――柴崎貴行監督(第1、2章※柴崎監督の「崎」は立つ崎が正式表記)、中澤祥次郎監督(第3、4、11、12章)、上堀内佳寿也監督(第5、6章)、石田秀範監督(第7、8、13、14章)、坂本浩一監督(第9、10、15、16章)と、これまで5人の監督が『セイバー』を演出されてきました。監督によって、内藤さんに要求される芝居の内容が変化することなんてありますか?

確かに変わりますね。台本を読んでいて、このシーンで飛羽真はコミカルな表情をするのかな、なんて考えていたら「ここではあまりくだけないで、真面目に」と言われることもありました。自分自身、まだ芝居を始めたばかりでなかなか上手くできないところがありますから、できるだけそれぞれの監督の演出に合わせて、思いに応えたい気持ちで演技するようにしています。ずっと撮影を続けてきて、最近は自分なりの「飛羽真像」が出来てきましたし、だんだん「飛羽真ならこういうとき、こんな気持ちだろうか」などと思えるようにもなってきました。

――第9章で大秦寺哲雄(演:岡宏明)が仮面ライダースラッシュに変身したことにより、ソードオブロゴスの剣士が5人となりました。飛羽真を含めた6人の剣士たちが一堂に会する現場の雰囲気は、どのような感じですか。

わりと自由に、みんながノビノビとやっている印象ですね。飛羽真の営む「ファンタジック本屋かみやま」に集まるカットでも思い思いに――撮影が始まる前から場所を決めて座っている人や、監督から言われた場所に座る人もいて、結果的にすごく画面のまとまりがよくなっているんです。僕(飛羽真)は基本的に真ん中のデスクが定位置なんですけれど、他の人たちは「早い者勝ち」みたいに、どのポジションを取ろうか考えていることが多いですね(笑)。

石田監督はみんなの配置にこだわりがあるようで、現場に入ると「君はここ、君はここ」と決めていましたけど、中澤監督や坂本監督のときは、みんなが最初に決めた場所についたら「じゃあそれで行こう」って感じでしたね。何気ない座り方、立ち方にも剣士たちそれぞれの性格が出ているんじゃないでしょうか。6人のチームワークも良好で、役柄と同じく個性的な人ばかりでバランスがすごくいいんです。おそらく、テレビをご覧になるみなさんにもそういった関係性が伝わっていると思います。

――6人の剣士の中で、役柄とふだんのイメージにギャップのある方はいらっしゃいますか?

それはダントツで、スラッシュの岡宏明くんですね。大秦寺って人見知りで、あまり口数の多くないキャラなんですけど、岡くんはみんなの中でいちばんよくしゃべるタイプで、その上"天然"ですから! ブレイズの山口貴也くんもかなり天然キャラだと思っているんですけど、岡くんはその何十倍もすごいかもしれません(笑)。とても仮面ライダーが大好きで、僕たちもよく彼からその話を聞くことが多いんですね。でも、放っておいたら僕が知りたいことだけじゃなくて「もういいよ」と思い始めても、ずっと話し続けているときがあります。本当に、ひたすら仮面ライダーについて熱く話している岡くんの姿はなんとも楽しそうで、かわいいんですよ。

――現場のムードメーカーを務めているのはどなたでしょうか。

仮面ライダーバスター/尾上亮役の生島勇輝さんです。僕とは10歳以上も離れているんですけれど、年上だということを感じさせない気さくな雰囲気がすごいと思ってます。僕が生島さんの立場だったら、あんな風にふるまえるだろうかと、いつも考えるんです。年下のキャストとあんなに自然に接することができるかな、距離を置いちゃうんじゃないかなって……。それくらい、生島さんには他のみんなも助けられていると思います。撮影現場では何度か、緊迫した瞬間が生まれますが、そんなときはみんなが無口になり、テンションも下がり気味になります。生島さんはそういった空気を何気ない一言で変えてくれたり、場を盛り上げてくれたり、とてもありがたくて感謝しています。

あと、尾上の息子・そらを演じている番家天嵩くんは、キャストみんなから愛されている天使のような男の子で、最高のムードメーカーです。とても素直でかわいいし、芝居もすごくうまい。あんまりうまいから、悔しくなるくらいです(笑)。僕ともよく遊んでくれるし、みんなともとても仲良し。そらくんが出演するシーンでは、みんなそらくんの話しかしないんです。キャスト同士の雰囲気を良くしてくれる、最高の存在です。

――撮影時の苦労話があれば、聞かせてください。

飛羽真がセイバーに変身するとき、ソードライバーから抜いた火炎剣烈火を"振る"アクションがあるんですが、最初のころはなかなかうまく振り回せなくて、大変でした。重いアップ用ではなく、アクション用の火炎剣烈火を振っているにもかかわらず、これもけっこう重くて、ついフラフラと動いてしまうんです。それでも最近は、何度も練習をしたことでだいぶ使いこなせるようになったかな、なんて思っていますし、アクションチームの方たちからも「うまくなったね」と声をかけていただけるようになりました。変身シーンでNGが出ると、どうしてもその場がピリピリしてくるのがわかるんですよね。山口くんだと、セリフを間違ったりしてNGになってもスタッフさんから笑いが出たりするんですけど……、あれは彼の持つ天性の明るさゆえのことだと思っています(笑)。

NGといえば、飛羽真の衣装にはいろいろアイテムが着いているんですけれど、そのひとつを着け忘れたためにシーンをもう一回やり直し、みたいなこともありましたね。また、休憩中にシャツの襟のボタンをはずしていて、本番のときに気づかずボタンが開いたまま撮影していたことがありました。途中で気づいて、あわててボタンをとめましたが、すでに何カットか撮っていたので"つながり"がおかしくなるぞと思って、恐る恐る監督に「すみません、シャツの襟のボタンが開いていました……」と打ち明けました。

――第5章では『トム・ソーヤの冒険』の話題からイメージが広がり、青木さんがトム・ソーヤ、内藤さんが親友のハックルベリー・フィンに扮して軽妙なかけあいをされるコミカルなシーンが好評でしたね。

あれは楽しかったです。上堀内監督からは、いつもの飛羽真とはぜんぜん違う感じで芝居をやっていいと言われたので、思いっきりハジケました。後から映像を見た川津(明日香)からは「ふだんの秀くんが出てるね」なんて言われてしまって(笑)。ちょっとやりすぎたかな?と思いつつも、すごく気に入っているシーンです。