女優の吉田羊が、フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)のナレーション収録に臨んだ。担当したのは、15日・22日に2週連続で放送される『私、生きてもいいですか ~心臓移植を待つ夫婦の1000日~』。心臓が肥大し、血液を送り出す心臓のポンプ機能が低下してしまう原因不明の難病「拡張型心筋症」と闘う人たちを追った作品だ。
悪化すれば心臓移植しか助かる道はなく、今回密着した容子さんとクマさんは、体に補助人工心臓(VAD)を埋め込み、いつ来るかわからない移植を何年も待ち続けている。そんな彼らから、吉田は絶望を感じることがなく、むしろ“勇気”をもらったという――。
■疾患なく生きられていることに「深く深く感謝」
今回のオファーに、「心臓移植について、ドナー登録や臓器提供の数を増やすというところも含めて問題提起する作りになるだろうと思って、ナレーションという形で関わらせていただくことで私もお手伝いができればという気持ちでお引き受けしました」という吉田。実際に映像を見ると、「私が想像しているものとは全然違っていて、驚いたというのが正直なところです」と打ち明ける。
「心臓移植を待つ2つのご家族の闘いには、当然苦しみも失望もあったと思うんですけど、絶望はなかったんです。想像していた患者さんの姿とは全然違って、明るく前向きで、難病を抱えている方にはとても見えませんでした。もちろん、死がすぐそこにある恐怖ですとか、(臓器提供してくれる側の)終わりゆく命の知らせを待つという苦しさですとか、そういうものは私たちには計り知れないですけれど、お2人は決して絶望していない。『いつか自分に順番が回ってくる』『いつか自分の足で何不自由ない暮らしができる』と強く信じている姿に、むしろこちらが励まされて生きる勇気をもらい、自分が疾患なく生きさせていただいていることに、深く深く感謝すべきことだなと思わされました」
特に印象に残っているのが、大学生と高校生の子供を持つ容子さんが口にした「死ななくていいんだ」という言葉だ。番組タイトルになっている“私、生きてもいいですか”という心境から、容子さんの気持ちが大きく前進しているのを象徴している。
「もちろん、死んでいい人間なんて1人もいないし、誰かの命を受け継いでその人の命と一緒に生きていくことが彼らの生きる意味なんだと知りました。『自分が生きている意味が欲しい』というのは、きっと多くの方が思ってらっしゃる感覚だと思うんです。くしくも今年はコロナ禍で多くの方が生きづらさや不安や絶望を感じられた年になりましたけれど、容子さんたちの“生”に前向きな姿勢から、私たちに『絶望するな、生きろ!』って背中を叩いてくれるような、そんなメッセージを受け取りました」
■母の経験からも感じた経済的支援の必要性
番組では、支える家族の姿も追っているが、「やっぱり1人では闘えないですよね。家族のサポートっていうのは、絶対に必要だと思いました」と痛感。関連して、経済的な支援の必要性も力説するが、それは、吉田自身の経験からも感じたことだという。
「実は、私の母も亡くなる寸前に難病という診断を受け、医療費免除かもという話になったのです。結局認定されずでしたが、お金の心配がないと思った安ど感は今でも覚えています。現実的なお金の問題は、国をあげての医療費助成が引き続き必要ですよね。現在厚労省が提供している助成制度を強化して、長期化する闘病生活に耐えうる経済力を保証することが、当事者の皆さまにとっては大前提だと思いました」
一方で、制度が整備されても、その情報が当事者に届かないというケースがある。
「必要な制度が、自分で調べてその情報を取りに行くしかないということも、多くの人に知っていただきたいことだと思いました。こういった病気の事例に限らず、自分の住んでいる地域に生活保護などの制度があることを知らずに貧困の中にある方もたくさんいらっしゃると思うので、そうしたことも含めて広がっていくきっかけになったらいいなと思います」と願った。