『グッド・ドクター』のメインテーマや、『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』での印象的な楽曲など、得田氏の作品はバイオリンの名曲が多いため、自身がバイオリンの名手なのか思いきや……「実は1ミリも弾けないんですよ(笑)。バイオリンはやっぱり表情が豊かなので、自分の表現したい感情とかを持って行きやすいんですよね」と、意外な回答が返ってきた。
また、ボーカルの入った楽曲も多く、『アンナチュラル』や『MIU404』では呪文のようなコーラスが入る怪しげな曲調が印象的だったが、「基本的に作詞はしてないんです。メロディーに合う発音で歌ってくださいってお願いしていて、『MIU404』も民族音楽っぽく聴こえるようにってお願いして作りました。造語といいますか、全部アドリブなんです」。
様々な得田氏のサウンドトラックの中で最も印象的だったのが、小野ゆり子主演『天誅~闇の仕置人~』(14年、フジ)だ。戦国時代からタイムスリップしてきた女忍者が主人公の物語で、中でも悪者を“仕置き”する際に流れる「HEY!HEY!」という楽曲が耳に残っている。時代劇テイストの作風とは真逆の「ヘイヘーイ」というボーカルが入る意外性がドラマを大きく盛り上げていた。
その制作秘話を聞くと、「ウエスタンみたいなのが頭に浮かんで、それで(エンリオ・)モリコーネとか聴いたりして、それが『天誅』に合うんじゃないかと思って作りました。毎回印象的なシーンで使われることになって、自分もそこまでは想定しなかったんですけど面白かったですね」と振り返った。
■情報収集の方法は…
常に新しい楽曲や耳に残るサウンドを作り続ける作曲家の“インプット”は「やっぱりいろんな映画とか作品を見たり、サントラを聴いて勉強したり…と、それがいつのまにか糧になって、出て行く感じなんだと思います」。
世界にあまたある楽器や民族音楽など、音楽関連の情報はどのように得ているのかを尋ねると、「珍しい楽器の音色とか、これいいなっていう音があったら自分の頭の中にアイデアとして取っておくんですね。それがふとした時に『あの時のあの民族楽器が使えそうだな』って出てくる感じです。サントラとか買うとクレジットで演奏した人の名前とか楽器とかがたまに書いてあるので、それを見て知ったり、今は古今東西、自分の知らない色んな音源が入っている音楽ソフトもあるので、そこから似たような音を探して、『これ、あの時のあれじゃん』みたいな。そういう覚えておいたものを使うという感じです。いろんなサイトから音源を探したりもするんですよ」と明かしてくれた。
●得田真裕
1984年生まれ、鹿児島県出身。長崎大学教育学部芸術文化コースで3年時より作曲を専攻し、在学中からCM音楽の作曲やバンド活動を精力的に行う。卒業後、ゲーム会社を経て上京。『MIU404』『俺の話は長い』『インハンド』『グッド・ドクター』『アンナチュラル』『家売るオンナ』『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』『THE LAST COP/ラストコップ』『ようこそ、わが家へ』などのドラマのほか、『NHKスペシャル』『きょうの健康』といった番組の音楽も手がける。今期のドラマは『監察医 朝顔』のほか『#リモラブ ~普通の恋は邪道~』も担当。