マーケティングは企業の成長に欠かせない、「ものやサービスを売る仕組み」。このマーケティングの概念を体系化したのが、フィリップ・コトラーです。この記事ではコトラーのマーケティング理論と変遷、成功事例などをくわしく紹介していきます。

  • フィリップ・コトラーとは?

    コトラーが提唱するマーケティング4.0をわかりやすく解説します

フィリップ・コトラーとは

「マーケティングの父」と呼ばれているフィリップ・コトラー。コトラーの最新マーケティング理論を学ぶ前に押さえておきたい、コトラーのマーケティングの基本についてみていきましょう。

■マーケティングの発案者

アメリカの経営学者フィリップ・コトラー(Philip Kotler)はピーター・ドラッカーやマイケル・ポーターなどと並ぶ著名な経営学者で、マーケティングを体系化した現代マーケティングの第一人者です。

コトラーは世界的企業であるIBMやGE、ミシュランなどのコンサルティングにも従事しながらマーケティングの第一人者として走り続け、時代の流れとともに激しく変化するマーケティング理論を時代に合わせてアップデートしてきました。

マーケティング概念をわかりやすく具体的にしていることから「近代マーケティングの父」とも呼ばれており、『コトラーのマーケティング・マネジメント』『マーケティング10の大罪』『市場戦略論』など多数の著書があります。

■コトラーのマーケティング理論

コトラーのマーケティング理論では、「商品やサービスで利益を上げるためには顧客(ターゲット)をしぼり、その顧客が求めている価値を提供すること」を基本としています。

コトラーはまずマーケティングを「ニーズに応えて利益を上げること」と定義し、そのうえで「利益を上げるためには顧客が何を求めているか」(ニーズ)をつかみ、商品企画にさかのぼって戦略を立てることが重要、つまり「利益を上げるためのポイントは、顧客視点に立つこと」であるとしています。

コトラーの推奨するマーケティングプロセスにおいて、有名なフレームワークが「R-STP-MM-I-C」と呼ばれるものです。

コトラーのR-STP-MM-I-C プロセス

戦略立案プロセス R Research(リサーチ) マクロ環境分析・ミクロ環境分析
STP戦略 Segmentation (セグメント) 市場を年齢や性別、職業などで細分化
Targeting(ターゲティング) ターゲットとなる層を定める
Positioning(ポジショニング) 競合比較した場合の市場における自社商品やサービスの強み
戦術実戦プロセス MM(4P分析) Marketing‐Mix(マーケティング・ミックス) Product(製品)
Price(価格)
Promotion(プロモーション)
Place(流通)
I Implementation(インプリメンテーション) 実装する
C Control(コントロール) 管理する

このR-STP-MM-I-C は、「戦略立案」「戦術実践」の2ステップで構成されています。

戦略立案のプロセスでは市場・競合などマクロ環境分析やミクロ環境分析をし、分析結果に基づいて市場の選択や分類(セグメンテーション)、自社商品・サービスを投入するセグメント選定(ターゲティング)を行い、他社との比較優位性(ポジショニング)を明確にしていきます。マーケティングにおける戦略立案プロセスでは、攻めるべき市場を設定するためのセグメンテーションが特に重要です。

戦略実践のプロセスでは、戦略立案プロセスで明確にした情報をフレームワークなどによって整理していきます。

最も有名なフレームワークは、商品やブランドに対する感情移入や購買行動を起こしてもらうためのマーケティングツールを組み合わせたマーケティングミックスの「4P分析」です。そのほか買い手視点の「4C分析」などがあります。

4P分析と4C分析

売り手の視点 買い手の視点
4P分析 4C分析
Product(製品) Customer solution(顧客ソリューション)
Price(価格) Cost(価格)
Promotion(プロモーション) Communication(コミュニケーション)
Place(流通) Convenience(利便性)

■コトラーの7Pとは

コトラーのマーケティング理論には「買い手視点の4P」「売り手視点の4C」に加え、サービス業を対象としたマーケティング「7P」のフレームワークがあります。この7Pは、4PのProduct(製品)・Price(価格)・Place(流通)・Promotion(プロモーション)に加え、「Personnel(従業員やビジネスパートナーなど)」「Process(手順)」「Physical Evidence(物的証拠や環境)」の3つのPを加えたものです。

もともと4Pはコトラーではなく、エドモンド・ジェローム・マッカーシーが提唱したものです。コトラーは無形の価値を提供するサービス業のマーケティングにおいては「人的サービスの質」「サービス提供のプロセス」「物的証拠」も考えるべきだとして、もともと存在していた4Pに3Pを加え、「7P」を提唱しました。

例えばPrice(価格)の値上げを検討する場合、価格のみを見直すのではなく、同時にサービスの質を上げたり意匠をグレードアップしたりすることを検討します。顧客にとってより心地よいものを提供することで、顧客は値上げにもポジディブな印象を持って引き続き購入するなど、7Pを考えることで収益アップのために見直すべき点や、差別化を図るための強化ポイントが見えやすくなります。