境”での番組作りが「それをヒントに新たな企画が生まれる可能性もある」と期待を込めている。
個人的には、会場の参加者100人全員が「チャレンジャー」になるチャンスをつかむことができ、「このジャンルが得意な人だからあの問題でブロックできたのか!」という奇跡が何度も起こる、あの初期ルールでのスタジオの興奮も忘れられない。コロナの収束後には、数カ月に1回のペースでも良いので、クラシックスタイルでのバトル復活にも期待したい。