とは言っても、在来線の揺れに比べればごく小さい揺れであり、集中して本を読んでいたり、スマホを見ていたりすれば気にならない程度だと思われる。トンネル内で車窓の景色が変わらないため、余計に速さを感じにくい面もあるだろう。
ただ、この年末年始期間に最高速度210km/hの北海道新幹線に乗った複数の人から、「トンネルに入ってからはGがかかるのを感じた」「いつもより飛ばしている感じはした」との感想が聞かれたことも事実。青函トンネル内での最高速度210km/h運転は、「気にしなければ気づかないが、気にしていればたしかに速さを感じる」といった表現が合っているように思う。
■まだまだ「縮みしろ」がある?
ここまで繰り返し、「最高速度210km/h」の表現を用いてきたが、このときに乗車していた「はやぶさ18号」が実際に210km/hに到達したのか、到達したとして、その速度をどれだけの時間維持したのかはわからない。だが、平均速度を求めることはできる。
1月3日に最高速度210km/hの北海道新幹線に乗車し、青函トンネル(正確には青函トンネルと第一湯の里トンネルの総延長55.017km)の通過時間をストップウォッチで計測したという筆者の友人によれば、トンネル通過時間は19分5秒だったそうだ。復路は18分57秒だったとのことで、所要時間を「およそ19分」とする車内放送はおおむね正しかったことがわかる。この通過時刻とトンネルの総延長をもとに計算すると、実際の平均速度は173km/hとなる。
この数字をどう受け取るかはそれぞれだが、良くとらえれば「まだまだ速度向上=所要時間短縮の余地がある」と言える。伸びしろならぬ「縮みしろ」とでも言えるだろうか。
「縮みしろ」はまだある。青森大学付属総合研究所客員研究員の永澤大樹氏は、「今回の高速化は貨物列車との共用走行区間82kmのうち青函トンネル区間55kmのみの措置で、前後の27kmは160km/hのまま」と指摘する。「新函館北斗~新青森間の全線が260km/hで運行できれば所要時間40分以内が実現し、将来的には東京~新函館北斗間で3時間半切りの実現も視野に入ってくる」とも話す。
今回の青函トンネル内最高速度210km/h走行については、「3分間短縮したところで意味があるのか」とする否定的な声があったのも事実。だが、将来のさらなる高速化を見据えた試みであったことを無視してはならない。永澤氏も、「道民にとっても、青森県その他、北海道と往来機会があるすべての人にとっても、間違いなく偉大な一歩」と評価し、その上で国に対して、「今後も速度向上対策のスケジュールを具体的に示しながら札幌延伸に備えてほしい」と要望する。
共用走行区間の高速化については、今後もさまざまな取組みが行われていくことだろう。引き続き注目していきたい。