日本でも赤丸急上昇中、安くてサクサクなChromebook
日本でもChromebookの注目度が上がってきました。Chromebookとは、GoogleのChrome OSを搭載したノートPCのこと。極端にいうと「Chromeブラウザしか動きません」(現在の製品は、AndroidアプリやLinuxアプリも動くようになっています)。
Chrome OSは6週間ごとに自動アップデートがあり、常に最新版として動作。起動も速く、動作も軽快なOSです。電源オフからでも10秒ちょっとで起動し、スリープからは体感的に「液晶を開ける間に復帰」します。この軽快さが気に入った筆者も、取材時のメモ用にChromebookを使っていたことがあります。「原稿さえ無事なら壊れても惜しくない」という自分コンセプトでしたが、快調に働いてくれました。
今回は日本エイサーの「Chromebook 314」と「Chromebook 712」をレビューします。どちらもIntel製CPUを搭載したクラムシェル型のChromebookです。
Chromebookの概要と現状
まず、Chromebookについて簡単に整理しておきます。Chromebookは「インターネットに接続している」ことを前提としており、本体内のストレージ容量も基本的に少なく、クラウドストレージの利用がメインです。一部の大企業では、Webアプリケーション用途や、社内コンピューターの画面だけを転送するVDI端末として使われています。また、以前のChromebookはCPUにIntel Celeronを使用した製品が主流でしたが、最近はIntel Core i7やARMアーキテクチャのプロセッサを搭載したモデルもあり、製品の幅が広がりました。
世界の教育機関でもChromebookの導入が広がっています。Googleの「G Suite for Education」という、普段使っているGoogleのサービス(Gmail、スプレッドシート、ドライブ、Meet、ドキュメント、スライド……)に加えて、先生が指導と学習を管理するための「Classroom」や、Chromebookとアカウントを一括管理する「admin」といった豊富な機能が無料で使えます。アメリカの教育機関では、2014年にChromebookがトップシェアを取りました。
日本の場合、GIGAスクール構想に則してChromebookを導入する学校や、業務用として導入する自治体も増えています。導入コストや運用を含めた総コストの低さに加え、アメリカ市場での導入事例があるからともいえるでしょう。MM総研が2020年10月に発表したレポートによると、日本におけるChomebookの稼働数は2019年末でわずか24.5万台でしたが、2020年末には181.6万台へと急増、2021年末には463.1万台になると予測しています。
Chrome OSは、製品ごとにアップデートの「自動更新期限」が設定されているのも特徴です。つまり、Chromebookは製品によってサポート期間が異なる点は覚えておいてください。筆者が初めて買ったASUS Chromebook C200MAは、2019年6月をもってアップデートが終了しています。予備機にしているLenovo Ideapad S330 Chromebookは、当初は2022年6月までのアップデートでしたが、2025年6月までと3年間延長されました。今後は、Googleが新規開発してから8年以上の更新期限を持たせる方針のようです。
Intel CPU採用で比較的パワフル、バッテリ持ちもグッド
Chromebook 314
Chromebook 314(以下、314)は、普段使い向けの14インチChromebook。WXGA(1,366×768ドット)の非光沢液晶を、デューシルバー(紫がかった銀色)の狭額縁に納めています。タッチには対応していません。本体サイズはW323×H16.95×D232mmで、筆者が以前買った「13.3インチ用ケース」にギリギリ収まる大きさでした。重さ公称約1.4kgとなっており、これくらいのサイズと重さなら「たまにモバイル」にも使えるでしょう。
今回の試用機は「CB314-1H-A14Nという型番。314シリーズの中でもエントリークラスとなり、実勢価格が3万円を切っているのが大きな魅力です。
スペックをざっとまとめると、CPUはIntel Celeron N4020、メモリはLPDDR4 4GB、ストレージはeMMC 32GB(64GBモデルもあり)。初期状態だと、ユーザーストレージの空きは18.7GBでした。バッテリ駆動時間は公称12時間と長く、ファンレスで静かに動いてくれるのもうれしいところです。電源はUSB PD(15V・3A)を使用しており、USB Type-Cコネクタの45W ACアダプタが付属します。
本体のインタフェースは、USB Type-C(USB 3.1 Gen1、USB PD、映像出力)、USB 3.0 Type-Aが左右に1つずつ(計4ポート)、右側にセキュリティロック端子、左側にヘッドセットとmicroSDスロットがあります。キーボードのキーピッチは実測で18.25×18.5mmと、ほぼ標準的でした。タッチパッドは106×87mmと大型です。普段使い用としてバランスのよいスペックです。液晶がWXGA解像度なのは狭く感じることもあるので、画面解像度は検討ポイントの1つになるでしょう。
Chromebook 712
一方、Chromebook 712(以下、712)は、丈夫で長く使える12インチモデル。海外では文教向けとして提供しているモデルです。12インチのタッチ対応IPS液晶(1,366×912ドット)を採用し、子どもが多少乱暴に扱っても問題のない作りとなっています。具体的には、122cmの高さからの落下に耐えるという米軍調達規格「MIL-STD 810G」準拠のボディや、キーボードに水をこぼしても大丈夫なように排水機構があります。
今回チェックしたのは、712シリーズの「C871T-A38N」というモデル。CPUはIntel Core i3-10110U、メモリは8GB、ストレージは32GB eMMC、実勢価格は6万円前後となっています。
CPUが第10世代Intel Core i3-10110Uというのは、Chromebookとしてはハイスペックの部類。無線LANもWi-Fi 6(IEEE802.11ax)に対応しており、長く使えるスペックです。なお、712シリーズは全4モデル構成で、CPUがCore i3-10110UまたはCeleron 5205U、ストレージがeMMC 32GBまたは64GBという違いがあります。
キーボードのキーピッチは実測18.85×18.37mmと、12インチクラスのボディながらフルサイズ(19mm前後)を備えています。本体が小型なぶん、右側のキーが小さいのが少々気になりますが、おおむね良好なレイアウト。タッチパッドは106×87mmと比較的大型です。
カラーはシェールブラックで、言い方は悪いですが「プラスチック素材そのままの黒」という印象。とはいえ、ある程度ラフな使い方を想定したモデルでもあるので、「塗装がハゲてカッコ悪く」ならないというメリットもあります。
電源は上記の314と同じくUSB PD(15V・3A)で、USB Type-Cの45W ACアダプタが付属。本体のインタフェースは、左右にUSB Type-C(USB 3.1 Gen1、USB PD、映像出力)のほか、右にセキュリティロック端子、左にUSB 3.0 Type-A、ヘッドセット、microSDスロットです。314と比べてUSB Type-A端子が1つ少ないので、例えばワイヤレスマウスを使う場合、USBレシーバーを使うタイプではなく、Bluetoothマウスをおすすめします。
個人的には、314も712も、USB Type-Cが2ポートある点が気に入りました。一例として、USB Type-Cだけで映像入力と電源入力できるモバイル液晶ディスプレイが使えます。画面ミラーリング、拡張デスクトップとも可能でした。HDMI出力や有線LANを備える多機能なUSBハブ&ドックも便利でしょう。USBメモリも読み書きできます。なお、こうした周辺機器がすべてChromebookで使えるとは限らないので、対応状況を調べたうえで利用してください。
冒頭に書いた自動更新は、314が2026年6月、712が2028年6月になります。ハードウェア保証は1年ですが、物理的な故障さえなければ、かなり先まで安心して使えます(おそらくバッテリが劣化するでしょうけど……)。