この『どっちの料理ショー』が持つ“おいしそうに撮る”映像制作の秘けつを聞いてみると、中村氏は「完成品のおいしそうなシズル感を存分に出すため、とにかく時間をかけて撮るんです。湯気が収まってしまったら、変に油をかけたり、電子レンジに頼ったりして加工することなく、また料理を作ってもらう。そのままのリアルでいかにうまそうに撮るか。そのために時間は惜しみなく使うというところがあります」と回答。
さらに、「制作会社のハウフルスさんは、『チューボーですよ!』など元々料理系にも強い会社なんですけど、どういう角度で撮ってどこに明かりを当てればおいしそうに見えるのかというカメラマンさんや照明さんのノウハウが、9年半の間にどんどん進化していったんです」とも明かした。
『どっちの料理ショー』は、レギュラー放送が終了して14年が経過したが、「当時のスタッフは、それからも料理番組などをやっているので、ブランクはないです」(中村氏)と自信。このノウハウが様々な番組に継承されたことは、日本のテレビ番組における料理撮影技術の向上につながっているとも言え、中村氏は「そのように自負しております(笑)」と胸を張る。
テレビ局がウェブの映像コンテンツを制作する強みは、まさにここにある。
佐藤氏は「YouTubeも含めて、ウェブ上のコンテンツの中には、1人で切り盛りして低予算だけどすごく跳ねている動画もありますよね。それに対して今回は、技術を磨いてきたそれぞれのプロたちが再集結して、自分たちの領域を背負って一緒に作り上げていくというテレビならではの作り方が、料理の画に凝縮されているので、そこをぜひ五感で楽しんでほしいなと思います」と力を込めた。
■名物番組復活で社員一丸に
テレビ各局では、従来の地上波広告に加え、ウェブ動画を活用した広告展開に積極的に進出している。最近ではテレビ朝日で『アメトーーク!』『激レアさんを連れてきた。』といった現在放送中の番組と企業がコラボ展開する事例があるものの、かつての人気番組を復刻して新たに制作するというのは、おそらく初めての試みだ。
中村氏は「タレントさんを使わずに企画をシフトしつつも、ウェブだからこそ『どっちの料理ショー』らしさを残した、新しい番組になったと思います。当時見ていた人だけじゃなくて、20~30代の若い人たちにどうやって見られるのかと、ドキドキしている部分もあります」と、手応えと本音を吐露。
佐藤氏は「『どっちの料理ショー』という弊社の歴史が絡んでいる番組を復活させるからには、後悔を残して終わることはできません。だから、社内でも“あの『どっちの料理ショー』をやるんだね”と、特にベテランの社員が理解を示してくれて、告知面でもいろいろ協力頂き一丸となって取り組んでくれているのを感じています」と、復刻コンテンツだからこその強みが表れている。