• 関強ディレクター

赤井さんの暮らしを自分が実践するのは難しいが、その考え方には理解を示した関D。この番組を通して伝えたいのは、「多様な生き方を認め合う」ことの大切さだ。

「外国人の僕から見ると、日本は、世の中の人と違うことをすることをあまり許さない面があると思うんです。赤井さんも、普通の31歳だったら会社に勤めて結婚もするでしょうし、そろそろ遊ばない方がいいなあとなるけど、彼の場合はみんなと一緒なのがすごく嫌で、自分が本当に何をしたいかが大事なんだということが分かって、すごくいいなあと思いました」

コロナの影響もあり、日本では自殺者が急増しているというニュースも流れたが、それも、多様な生き方が認められにくい社会に原因があるのではないかと推測。

「中国は日本より全然平均年収が低くて、特に農村の人たちは生活が苦しいのに、自殺率は日本ほど高くないです。もしかしたら、自分は今の生活が好きじゃないけど、他の選択肢がないから我慢しすぎて苦しんでいるのではないか。だから、本当に今苦しんでいる人は、赤井さんのように、周りを気にせずぶっ飛んで好きなことをやってもいいんだと感じてもらえれば」と、番組に込めた思いを力説した。

これまで、日本にいる立場から見た母国・中国をテーマにしたドキュメンタリーを数多く制作してきた関Dだが、長編で日本の社会をテーマにした作品を手がけるのは、今回が初めて。「今後は僕が日本を見て、さらに日本人の方も見ていない日本の知られていない面を描くものを作ることができたらうれしいなと思います」と構想を語っている。

●関強
中国・北京生まれ。2008年、大学卒業後に来日し、東京造形大学大学院で諏訪敦彦監督の指導を受ける。13年、制作会社・オルタスジャパンに入社。14年から「中国の今」をテーマに、フジテレビ『NONFIX』の『ボクが見た中国シリーズ』を制作し、これまでに「性」「金」「夢」「愛」「食」をテーマとした5作を制作した。同シリーズの『風花雪月―ボクが見た祖国・性の解放』で第32回ATP賞テレビグランプリ優秀新人賞を受賞。この他にもTokyo Docs 2017アジアドラマティックTV賞を受賞した。