大河ドラマは史実を大切にしているが、今の時代や脚本家の思いも反映されるもの。一色氏は「大河ドラマはよく『現代の合わせ鏡』と言われますが、現代を映し出す合わせ鏡的な立ち位置で作られていることが多く、池端さんが書くものは今の時代が反映され、自分の思いも投影される」と語る。
そこを表現するにはオリジナルキャラクターが効果的だという。「史実上にいたキャラクターたちを今までのイメージを無視して書くのではなく、オリジナルキャラクターを配置することで伝えやすくする効果が圧倒的にある。作り手が視聴者に伝えたいことをどう伝えるかという意味合いでいうと、オリジナルキャラクターの役割が大きい」
第33回に関しては、「比叡山の焼き討ちは世の中の人にどういう風に見えたのかを入れることによって、現代の我々…日本ではないですが世界では戦争がまだある。それを見ている視点と重なる瞬間が僕にはあり、そういったところがものすごく深く刺さってくる」と解説。
「今回のことは政治的に話しても複雑でわからないと思う。それが、『妹があの山で売られた』『寺なのに』といった一般市民の視点を置くことによって、見え方がガラリと変わる。伝えられるものが一瞬にして変わってくるし、光秀が叡山を攻めるというところも見えやすくなる。感情移入しやすくなるというところもあると思う」とその効果を述べる。
そして、「歴史エンターテインメントを見ているという側面がある一方で、現代の人たちに対して、人ってこういうことなんじゃないですかという池端先生のメッセージがオリジナルキャラクターに込められていると推察して作っています」と語った。
第33回では、東庵と帝・正親町天皇(坂東玉三郎)のやりとりが再び登場。帝は、信長(染谷将太)が比叡山延暦寺の覚恕(春風亭小朝)と和睦したいと申し出てきたことを東庵に明かし、「信長を助けてやろうぞ」と決意するという大事なシーンに。また、ナインティナイン・岡村隆史が演じる菊丸が、6月7日放送の第21回以来、約5カ月ぶりに登場した。信長と光秀が比叡山延暦寺にどう立ち向かっていくか描く中で、駒、東庵、菊丸というオリジナルキャラクターも存在感を放った第33回。今後も、物語に深みを与える庶民の目線や、オリジナルキャラクターの描かれ方にも注目したい。
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