●アニソン歌手だからこそ届けられる曲とともに、見せ続ける進化

歌唱後には、来年TVアニメのSeason2が放送される『ゆるキャン△』の話題に移ると、TVアニメ1作目のOPテーマ「SHINY DAYS」から終盤戦スタート。虹色のグラデーションの中さまざまな“△”が飛び交う映像を背負い、満面の笑みでクラップを煽りながら、歌声でもステージングでもハッピーをカメラの向こうの世界中へと膨らませて広げていく。

Dメロ序盤の高音部も陽射しのようにぱあっと明るく歌い上げると、いつもならばコール・アンド・レスポンスのポイントとなる落ちサビはカメラの向こうに呼びかけつつの歌唱。きっとカメラ越しに世界中のみんなとの、同時多発的なシンガロングが起こっていたはずだ。

続けて今度は『ゆるキャン△』イメージソング「Isn’t It Fun?」を歌唱。青空の映像を背負いながら、高音多めのメロディを巧みにファルセットも交えながら歌うことで、彼女の歌声もより晴れやかさを増したような印象。

その音楽の陽射しにアツくなったからか、上着を脱いで笑顔で歌唱。複雑なDメロの旋律もしっかりと歌いこなし、ラストのロングトーンや間奏のスキャットではソウルフルさも感じさせ、カメラアピールも忘れない――こうして思いっきりエンジョイしつつ濃い1曲を完成させると、同じシングルに収録された「1000miles」へ。カントリー調で’80sの洋楽テイストのこの曲もまた、旅の途中を思わせる曲。楽曲のリズムに乗りつつ力を入れずにボリューム感をもたせた歌声に、改めて凄さを感じた。

そんな楽しい旅の向こうに待つのは、ワンマンライブ本編のラスト。ライブ全体を振り返って「アーティストとして、とてもいい経験をさせていただきました。濃かった!」と総括し、「アニソン歌手だからこそ届けられる曲って絶対にあるはずなので、これからももっといろんなアニメに関わってアニソンを歌っていきたいです。

自分も夢を見せていく立場になってきたと思うので、今日はアニソン歌手になってよかったなという感謝の気持ちを歌に乗せて伝えたいと思っています」と、キャリアを重ねた今だからこその想いを改めて口にすると、「終わらない夢」の歌唱へ。

温かくも要所では力強さを乗せて、この曲に込めた芯を感じさせるボーカルワークをみせていく亜咲花。それが非常に自然に行なわれているのを目にして、この曲と彼女のさらなるシンクロを感じさせられた。落ちサビでも想いが込みあげて声を詰まらせることもなく、しっかりと大事なメッセージを届けていく。

自身のこれまでを振り返る曲であるのと同時に、今ではこの曲は、多くの人の背中を押す曲にもなり始めていることだろう。そして「最後はみんなで一緒に歌うよー!」とのシャウトからスタートした本編ラストナンバーは、「Eternal Star」。最後まで歌声はまったくパワーダウンすることなく、安定感は抜群。

そのうえで、落ちサビではサウンドに合わせて清涼感も感じさせるなど、さらに細部にまで磨きがかかっていたことがわかる。加えて1サビの最後には投げキッスも織り交ぜるなどカメラアピールもバッチリ決め、視覚面でも隙を見せないまま、ジャンプエンドとともに本編を締めくくった。

●“ならでは”の選曲で、After Showまで楽しみ尽くす!

本編終了後には、ファンクラブ会員限定チケットを購入した方のみが参加できるAfter Showを開催。リメイクしたライブTシャツにお色直しして亜咲花とバンドメンバーが登場し、コメントも拾いながらバンドメンバーとの心の距離感の急接近ぶりなどの話題に花を咲かせると、トークのみにとどまらず歌唱も披露。

「今までバンドでやったことがない曲がいいな!」というコンセプトのもと「GET DOWN」を選曲する。楽曲のテーマやそこに込めるメッセージも大事にして力強さも盛り込みつつ、時折こぼれる笑みからは、アフタートークでも本編同様にライブを心から楽しむ心持ちが感じられた。

バンドメンバーも交えた笑いの絶えないにぎやかなトークも挟みつつ、続いては久しぶりにバンドを背負っての歌唱となる「ILLUMINA」を披露。水を飲んで気持ちを一瞬で切り替えると、シリアスなミドルバラードに、伸びやかで澄んだ歌声を乗せていく。

しかもただ気持ちよく歌うだけではなく、歌唱後には「今歌うと歌詞の深さを感じる」と、歌唱中に実感した自身の成長にも言及。持ち歌の中に多いミドルナンバーを歌えたということについての喜びも、あわせて語っていた。

そしてAfter Showも、いよいよラストの曲へ。「本当は目の前に来てもらいたかった気持ちもあるけど、ライブ後にも安全にみんなに生活してほしいから、この決断を後悔していません。もしまたオンラインライブがあったら、今日学んだことを踏まえて世界中にアニソンを届けたいです!」と改めてメッセージを送ってから歌い始めたのは、彼女の人生の中でも特に大事な存在のひとつとなった「Edelweiss」。

しかし今日は、感極まるようなことはない。Bメロ前には「いくよー!」と普段どおりにファンへとジャンプを煽るなど、いつもどおりの笑顔のステージをみせることで、画面の向こうのみんなに寄り添う勇気の歌として届けていたように感じられた。最後に改めて、感謝も込めたジャンプエンドと「まったねー!」の言葉を送り、アフタートークも終了。久々のワンマンライブは、大成功に終わったのだった。

ノドの手術という、大きな決断を乗り越えてワンマンのステージに立った亜咲花。リハビリ等、表には出さない努力も積み重ねて帰ってきたであろう彼女の歌声は、持ち味のひとつであるハスキーさは残しつつも、従来以上にスムーズに声が出ている印象もあった。

それがステージ上の佇まいから余裕さえも感じさせ、彼女がひとまわりスケールアップしたような印象を、強く与えてくれる。新曲のリリースも決まっている2021年の亜咲花は、きっと今まで以上にアニソンシーンを引っ張っていく存在となるだろう。この日体感した、歌声のもつスケール感とMCで口にした自覚は、そう確信させるには十分すぎるものだった。

●亜咲花ワンマンライブ2020 ~ERA~

2020.11.20
【SET LIST】
M01. Last Friday Night
M02. Never ending true stories
M03. I believe what you said
M04. SCREEEAM!!!
M05. Round of new thing
M06. Marine SNOW
M07. Singbird
M08. The Sunshower
M09. 冒険でしょでしょ?(カバー)
M10. 空色デイズ(カバー)
M11. SHINY DAYS
M12. Isn’t It Fun?
M13. 1000miles
M14. 終わらない夢
M15. Eternal Star
アフターショー
M16. GET DOWN
M17. ILLUMINA
M18 Edelweiss