一向に収束する気配がない、新型コロナウィルス感染拡大問題。営業時間短縮などで苦境に立たされている飲食店のニュースを目にする機会も多い。そんな中、シェアキッチン型飲食店「@Kitchen」は、2020年5月に1号店をオープン以降、次々と店舗を増やし、2021年1月には麻布に6号店がオープン予定だという。飲食不況のこのご時世で、なぜこんなに人気を得ているのか? イタリアン、フレンチ、和食など都内有名店出身のシェフがフードロスに取り組む「@ Kitchen AOYAMA」にお邪魔して、店舗を運営するWORLD代表・坂めぐみさんに、その理由について話を訊いた。
コロナ禍、「@ Kitchen」をオープンした経緯
――WORLDは2020年5月、浅草に「@ Kitchen」1号店をオープンされました。コロナ禍真っ只中での新規オープンになったのはどういった経緯があったのでしょうか。
坂:もともと、弊社は浅草でインバウンド向けの飲食店を経営していたんですが、新型コロナウィルス感染拡大により、かなり売り上げが落ちたんです。ただ、国の融資や助成金を待っているだけじゃなくて、コロナの時代でも新たにそこから何かを立ち上げる人って絶対いると思うので、そういうところのチャンスを生かしていけたらなと思ったのがきっかけでした。世の中を見たらみんな困っていますけど、とくに飲食業界は厳しい状況。それこそ何十年も続いている有名店、レストランとか色んなところがバタバタと閉店する中で、そこの経営も厳しいし、働いているシェフたちも放り出されてしまっている状態なので、自分が困っていることもあるんですけど、もっと広い視点で、世の中全体で今何が求められているのかという軸で、何か面白いことができたらなと考えていました。そこで、自分がもともと持っている飲食店という場所と、将来独立するために色んな有名店で修業していたシェフたちを掛け算して、本来描いていた独立に向けてのチャレンジをできる場所として使ってもらったら、またそこで新しい面白い形で飲食店を始められるんじゃないかと思って、「@ Kitchen」をスタートしました。
――緊急事態宣言が出たのが4月頭で、5月にそうした動きを取るのって、かなり切り替えが早いですよね。
坂:そうですね、行動はいつも早いです(笑)。あるもので勝負するって考えたときに、うちみたいなかなり少数精鋭でやってるベンチャーだからこそできることって、小回りが利くことなので。緊急事態宣言があって、世の中の人たちがステイホームで自粛したときに、大手のフランチャイズチェーンとかで何店舗も展開しているお店だったら、なかなか一気にお店のコンセプトや内容を変えるっていうことは時間がかかると思うんですよ。でもうちは私が代表なので、やろうと思えばすぐにできます。それってすごくベンチャーの強みだと思うんです。大手に比べて資本がない、力がない、ではなくて、ベンチャーだからなんでも思いついたことをやったらいいじゃんって思うんですよ。