どんなシーンでも飲める"万能さ"
――実際、お客さんからはどんな声が聞かれるんですか。
炭酸水って、「いつでも飲める、便利使いができる」という声がすごく多いんです。僕らの中でマルチユースと言ってるんですけど、朝に気合を入れたいとき、昼の気分転換に、脂ぎった食事をするときにレモンの炭酸水がちょうど良いから飲むとか、あとはお酒の割材だけじゃなくて、お酒の代わりにノンアルみたいなイメージで飲む方もいらっしゃいます。
――たしかに、お酒の代わりに飲むというのはよくわかります(笑)。
そうおっしゃる方は多いです(笑)。家に置いてあると、色んな場面につぶしが効くんですよね。お客さまの声を聞いて思ったのが、コロナ禍の巣ごもり需要で色んな商品を買い漁る人が多かったと思うんですけど、あのときに買っていたアイテムを聞いても、やっぱりあっても困らないものを買っているんです。例えば、ハムの3連パックとか、いつでも使えそうなものが結構売れたらしいんですよ。炭酸水も、「あれば何かに使える」というようなことも含めて伸びたんじゃないかと思います。
――ターゲットとしては、お酒を飲まれる世代の方が中心なのかなと思うのですが、若い世代への需要ってどうなんですか?
おっしゃる通り、メインボリュームとしてはやはり40代の方々を中心とした30代~50代の働いている方々というのが多いです。今までは炭酸水の入り口が、健康診断で「ちょっと太ったな」とか「不健康だな」と感じた方が、甘い飲み物を飲むのは止めておこうという理由で伸びた市場ではあるので、そこの年代の方がメインボリュームになっている事実はあるんです。ただ、このコロナ禍ということも含めて、働き方、生活様式が変化してきたのはどの世代も共通ですので、そういう意味では今後はメインボリュームの方々だけじゃなく、市場を最終的にもっと成熟させていくのに大事な、20代の方々にも目を向けていかなくてはいけないなとは思っています。
リフレッシュ欲から"強炭酸水"が人気に
――近年、「強炭酸水」が増えている気がします。それは何故なのでしょうか。
基本的に、炭酸水というカテゴリーにお客さまが求めることをひと言で言うと、「ヘルシーでリフレッシュできる」ということなんです。糖が入らずに、リフレッシュできるということで。例えばコーラ、サイダーのような有糖炭酸って、リフレッシュはできるけど糖が入っていて健康が気になる、水やお茶は糖は入っていないけどリフレッシュが足りないということがあります。そういうこともあって、「ヘルシーでリフレッシュ」を求めているというのが、炭酸水の一番のベースなんです。そのときに1つの価値になっているのが、炭酸のガス圧なんです。他社さんの商品を含めて強炭酸水の商品が増えてきたのは、ガスでのリフレッシュがマストな条件になっていることが感じられます。そういう意味では当社はもともと2013年に「サントリー南アルプスの天然水スパークリング」を販売していたのですが、水が売りという感じもあって、じつはガス圧としてはそこまで高くなかったんです。それを2018年に「サントリー南アルプス スパークリング」として刷新して、ガス圧をグッと上げるという工夫はさせていただいています。
――以前は「強炭酸」よりも「微炭酸」をよく目にした覚えがあるのですが、そのあたりは変化しているのですか。
ヨーロッパを見ていると、微炭酸から強炭酸まで色々な炭酸があるんですけど、割と日本のメーカーのものはじつは強炭酸のものが多いんですよ。
――もともと、ヨーロッパでは食事のときに炭酸水が飲まれていたわけですよね。日本ではどちらかというと長年、お酒の割材としての存在だったということでしょうか。
そうですね。バーとかで使われるソーダというところから始まっていて、なかなか直飲みの需要は伸びてきてなかったんですけど、健康意識の高まりもあって、徐々に伸びてるマーケットではあります。コロナ禍でも、外に出られないし運動もできないという状況の中で、市場以上に当社の商品がやや伸びていると思うのは、サントリー天然水が持つような自然の空気感のところに、実際出られない時期に、開放的な自然の空気も取り込めそうなイメージがするということなんです。他社さんにはないような、刺激やリフレッシュするだけじゃなくて、「自然に接してあの空気を吸っているような気がして気持ちが明るくなる」ということを実際に言っていらっしゃるお客さまもいたので。そのあたりは当社の天然水ブランドが持つ価値が1つ乗っかってるんじゃないかなと思います。
各社メーカーの炭酸水で味の違いは?
