俳優の西島秀俊が主演を務めるNHKのドラマ『ノースライト』が、12日と19日の2週にわたって放送される(両日とも21:00~)。主人公の建築士・青瀬稔を演じた西島に、横山秀夫原作ドラマ出演の心境や役作りについて話を聞いた。ドラマのために青瀬が建てた家“Y邸”を実際に建てて撮影を行った本作。西島は「家も主役の一つ」だと言い、「演じる上でも非常に助けられた」と語った。
『半落ち』、『クライマーズ・ハイ』、『64(ロクヨン)』などで知られる横山秀夫氏の同名小説を原作とするこのドラマは、家族をテーマにしたミステリー。主人公の建築士・青瀬稔(西島)は、吉野陶太(伊藤淳史)から「あなた自身が住みたい家を建てて下さい」と依頼され、吉野邸(Y邸)を完成させる。吉野一家も満足そうにしていたが、その1年後、吉野一家が引っ越していないことが発覚。一家はどこへ消えたのか、青瀬は失踪の謎を追う。
西島は、横山氏の小説が原作ということで「プレッシャーが大きかった」と告白。「素晴らしい作品で、また大森(寿美男)さんが素晴らしい脚本を書かれて、僕としては、撮影期間中もプレッシャーでつぶれそうになりながら毎日撮影していました」と打ち明けた。
大森氏の脚本は、原作の熱量と分量を見事に落とし込んだものに。西島は「よく脚本にされたなと。横山さんのミステリーはどれもそうですが、謎が解けると最後に深い人間ドラマが立ち上がってくる。それが脚本でより鮮明に見えるようになっていて、あっという間に読んでしまいました」と魅力を語る。
主人公・青瀬稔役への西島の起用について、制作統括の佐野元彦氏は「刑事ではなく建築士というアーティスト側だけど、画家とは違って依頼人がいるから成立する職業。穏やかさと繊細さ、隠れている情熱を表現してくれる人は、西島さんしか思いつかなかった」と説明。横山氏も「ぴったりだ。ぜひお願いしてくれ」と話していたという。
西島は、佐野氏が明かした起用理由を聞いて「うれしいですし、ありがたいです」と照れ笑い。「僕も事件を追う役が多いですが、今回は建築士が謎を追うということで、いつもとは違うモチベーションを作らないといけないと思って演じていました」と明かした。
演じるにあたって親戚の建築家や、設計事務所の人たちに話を聞いて参考に。「光をどう取り入れるかはその人のセンスで、センスのある人は土地の制限の中でうまく光を取り入れる」という話や、「建築士は、依頼人の希望を全部聞きながら、自分のやりたいこともその中に入れる」といった話が印象的だったという。
俳優も、脚本があり演出家もいるという制限の中で演技をするが、「自分が思う、役の一番大事なところを常に持ち続けて演じていると思う」と西島。本作において大事にしていたことについて、「青瀬の気持ちがわかるところもたくさんあり、うまくいったりうまくいかなかったりを繰り返している人間が、全部をかけてもう1回、なぜ自分はこの仕事を選んだのかということに正面から向き合い、人生が再生していくということを一番大事に演じていました」と明かし、「仕事をしている方みなさんに共感してもらえる役だと思う」と語った。