米HP Inc.が開催した「HP INNOVATION SUMMIT 2020」にて、同社CEOのエンリケ・ロレス氏は「コロナ禍は生活やビジネスをプラスに変える機会」と述べました。日本の企業人が参加した3Dプリンタと製造業のパネルディスカッションと合わせてレポートします。

「変化を恐れず前向きに取り組むスキル」を従業員に求めたい

米HP Inc.が開催した3部構成の「HP INNOVATION SUMMIT 2020」から、CEOインタビューとアジア版パネルディスカッションをレポートします。ドラッカースクール(Drucker School of Management)シニアフェロー兼取締役のライアン・パテル氏(Ryan Patel)が司会となり、第1部で「Acceleration of Change」と題して、HP Inc.の社長兼CEOであるエンリケ・ロレス(Enrique Lores)にインタビューしました。

  • HP Inc. President & CEOのEnrique Lores氏(左)。CNN Contributor and Senior Fellow and Board Director at the Drucker School of ManagementのRyan Patel氏(右)が司会とインタビュー

インタビューの冒頭、HPのロレス氏は「コロナのパンデミックは変革の加速。新しい時代の到来とも言える」と様々な分野で多くの変化が劇的に起きたとしました。コロナ禍を引き金に、テクノロジーを使った働き方に移行することで仕事や協働の方法が劇的に変わっており、地政学的観点で見ても製造の世界が打撃を受けたといいます。

このためサプライチェーンの堅牢性を高める必要があり、デジタル技術とデータを活用して、個人のために設計して最終消費者に近いところで製造する潜在性があると指摘。その際に、3Dプリンタによる製造、特にパーソナライズによって付加価値が加わるメリットがあると述べました。

ロレス氏は「新型コロナウイルス感染症のパンデミックは大きく、かつ何年も続く」と発言し、その影響で働き方が大きく変わるとも。現在、1年前には無理と思われていた「95%の従業員が自宅で仕事を行う働き方」が実現しました。いずれは恒久的に自宅で仕事をするという柔軟性が生まれ、人材の採用も変わったと、インパクトを説明します。オフィスという場所は、単に従業員が来て仕事をする場からコラボレーションの場に変わり、「未来のための会話をする場所になった」といいます。

パンデミックを前向きに捉える一面もありました。ロレス氏は「コロナは生活やビジネスに世界的な影響を及ぼしているが、ビジネスを変える機会をくれた」と、多くの社員が在宅で仕事をすることによって、家で家族と過ごす時間が多くなったことを強調します。コロナ禍で多くの人が「一人1台のPCが必要」ということを認識し、HPにとっては製品と体験を提供するチャンスになっているとしました。

また、在宅勤務の流れからセキュリティリスクが高まっています。そこでHPは、PCとプリンタに関して「地球上で最もセキュアな製品」を提供することによって、「HPは信頼できる会社である」というユーザーとの関係を構築したいと語りました。

ロレス氏は30年間HPに勤務してCEOとなった叩き上げ。「会社に入ったときと同じ情熱を未来にも持っていることが重要。入社したときからHPの人材がすばらしいことを知っており、最高のビジネスリーダー、テクノロジー、マーケッターが集まっている。企業として、毎日ポジティブなインパクトを世界に与えたい。多様性や環境のインパクトの灯台でありたい」と自社の将来を語ります。

HPの従業員には「変化を受け入れられるスキルを求めたい。変化を怖がるのではなく、前向きに捉えられることを。マーケットの要求を受け入れ、テクノロジーの可能性を極限まで広げるスキルが必要」とメッセージを送りました。