キーボードが正方形に近づいた
―― キーボードが正方形に近づいたのも注目ポイントだと思うんです。ユーザーから要望があったんでしょうか?
古賀氏:ありました。dynabook V・Fは5in1ですけど、やはり一番使うのはノートPCスタイルです。そのときに大切なのはキーボード。前回のモデルから多くのフィードバックをもらい、キーボードに関するご要望やご意見が大きかったんです。
だいたいキーボード(キートップ)は正方形なんですが、dynabookシリーズは横長の長方形気味でした。これだとタッチタイプで上を叩きがちです。よって、新モデルでは正方形を目指しました。デザイナーも含めて配列などを検討した結果、新しい配列になり、「キーボードを快適に打つ」という原点に立ち戻って開発しています。
―― 次回の新モデルでは、もっと正方形に近くなるんでしょうか?
島本氏:正方形、そうですね、やってみたいですね。いずれにせよ、さらに打ちやすく快適なキーボードを常に目指して、いろいろ検討していきたいと思います。
古賀氏:ナローベゼルを突き詰めていくと、13.3型で16:9画面では、キーボード面ではほんの小さなタッチパッドしか残らないため、そこのせめぎ合いです。キーボードを上に寄せればかっこよくなりますが、内部のパーツ配置やキー配列に無理が出たりします。設計からはいろいろな要望がくるので、どうバランスを取るか、設計やデザインを含めて、どうユーザーインタフェースを決めていくかが重要です。
レガシーのニーズ
―― USB Type-C端子を2個だけにする、みたいなこともやらないですよね?
古賀氏:dynabook Vは、お客さまから「あれがない」っていうのをなくしたかった。キーボードもタッチパッドもこだわり、USBはType-Aも残しておきたかった。今後もUSB Type-Cのスタンダード化は進んでいくでしょう。ただUSB Type-Aをなくすと不便なケースもまだまだあり、そこは世の中のトレンドとバランスを取りながら検討していきます。
―― レガシーのニーズって、なかなかなくならないですからね。
島本氏:特にB2Bの現場になると、なかなかレガシーは外せないんですよね。今回のdynabook Gシリーズでは有線LANポートをつけています。PC本体が薄くなればデザイン性も高くなるので、割り切ってUSB Type-Cでそろえることもできますが、やはりバランスを考えつつ決断することが重要です。
―― 特に我々のような編集者や記者、ライターは、ノートPCに求めるものが微妙にズレていたりするので、フルサイズのSDカードスロットを欲しいんですよね(笑)
島本氏:マスコミの皆さんからよく言われます(笑)。お気持ちはとてもわかります。有線LANポートも、国内の企業ユーザーから「有線LANはどうしても入れてくれ」というご要望が多いので対応しています。
テレワークのセキュリティも担保
―― 「かんたんテレワーク スターターパック」も発表されました。
中村氏:かんたんテレワーク スターターパックは、MicrosoftのAutopilot技術を応用しています。
具体的には、コロナ禍で極力対面での作業を避けるために、在宅勤務を希望される企業の従業員の方々に、工場から直接PCをお届けます。お客さまがPCの電源を入れてインターネットに接続すると、テレワークに必要なプログラムや情報がクラウドから降ってきて、自動的に設定が完了します。お客さの手を煩わすことなく、企業のIT部門が制定する環境・セキュリティ設定が完了するサービスです。これが我々の目指すゼロタッチ・プロビジョニングです。また、ITマネージャーをお持ちでない、中堅・中小の企業のみなさまに対してヘルプデスクサービスもご提供し、バックアップ体制を強化しております。
本サービスは新規PCをご購入されるお客さまを対象としたものですが、今後は、現在お客さまが使われている他社製のWindows PCに対しても同様のサポートを行っていく予定です。
熊谷氏:2020年4月の緊急事態宣言で、多くの企業がテレワークの導入を始めていますが、準備期間がほとんどなかったため、必ずしも最適な環境で利用されているとは言えません。他メンバーと情報を共有する環境や、セキュリティ環境などが不十分な状態で、テレワークを実施している場合が少なくありません。
今後、テレワークを定常化していくためには、まずは快適性が求められ、その次はセキュリティが課題となります。中小企業では総務部門が情報システムを兼務していることもありますから、Windows AutopilotというクラウドベースでPCの環境構築をするマイクロソフトのサービスを活用して、我々がセキュリティ構築を代行します。セキュリティの環境構築も我々にお任せいただけます。
熊谷氏:Dynabookでは、ハードウェアとクラウドサービスの両軸でソリューションを提供していきます。いつでもどこでも同じサービスが受けられる、というのがニューノーマルになっていくのではないでしょうか。会社の環境は100点の環境だけど、自宅は30点、カフェでも30点で何とかやっている……というケースも多かったんですが、新しい時代ではどこでも100点満点のサービスを受けられるようにします。
テレワーク導入には、企業規模の差や地域差もあります。我々としては、大手企業向けにはカスタマイズできるサービスを、中小企業向けには簡単に導入できてサポートも充実しているテレワークパッケージをオススメしていく考えです。
―― 読者に向けて、新しいdynebook V・Fの「ここを見て欲しい」というポイントをアピールしていただけますか。
古賀氏:個人的には音です。よくこれだけの音が実現できたなと。映像とセットで、PCでもこれだけのことができるんだと感じていただけたらと思います。
島本氏:設計としては、国内初のEVOをアピールしていきます。我々も初体験でしたが、設計陣みんなが苦労してきたこともあり、胸を張りたいところです。
また、今後も在宅時間は増えるでしょう。dynabook VシリーズにはThunderbolt 4やHDMI端子があるので、4Kディスプレイを2画面つないで、3つのディスプレイで利用できます。そうした拡張性にも注目してみてください。
中村氏:dynabook V・Fはもちろんのこと、我々が提供しているPCラインナップも含めて、優れたコンピューティングをソフトウェアとクラウド技術で支えることによって、ハードウェアとサービスという両輪にご注目いただけたらと思います。先ほど「かんたんテレワーク スターターパック」でご紹介いたしました、PCを直接お届けし、お客さまの手を煩わせることなく、テレワークに必要な情報がクラウドから降ってきて設定が完了するという「ゼロタッチ・プロビジョニング」もその活動の一環です。
熊谷氏:リモートの働き方を快適にしていくと同時に、DX(デジタルトランスフォーメーション)を旗印にして、コンピューティングのノウハウを他事業にも広げていきます。ノートPCの技術を幅広く活用して、クラウドサービスをセットに拡大していく考えです。少しずつ変わっていく姿を見せられればと思います。
―― 本日はありがとうございました。