ナノイーと他製品との違いは「水」
ここまでの説明は、ほぼOHラジカルについてでした。実際のところ、ナノイー以外にも「OHラジカル」をうた製品はたくさんあります。ナノイーがほかの製品と違うのは、OHラジカルを水で包んでいることです。
ナノイーとは、水に電荷を集中させ、次々と分裂させることで超微小化したもの。簡単にいえば「ミストをさらに小さくした水」です。この微小具合は半端ではありません。ナノイー粒子の大きさは5~20nm。水蒸気の「約1,200分の1」というサイズで、インフルエンザウイルスやコロナウイルスよりも小さいのです。この超微細粒子の水には、ナノイーなら4,800億個/秒、ナノイーXなら48,000億個/秒、高濃度ナノイーXなら96,000億個/秒のOHラジカルが詰まっています。
OHラジカルを水で包む最大のメリットは、なんといってもOHラジカルの寿命が延びること。OHラジカルは非常に不安定な物質ということは前述しましたが、空気中ではすぐに消えてしまいます。一般的な空気イオンの寿命は、だいたい数十秒~100秒とされています。これでは部屋の中に菌やニオイのもとがあっても、原因にたどり着くまでにOHラジカルがなくなってしまうわけです。
一方、ナノイーは水に包まれており、菌やニオイのもとに付着してからOHラジカルを放出します。ナノイーが空気中で浮遊している間は、OHラジカルが減りにくいのが特徴です。一般的なイオンの約6倍(10分程度)は、空気中で漂うことができるといわれています。
ナノイーが水粒子であることのもう1つのメリットは、美肌・美髪効果です。ナノイーは肌や髪に優しい弱酸性の水なので、肌や髪に当ててうるおいを届けられるんだとか。
パナソニックの美容家電では、ナノイー搭載ドライヤー「ナノケア」シリーズが人気ですが、最新モデルのEH-NA0Eは高浸透ナノイーによって髪の乾燥を抑制し、髪に艶やまとまりを与えます。「最新モデルなのにナノイーXじゃないの?」と思うかもしれませんが、除菌などを目的にしていないので、OHラジカル量よりナノイー全体量のほうが重要なのです。
進化を続けるナノイー
「ナノイーは水を分裂させることで作り出される」と聞いて、そもそも水はどこから供給するんだろう? と疑問を持った人もいるのではないでしょうか。筆者もそう思いました。
2003年、最初に発売されたナノイーデバイスは、水を自分で補給するタイプだったそうです。本体もかなり大きいのがわかります。
2005年からのナノイーデバイスには冷却フィンがつき、水タンクがなくなりました。実はこれ、ペルチェ素子を搭載したため。ペルチェ素子とは、電流を流すと片側からもう片側へと熱が移動する半導体で、コンパクトな冷蔵庫などにも利用されています。ナノイーデバイスは、ペルチェ素子で空気中の水分を冷却して結露を作り、この結露水を利用して水を分解するのです(ペルチェ素子の片側が冷えるとそこに結露が発生)。
水を使うもう1つのメリットとして、ナノイーは「水に高電圧をかける」ことが挙げられます。金属針に直接電荷をかけるデバイスと違って針が劣化しないため、デバイスが摩耗しにくく、エアコンや空気清浄機など長く使う家電でもユニットの交換が必要ないのです。
2005年のペルチェ式から第2世代、第3世代と、ナノイーデバイスはどんどん小型化し、2016年にはOHラジカル量が10倍になったナノイーXが登場。2019年には、さらにOHラジカル量が倍になった高濃度ナノイーXへ至ります。初号機と比較すると、この17年でナノイーデバイスは機能も使い勝手もアップし、驚くほどの小型化に成功。今後もどのように進化するのか、家電ライターとしても楽しみです。