新作の『教場II』に先駆け、12月29日・30日(21:00~)に放送される前作のスペシャル編集版は、“見せ方の違い”に注目してみると面白い。
「前回は主人公の風間がどう転ぶかも分からないし、良い人か悪い人かも分からない中でのお話だったので、振りとその回収が非常に難しかったですね」というが、それを象徴するシーンが、大島優子演じる警察学校の生徒・楠本が両足を負傷してしまう場面だ(前編)。
現場にやってきた風間は状況を確認し、犯人の手がかりを聞き出すのみで、すぐに助け出すことはしなかった。教官でありながら非情すぎる風間の行動に対し、視聴者は「どういうつもりなのか?」「本当に悪い人物なのではないか?」と混乱し、スリリングに感じてしまうのだが、後にそこに隠されていた“意外な意図”が判明するという構成になっている。
「どこまで振っていいんだろうってすごく悩みましたね。事前に振りすぎるとバレてしまうし、振りを回収したときに『こういう意図だったのか』って分からないと意味がないし…。だから、前回は答え合わせをする画を多めに入れました。あの裏でこうしてたんだっていうのが、視聴者にちゃんと分からせないと落ちないので。原作で読む分には面白かったんですけど、映像化するとなるとそこがすごく難しかったですね」
■新作は「複雑で心情的な展開が多い」
新作は、そんな風間のキャラクターを視聴者も知った上で展開されるため、「今回は前回よりちょっと複雑な、もうちょっと心情的な展開が多いかもしれないですね」と予告。前作を知った上で視聴者をどう裏切り、どう意外性のある展開へもっていくのか、注目して見ていきたい部分だ。
改めて前作を見ることでより楽しめる作品になっているのかと尋ねると「そうだと…いいですね」と笑って答えてくれた中江監督。
ドラマから感じられる独特の“空気感”がいかにして作られ、そして前作との“見せ方の違い”について着目していくと、「教場II」がより深く味わえるだろう。
●中江功
1963年生まれ。法政大学卒業後、88年にフジテレビジョン入社。これまで演出を手がけた主な作品は『愛という名のもとに』『ひとつ屋根の下』『若者のすべて』『ピュア』『眠れる森』『空から降る一億の星』『Dr.コトー診療所』『プライド』『ようこそ、わが家へ』『教場』など。映画『冷静と情熱のあいだ』『シュガー&スパイス 風味絶佳』『ロック ~わんこの島~』の監督も務める。2020年は『教場』と『世界は3で出来ている』でギャラクシー賞月間賞を受賞した。