◆RMMT 1.1(グラフ72~74)
RMMT 1.1
Rightmark.org
http://cpu.rightmark.org/products/rmma.shtml
Ryzenの場合、メモリコントローラはDual Dieからのリクエストを受ける方が性能が上がりやすいようで、Read/WriteともにRyzen 9が最高速である。ただそれでもReadでRyzen 9 3900XT/3950XTよりもRyzen 9 5900X/5950Xの方がやや帯域が上がるのは、IPCというかLoad/Storeユニットがより効率よくLoadリクエストを発行できる様になったためかと思われる。
一方WriteはBurst転送が出来ない事もあってかそもそもそれほど性能差が出ないが、それでも2ダイ構成のRyzen 9が上位にいるのは流石である。謎なのはRyzen 9 5900X/5950Xの5Thread以降。どうしてここがピークになるのか、良く判らない。Ryzen 9 5900Xだけなら何か誤差とかミスの可能性も疑えるのだが、Ryzen 9 5950Xも同じ傾向を示している辺り、これはそういうものなのだと思う。
ちなみにRyzen 5 5600Xに関して言えば、Read/Writeともにそれなりといったところ。ただ別に低い訳ではなく、Ryzen 5 3600XTはもとよりRyzen 7 3800XTをも上回る帯域になっているから、ちゃんと性能は改善しているのだが。
Read/Write Mix(グラフ74)については、なぜかRyzen 9 5900Xが最高速になっているが、Ryzen 3000シリーズでもRyzen 9 3900XTが最高速なあたり、やはり2ダイ構成の製品の方が有利というのは判るが、Ryzen 9 3950X/5950XよりもRyzen 9 3900XT/5900Xの方が帯域が上なのは、やはりBase Clockが高い事が関係しているのだろうか?
◆消費電力(グラフ75~81)
最後に消費電力について。前回同様Sandra 20/20のDhrystone/Whetstone(グラフ75)、CineBench(グラフ76)、TMPGEnc Mastering Works 7(グラフ77)、3DMark FireStrikeのDemo(グラフ78)、Final Fantasy XV(グラフ79)の消費電力変動をそれぞれ示す。
ちょっとグラフの線が多くなりすぎてて読みにくい部分もあるのだが、ポイントとしては
- Ryzen 9 5950Xの消費電力は高めだが、それでもRyzen 9 3950Xより微妙に下がっている
- Ryzen 5 5600Xの消費電力は、Ryzen 5 3600XTより結構下がっている
というあたりかと思う。ただこのままだと見にくいので、待機時の消費電力を含めた各々の平均値をまとめたのがグラフ80、ここでそれぞれの性能と待機時の差を取ったのがグラフ81である。
このグラフ81の数値を基に、
- Ryzen 5 3600XTとRyzen 5 5600Xの差
- Ryzen 7 3800XTとRyzen 7 5800Xの差
- Ryzen 9 3900XTとRyzen 9 5900Xの差
- Ryzen 9 3950XとRyzen 9 5950Xの差
の4つを算出したのが表2である。
■表2 | ||||||||
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Dhrystone | Whetstone | CineBench All CPU | CineBench One CPU | TMPGEnc Peak | TMPGEnc Avg | FireStrike | FF15 | |
Ryzen 5 5600X - Ryzen 5 3600XT | -20.2 | -17.3 | -33.5 | -9.5 | -29.4 | -33.6 | -7.8 | -1.3 |
Ryzen 7 5800X - Ryzen 7 3800XT | 33.9 | 35.0 | 28.6 | -0.9 | 30.9 | 26.6 | -0.4 | 22.9 |
Ryzen 9 5900X - Ryzen 9 3900XT | -23.9 | -14.1 | -39.0 | -10.3 | -26.7 | -36.4 | -9.0 | 11.4 |
Ryzen 9 5950X - Ryzen 9 3950X | -11.0 | -10.7 | 9.1 | 12.1 | -20.4 | -13.7 | 8.9 | 37.8 |
ここで数字がプラスなのは、Ryzen 5000シリーズの方が消費電力が多い(マイナスならRyzen 3000シリーズの方が多い)という意味だが、見てみるとRyzen 5 5600はほぼすべての項目で大幅な省電力が実現できている。FireStrikeやFF15では省電力の効果が薄いが、これはGPUがフル稼働しているテストだからCPUの占める割合が低いわけで、致し方ない。またRyzen 9 5950Xも、おおむねCibneBenchとFF15以外は10~20Wの省電力化が実現できている。性能が上がりながら実質的な消費電力を減らせている訳で、これは大きな改善である。
もっとも全部が全部という訳でなく、Ryzen 7 5800Xは全体的に消費電力が結構増えている。Ryzen 7 3800XTはTDP 105Wといいつつそこまで使い切る事は無かったが、Ryzen 7 5800Xでは105W目いっぱいまで使うように設定されたようで、それもあって性能も上がるが消費電力も上がるという、ちょっと痛しかゆしではある。もっともその分性能も伸びているし、105Wの枠を超えている訳でもないので、許容範囲ではあろう。
考察
というわけで性能編の完全版をお届けした。もうすでに購入を考えている読者の大半は購入してしまったのではないかと思うので、あまり意味のないレポートになった感は否めない(筆者の責任です。すいません)が、それでもまだ多少居られるであろう「これから購入するかどうかを考える」方へのガイドになれば幸いである。
結論としては以前の評価と余り変わらないのだが、付け加えるとすると
- ゲームがメインで、しかもハイエンドビデオカードを組み合わせるのでなければ、Ryzen 5 5600Xで十分。消費電力も低く、それでいてGeForce RTX 3080との組み合わせでも力負けする(つまりCPUネックになる)シーンはそれほど多くなかった。
- ベストバランスという意味では、Ryzen 7 5800Xをお勧めする。やや消費電力も増え、価格も増えるが、それこそ動画のエンコードとかデジカメ画像のレンダリングでもそれなりの性能が期待できる。ゲームもしばしば最高速を記録している。
- 絶対性能という意味ではやはりRyzen 9 5950Xであろう。CGのレンダリングみたいに、コア数で性能が決まるシーンでの性能の高さはピカ一である。もっともゲームとかでは思ったほど性能が出ない(というか、価格性能比が悪い)と感じるかもしれない。
というあたりだろうか。
原稿執筆時点(12月末)におけるAmazonでの価格を調べると
Ryzen 5 5600X: \47,500~
Ryzen 7 5800X: \60,980~
Ryzen 9 5900X: \88,888~
Ryzen 9 5950X:\134,980~
といった感じで、即納はRyzen 5 5600Xだけであった。もう発売後1か月以上経過しているのに、まだ品薄感は高い(手に入らないというほどではないが)。ただ性能を考えればこの価格はまぁまぁ妥当だろうか(ちなみに筆者も私物でRyzen 7 5800Xを購入した。2021年のベンチマーク用リファレンスになる予定だ)。
さて、今後の予定であるが、「Deep Dive編はどうした?」と言われそうだが、こちらはこれからである。その前に年末年始の恒例企画もこなしているので、その後の着手になる予定である。ということで、もうしばらくお待ちいただきたい m(_ _)m