――他メーカーとの比較ということで言うと、本当に様々な炭酸水がコンビニ、スーパーに並んでいますけど、天然水ブランドが持つイメージだけじゃないサントリーさんの炭酸水の特徴ってどんなところにあるのでしょうか。
実際に飲んでいただくとわかると思います。「サントリー天然水スパークリングレモン」を他社さんのレモンを使った炭酸水と飲み比べてみてください。
――(実際に飲んで)他社さんの炭酸水と比べるとレモンの風味が全然違いますね。本物のレモンの味が感じられるというか。
ありがとうございます。じつは当社の商品は、レモン果汁を使っているんです。表示法上、「無果汁」と書かないといけないんですけど、裏を見てもらえば書いてあるんですが、実際は0.3%しっかり果汁を使っているというのが当社のこだわりの1つで、そこで他社さんとの味の差が出ていると思います。あとはレモンを感じるのは香りだと思うのですが、香りに関しては当社は徹底的に研究しています。当社の「C.C.レモン」は発売から20年以上経っているのですが、その頃からレモンの味づくりをめちゃくちゃこだわってやってるんです。ですので、お酒の方で言うと、「こだわり酒場のレモンサワー」とかにも当社のレモンへの考え方が感じられると思います。「-196℃ストロングゼロ」にしてもそうですし。果物の旨味をいかにして飲料で出すかというのは、すごく知見がありますね。「サントリー天然水スパークリングレモン」に関しては、絞ったときのレモンから出るような香りを、レモン果汁や天然香料を使いながら、工場で作り上げているというのがこだわりです。ラベルに「搾りたてレモンのようなおいしさ!」って書いてあるんですけど、それぐらいのレモン感を目指して作っています。うちの炭酸水の価値をひと言で言うと、僕は「フレッシュなおいしさ」だと思ってまして、そこに自信を持って作っています。
――レモンの味もそうなんですけど、炭酸もナチュラルな感じがしますね。
ありがとうございます。水はミネラルウォーターブランドとしても販売されている「サントリー天然水」を使っているので、そこのナチュラルな味わいが出ているのかなと思います。
――ちなみに、「サントリー天然水スパークリングレモン」のボトルって独特な形状をしていますよね。これはどんな意図で設計されているのでしょうか。
直飲みのことを想定した容器の設計をしています。先を細くすることによって、飲んだときに角度によって流量が増えるんです。そうすることで喉にダイレクトに入ってくる炭酸水の量が増えるので、より刺激を感じやすくなるんです。
炭酸水は脳を活性化させる?
――ちょっと個人的に前から思っていたんですけど、炭酸水を飲むとシャキッと脳が活性化されるような気がするんですけど、炭酸水を飲むことで体にそういう作用もあるんですかね?
サイエンスの部分までは正直お伝え出来ないですけど(笑)、少なくとも確実にCO2が入っているので、喉に水を流し込むのと炭酸水を流し込むのとでは感覚が全然違いますよね。。ガスが何かしら作用しているというのはあると思います。
――それに加えて、銭湯に行くと炭酸風呂ってあるじゃないですか?それを考えると炭酸ってやっぱり身体に良いのかなというイメージがあります。
ははははは(笑)。それは、お客さまからの声にも出ていて、例えば美容を気にされている女性の方も、炭酸で顔を洗うという話もありますし、それはたぶん各々別の会社さんが何かしらのファクトで言ってるとは思いますが(笑)、そういう声はよく聞きますね。糖が入っていないことに対してのヘルシーなイメージや、ガスを水に溶かしたもので流し込むので、腹持ちが良くてダイエット効果もあると言ってる方もいますし、炭酸水自体に色んな切り口で漠然としたポジティブな健康イメージがあるのが事実なのかなと思います。