本作では、Y邸を実際に軽井沢に建てて撮影を行ったが、それは原作の横山氏との約束の一つだったそう。制作統括の佐野氏は「ノースライト(北からの光)が降り注ぐ南側の窓が開いていて、その向こうに浅間山が大きく見えるというのが原作のキーポイントで、実際、北にある浅間山を南から見るとすごくきれいなんです。原作者の意図はそこにあったので建てました」と説明。

また、「今回は建築士が主役で、作ることにかける思いは無駄ではないということを主人公が体感していく物語。エンターテインメントは世の中がこのような事態になるとあとになるんだなと感じる今の時代だからこのドラマを作りたいなと。そして、物語を作るキーワードが、浅間山を大きく臨めるY邸だったので、それにこだわりました」と打ち明けた。

西島もY邸の重要性を「ちょっと変わった、だからこそ青瀬の代表作になる家で、この家も主役の一つです」と述べ、完成したY邸を訪れたときの印象を「きっちり基礎も作っていて本当に住めるという感じ。原作通り、3つのチムニーが象徴的に立っていて、中も完璧に作られていて、浅間山が絵のように見えるという、これは既存の家では無理だっただろうなと思いました」と語った。

実際に建てられたY邸で撮影できたことは、演技にも大きなプラスになったという。「中に入ってノースライトの美しさ、そして、家族の団らんをイメージした家というのが随所にあり、演じる上でも非常に助けられました。『窓に向かって座って吸い込まれそうになる』と脚本に書いてあるのですが、カメラマンが『合成だと思われるだろうね』と言うくらいすごくきれいで、僕が何か想像を足す必要がないくらい吸い込まれそうな美しい景色と家でした」

撮影のために家まで建てて作り上げた本作。西島は「まずミステリーを楽しんでいただきたいと思いますが、一番見ていただきたいのは、働いている男女のそれぞれの思いと戦う姿」と見どころを伝え、「心の奥底を見せてつながることや、一見ちゃらんぽらんに見える人が実は深く仕事や家庭のことを考え、いろんなものを背負って生きているということが見えてくる。人生や世界って本当にそうだと思っていて、見えている姿ではないところ、胸に秘めた大切な思いを持って生きているというのが、ミステリーを解いていく中で見事に出てきて非常に感動的なので、そこを見ていただきたい」と熱く語った。

豪華なキャストも本作の魅力であり、住宅の依頼人・吉野陶太役の伊藤淳史のほか、青瀬が勤める岡嶋設計事務所の所長・岡嶋昭彦役の北村一輝、青瀬の元妻・村上ゆかり役の宮沢りえらが出演。また、岡嶋設計事務所の事務員・津村マユミ役として田中みな実も出演する。

西島は「北村さん、宮沢さんをはじめ、本能で演技をする方たちが集まって作品を作っていて、毎日刺激的で楽しかったので、そこも見ていただきたい」とアピール。「僕も翻弄される思いで日々演技していました」と笑顔で振り返った。

■西島秀俊
1971年3月29日生まれ、東京都出身。1994年『居酒屋ゆうれい』で映画初出演。近年の主な出演作にドラマ『MOZU』、『きのう何食べた?』、映画『空母いぶき』、『サイレント・トーキョー』など。2021年度前期のNHK連続テレビ小説『おかえりモネ』に出演予定。また、公開待機作に劇場版『奥様は、取り扱い注意』(2021年3月19日公開)、『シン・ウルトラマン』(2021年初夏公開)などがある。

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