BPO放送倫理検証委員会が18日、フジテレビのバラエティ番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』で解答権のないエキストラを補充していた問題について、放送倫理違反があったとする意見を公表した。
この意見書では、エキストラ問題にとどまらず、膨大な量の問題作成に伴う制作体制の破綻にも言及。その上で、コロナ禍の収録で生まれた新たなシステムを取り上げ、番組への期待の声も寄せている。
■エキストラ補充に依存していく契機
同番組は、100人の出場者を集めて収録すべきところ、人数が不足した場合、解答権のないエキストラで欠員補填して番組に参加させ、「番組が標榜している『1人対99人』というコンセプトを逸脱し、視聴者の信頼を損なう形となっていた」として、昨年4月3日、番組ホームページ上で事実関係を公表するとともに謝罪した。
フジテレビのバラエティ番組を制作する「第二制作室」のプレゼン大会の第1回優勝企画である『99人の壁』は、2017年12月31日に特番として初めて放送。その後、18年4月、同年8月と放送を重ね、同年10月から土曜のゴールデンタイムでレギュラー化された。
特番の1回目、2回目は100人の出場者が全員そろったが、3回目は収録日に台風接近が危ぶまれ、急な欠員の出た場合に備えてエキストラのスタンバイが必要と考え、業者に手配を依頼。最終的に4人の出場予定者が来ず、エキストラで補充した。
その後も、出場者の不足が慢性的に発生し、エキストラは最も少ない回で3人、最も多い回で28人含まれ、19年10月26日放送分まで延べ406人を補充。意見書では「あくまで悪天候に伴う緊急対応であったが、その後、100人を集められなかったときに、解答権のないエキストラの補充に制作者たちが依存していく契機となった」と見ている。
■1回の収録で800問が必要
一方、特番3回目の収録に先立つ18年6月、レギュラー化が決定。1回目の世帯視聴率(ビデオリサーチ調べ・関東地区)は大みそかの午前中で2.9%、2回目は平日のプライム帯で5.8%と、決して合格点ではなかったことから、制作スタッフは編成からの思いもよらぬ提案に喜ぶと同時に、不安を抱いたという。
それは、膨大なクイズの作成作業だ。1人5問突破で賞金100万円というルールのため、万が一に備えて予備の問題も用意しなければならない。これが100人分となると、1回の収録につき800問程度が必要。それぞれの裏取りと、映像や写真を使用する際は許諾の作業も発生し、それを出場者決定から収録までの間に急ピッチで行うことになる。
この不安については、クイズ作家を多く投入することで対応できると考えた。しかし、クイズの消化は思いのほか速く、作問に「忙殺された」という。
今回の審議の発端となったエキストラの補充と、膨大な作問による疲弊という事態を、フジテレビはBPOに提出した報告書で、「レギュラー化で制作体制が破綻状態に」と表した。
■作問と出場者選考負担の軽減策
この状況を脱するため、19年11月9日放送分から、100万円に挑戦できる「チャレンジャー」を破った「ブロッカー」が新たに「チャレンジャー」になれるという斬新なルールを変更し、「チャレンジャー」と「ブロッカー」を分離。作問と出場者選考の負担は、大幅に減ることになった。
チーフプロデューサーはレギュラー化後の早いうちから、企画に限界を感じていたというが、第二制作室長(当時)自らが発案した初のコンペで優勝企画、鳴り物入りのレギュラー化、局員プロデューサーを6人つける破格の布陣という経緯、社内全体が企画者である総合演出を前面に押し出す雰囲気から、強く進言しにくい状況にあり、レギュラー化から1年という時を要しての判断だった。