昨年iPhoneは、5nmプロセスで製造されるA14チップ搭載で性能と効率性が大きく向上した。次期AプロセッサはTSMCの5nmの改良プロセスで製造される可能性があるが、昨年のような大幅な向上は期待できない。次期iPhoneについては、120Hzリフレッシュレート、Wi-Fi 6E、ノッチの縮小、1TBの最大ストレージ、大きな画像センサーをMax以外の機種に拡大、ポートレスなど、様々な噂が飛び交っている。
ただ、話題性はともかく、2021年のiPhone市場で最も大きな存在になりそうなのは次期iPhoneではなく「iPhone 12」だ。以下は、米国の昨年のクリスマスにおけるスマートフォンのアクティベーション数のトップ10だ(Flurry調査)。青いラインはアクティべーション数、点線はアクティベーション数/日のクリスマス前7日間の平均。増減率の数字は、12月18〜24日の平均とクリスマスの比較(つまり、プレゼントだったかどうか)。
ここ数年のiPhoneの販売傾向は、秋の発売直後には一時的にハイエンド機種が伸びるが、売れ筋はiPhone XRやiPhone 11のようなミドル〜ミドルハイの機種である。順当なら昨年末はiPhone 12がトップになるはずだった。ところが、iPhone 11が2連覇するという異変が起きた。昨年のクリスマスはアクティベーション数が前年比23%減だった。コロナ禍でスマートフォンを買い換える意欲が減退し、また5G対応で最新のミッドレンジ上位であるiPhone 12の価格が上がったこともあって、iPhone 11がよく売れたのだろう。
ただ、トップ10の9機種がiPhoneと、コロナ禍においてもiPhone人気がすさまじい。価格を除けば、iPhone 12の評価は高い。今年の秋に次期iPhoneが登場し、今のiPhone 11のポジションにiPhone 12、つまり5G iPhoneが降りてくることで5Gスマートフォンの普及が加速すると期待できる。iPhone 12の後継になる次期iPhoneが再び699USドルに下がったら爆発的に売れるという予測もあるが、OLED (有機EL)パネルやQualcommの5Gモデムといったコスト要因を考えると価格を抑えるのは「難しい」と言わざるを得ない。
iPadは、iPad Proが大きなアップデートのタイミングを迎えており、こちらは現在の搭載SoCが7nm製造のA12Z Bionicなので、5nm製造のA14の強化版またはそれ以上ならジャンプアップになる。
iPadは、iPad ProがOLEDパネルを搭載するという噂があるものの、大画面で安定しないため、12.9インチにミニLEDを採用するという予測も。ミニLEDの場合、広い色域やダイナミックレンジの表現は申し分ないものの、コストがネックであり、MacBook Proにも搭載して量を増やす可能性があるが、それでもプロをターゲットにしたデバイスの価格が上昇する可能性が気になるところ。
売れ筋という点では、iPhoneと同様に、iPadも普及価格帯の機種である。iPadのアップデートサイクルは約18カ月と言われているが、それはiPad Proの場合で、基本機種の「iPad」は第5世代(2017年3月)、第6世代(2018年3月)、第7世代(2019年9月)、第8世代(2020年9月)というようにほぼ1年のサイクルで新世代製品が登場している。iPad独自の機能追加はないものの、手頃な価格を維持し、コストが下がってきたiPad ProやiPad Airの機能をとり入れている。今年も新世代製品が登場すると期待したい。