収束はまだまだ見えないが、斉藤氏は「新型コロナウイルスだけでなく、今までも、結核やB肝、C肝、エイズ、梅毒などの感染症があります。その中でも、その当時のベストの感染症対策を行って法医解剖を実施し、“死因を究明する、真実を追求する”ということが法医学の意義だと思っています。犯罪に巻き込まれた被害者が感染症であった可能性もありますし、行き倒れていた人が新規感染症で亡くなっているかもしれません。そういう方々の背景を突き止めることは、生きている私たちの安全、安心につながっていると思います」と、まっすぐに明日を見つめる。
加えて、「法医学及び病理学分野の若手人材育成にとって、感染防護対策が施された解剖室、感染防護物資の十分な供給は必須であり、今後の喫緊の課題だと思っています。これらの物資は臨床現場でもすぐに不十分となりますので、マスク同様、国内生産で賄うようにする必要があります。また、いつか、来るかもしれない新規感染症対策として、その時に“正しく恐れる”ことができるようなプロセスを伝えることが大事であると思っています」と力説した。
■タブー視せず放送「大変ありがたい」
「正直、医療分野及び科学研究が進展している現代において、約100年前に大流行したスペイン風邪(現在のH1N1亜型インフルエンザ)みたいなことが起きるとは想定外でした。今回のコロナで、“感染症と人類の闘いは永遠である”ことを思い知らされました」という斉藤氏。
その上で、『監察医 朝顔』で感染症に立ち向かう朝顔(上野樹里)たちを描くことに関して聞くと、「新型コロナウイルス禍の今、感染症の話題をタブー視せずに、あえて放送していただくことは、“新規感染症が蔓延している中でも、真実を追求するために解剖を実施している人が存在する”という現実を世の中の方々に知っていただくという機会であり、法医学分野に身を置く者としては大変ありがたく思っています」と、ほほ笑みながら答えてくれた。