撮影が始まってからは、2人のアドリブに驚いたそうで、「想像を超えたやりとりでとても面白い」と感嘆。「森さんは、よくそんなセリフを思いつくなというアドリブを出すんです。アドリブといっても普通はなんとなく想定できますが、想定の斜め上のようなアドリブを出してくる。しかも、おふざけではなく、ちゃんとキャラクターとして成立している。それに遅れることなく返す中村さんも素晴らしいなと思っています」
そして、「台本上で用意した設定や出来事以上の、台本を超えたやりとりが面白い。脚本家と台本を作っている身としてはとても刺激的で、そこが見たくなってくるんです。監督もそれを楽しんでいるところがあります」と明かし、「アドリブがキャラクターを超えたらダメですが、キャラクターを超えない範囲であれば面白いものは取り入れたいと思っています」と付け加えた。
印象に残っているアドリブは、8話のコンビニカーの前でのやりとりと、6話のSDGsについてのやりとりとのこと。6話に関しては、浅羽の「SDGsな」という発言に対する樹木の返しがアドリブだそうで、「森さんの受けの芝居が、テストから本番まで全部違ったんです。どれも面白くて、1個しか採用できなかったのがもったいないと思うくらい魅力的でした」と振り返る。
2人のアドリブは当初はまったく予想していなかったという。「出演された作品は拝見してきましたが、森さんとご一緒するのは初めてなので、どういう感じで演技をされる方なのか知りませんでしたが、よくこんなアドリブを入れ込んでくるなと本当に驚かされました」
先月29日に行われた「第12回TAMA映画賞」の授賞式で、『ラストレター』の演技が評価されて最優秀新進女優賞に輝いた森。岩井俊二監督が「経験豊富なキャストに囲まれてアドリブを入れる余裕があるのがすごい」と称えると、森は「最初にちょこっとだけやってみたら意外と怒られなかったので、だったらもっと楽しいことを、自分からでも何か提案できたらいいなと思って」と大物っぷりを見せていた。
この発言を聞いて、中井氏は「怒られなかったからやってみるという度胸がすごい」と改めて感心。「キャラクターを超えない範囲で、描かれていないキャラクターの魅力を鮮やかに彩ってくれていて、我々制作者としては見ていて毎日驚きと発見がある」とうれしそうに話し、「ぜひまたご一緒したいと思う女優さんです」と語った。
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