文章のスタイルは、『マンスリーよしもと』での連載時に見出していった。福徳の連載は、いまや芥川賞作家として注目されるピース・又吉直樹の連載の対向ページに掲載されることが多く、当時から又吉の才能をひしひしと感じたという。

「圧倒的な才能を見せられ、これは『マンスリーよしもと』のレベルじゃないやろって。見開きで僕が左で、右が又吉さん。それが嫌で嫌で。僕が1ページで、又吉さんが1ページの半分のときもあって、又吉さんは短い文章なのに美しく、僕は1ページとっているのに、のっぺらぼうみたいな文章で、どうにかしないといけないなと。比べるものになったらあかん。全然違うものにせなあかんという気持ちがメラメラ湧きました」

そして、又吉とは違った文章を目指すことに。「又吉さんの文章はあまりにも美しいので、僕は文章で人を惹きつけようなんて思わんとこうと。単純なまっすぐな言葉で伝えていきたいなと。表現としては間違っているかもしれせんが、ウルフルズさんみたいにいこうと思ったんです。『ガッツだぜ パワフル魂……』。直球的ですが、『パワフル魂』という言葉はないですし、『バカサバイバー』という言葉もない。単純だけど見たことない言葉を使われている。僕もストレートに。ウルフルズさんでいこう! と思いました」

本作に書かれている言葉で、自身がウルフルズ流だと感じているものは、タイトルにも用いられている「今日の空が一番好き」。「『今日の空が一番好き』ってあまりにも単純で、小学1年生でもわかる言葉。思いついたときに、これはさすがにいろんな人が言ってそうだなと思ってネットで検索したら誰も言っていなくて、こんな単純な言葉の組み合わせなのに誰も言ってないんだと思って、これええわ! と。ちょっとウルフルズさんに近づけたかもって思いました」とうれしそうに話す。

さらに、「今日の空が一番好き」という言葉がどう生まれたのか聞くと、「単純に、主人公が幼少期に感銘を受ける言葉ってなんやろうと考えたときに思い浮かびました。子供なので天気にまつわることやろうし、単純な言葉やろうし」と明かした。

執筆にはスマートフォンとタブレットを使用。「電車の中とかはスマホで、喫茶店で書くときはタブレットで。好きな子にメールしてご飯を誘うくらいの感覚。メール感覚で書きました」

話すよりも書くほうが自分自身をさらけ出せるという。「僕はエピソードトークをするのが苦手で、芸人がたくさんいる状況で、これ言ったほうがいいとか、これ言ったらあかんとか、そういう空気を読む力がなく、書くほうが1人の世界で自由に書けるので楽しいなと感じますし、書いているときは自分をさらけ出すことができます」

書くほうが得意というのは昔から。「作文や、中学のときにあった、その日のことを書く生活帳などは、ふざけられたんです。しゃべるときはつっかえたりするけど、文字にするとどんどん書くことができて、さらけ出せるなという気持ちがありました」と明かす。