年収800万円に達したら節税対策を意識しよう
2018年の税制改正により、2020年4月以降は、年収850万円以上の人の所得税が増税されました。そのため、年収800万円を超えたら、節税対策を意識して備えておくことをおすすめします。
控除の申請や非課税の制度を賢く活用すれば、手取り額を増やすことが可能です。
知っておくべき節税対策の方法
会社員の場合は、給料から税金と社会保険料が控除されて、会社から市区町村や年金事務所に納められています。そのため、自分で納税している意識が希薄となり、節税対策と聞いてもピンとこないかもしれませんが、会社員でもできる節税対策はいろいろあります。
確定申告や書類の作成が必要になるなど手間がかかりますが、申告しなければ減税されませんから、各種控除の手続きをチェックして、上手に活用しましょう。
・ふるさと納税(寄付金控除)
ふるさと納税は、全国各地の自治体から寄付先を選んで寄付した後、確定申告またはワンストップ特例制度の手続きを行うことで、寄付金控除が受けられる制度です。控除上限額内の2,000円を超える分は、所得税と住民税の控除が受けられます。
・生命保険控除、地震保険控除
生命保険料や地震保険料を支払っている場合は、所得から一定額の控除が受けられます。会社員であれば、どちらも年末調整時に保険会社から送られてくる証明書と「給与所得者の保険料控除申告書」に必要事項を記載し、会社に提出することで手続きが行えます。個人事業主や自営業、年金生活者の人は各自で確定申告が必要です。
・住宅ローン減税制度
住宅ローン減税制度は、住宅ローンを組んで自宅を新築および購入した人が、10年間(2019年10月~2020年12月に購入した方は13年間)受けられる減税措置です。会社員の場合は、購入した最初の年に確定申告を行い、翌年以降は会社に必要書類を提出すれば年末調整で手続きができます。
・医療費控除
医療費控除は、1月1日から12月31日までの年間で支払った医療費が、一定額を超えた場合に手続きすると控除が受けられる制度です。医療費控除の限度額は200万円までで、「1年間に支払った医療費-保険などの各種補填金-10万円」分の額が所得控除されます。医療費控除は会社の年末調整では行われないので、各自で確定申告をする必要があります。
・雑損控除
雑損控除は、自然災害や盗難の被害に遭ったとき、所定の金額を所得控除できる制度です。各自で確定申告が必要となります。災害関連での支出の場合は、申告書に支出金額を証明する書類や領収書、給料所得がある場合は給料所得の源泉徴収票の原本も必要ですので用意しておきましょう。
・災害減免法による所得税の軽減免除
災害減免額は、災害で住宅や家財の時価2分の1以上の損失があり、災害に遭った年の所得金額の合計が1,000万円以下の場合、その年の所得税が軽減、または免除されるというものです。確定申告時に損失額の明細書を作成して提出します。
・扶養控除
扶養控除は、配偶者や子供や両親を扶養している場合、所得税と住民税を軽減できる制度です。控除額は38万~63万円の幅があり、扶養者の年齢や収入状況などによって控除額が異なります。例えば、夫婦共働きの子供の場合、15歳以下の子供には控除がないためどちらの扶養でも構いませんが、16歳以上の場合は収入が高いほうの扶養に入れるといいでしょう。
・iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoは、自分で行う、自分のための年金の積立制度です。掛け金、運用益、給付の受取時に所得控除があり、税金が安くなります。運用益に税金がかからないこともメリットです。
・つみたてNISA
つみたてNISAは、長期の積立・分散投資を支援するための非課税制度です。毎年40万円まで投資が可能で、最長20年、投資から得た利益に税金がかかりません。証券会社では100円以上、銀行では1,000円以上からという設定が多く、少額から毎月投資が可能です。
・財形貯蓄
財形貯蓄とは、給料天引きでお金を積み立てる制度です。ただし、勤め先の会社が財形貯蓄制度を導入していない場合は利用できません。財形貯蓄制度には、お金の使用目的が異なる「一般財形貯蓄」「財形年金貯蓄」「財形住宅貯蓄」の3種類があります。財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄を合わせて、元金550万円までの利子にかかる税金が非課税になります。
財形年金貯蓄は、年金の支払い終了まで非課税措置が継続されますので、老後が安定するでしょう。
年収800万円を超えたら国の制度を活用して節税
年収800万円は、毎月安定した貯蓄を行うことができ、豊かな生活を送れますが、税負担は大きくなります。 国の制度をうまく活用することで、所得税や住民税の控除や還付を受けられるため、節税対策を行うことが大切です。手取り額を増やすためにも、年収800万円を超えたら、早めに節税対策を意識しましょう。
■参照
(※1)国税庁「民間給与実態統計調査(平成30年分)」
(※2)国税庁「給与所得者と税」
(※3)金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯調査)(2019年)」
(※4) e-Stat「1世帯当たり1カ月間の収入と支出」