今までの中でいちばん緊張した舞台は?
今回参加したクリエイターから塙氏への質問でもっとも多かったのが「今までの中でいちばん緊張した舞台は?」というもの。塙氏はそれに対して「初めて決勝進出した2008年のM-1グランプリ」と即答。開催前から優勝候補に挙げられていたプレッシャーもあり、「間違えてはいけない」という意識が強くなってしまったのだそうだ。
そのため準決勝でウケたネタをブラッシュアップしようとして技術が追いつかなくなったり、練習のしすぎで気持ちの余裕がなくなったりして、楽しく漫才することができなかったという。
塙氏は当時を思い返しながら「はじめの1分くらいは記憶がないくらい緊張していた。練習していたから言葉は出てくるが、頭の中が真っ白な状態でしゃべっていた」と苦笑い。それに対して、参加クリエイターも「楽しくしなきゃと思ってプレッシャーを感じて作品制作の手が止まることがよくある」と共感を寄せていた。
では、そういった大舞台ではどのような心構えでステージに上がればいいのだろうか。
相手を楽しませること、自分も楽しむことが大事
塙氏は「20年やっていても正解はわからないが」と前置きしながらも「お客さんを楽しませようと思うことが大切」と語り、「それには自分たちが楽しんでやることも必要ではないか」とコメント。
その理由として「過去の経験から、自分たちが漫才をやりながら笑っちゃっているようなときが、お客さんもいちばん楽しそうにしている」ことを挙げた。つまり、自分自身楽しみながらお客さんを楽しませるような気持ちで全力投球することが大切というわけだ。
もっとも、いくら自分が楽しんでできるネタでも、お客さんにウケずにスベってしまうことはある。塙氏もある企業から依頼を受けた際に、若い女性社員がほとんどであるにもかかわらず巨人ネタを披露して盛大にスベったことがあるという。
そんなときは自分が否定されていると意気消沈しがちだが、塙氏は「受けなかったのはネタがミスマッチだったからであって、決して自分が否定されているわけではない。次はちゃんと観客に受けるネタを考えればいいこと」と、失敗の原因を正しく見定めて気持ちを切り替えることの大切さを説いた。
青山氏もその塙氏の言葉を聞きながら、「絵を描いてSNSなどにアップすると、さまざまな人から評価を受ける。なかには心ないコメントが書き込まれることもあるが、それは作品がその人に合わなかっただけで、クリエイター本人が否定されているわけではない」と頷いていた。
大舞台でいつも以上に実力を発揮する方法
塙氏が大規模なショーレースで初めて「ウケた」と感じたのは、2011年の「THE MANZAI 2011」で準優勝したときのことだという。そういった大舞台でいつも以上に実力を発揮する方法はあるのだろうか。
その問い対し、塙氏は「ドラゴンクエスト」を例えに持ち出し「ドラクエのようなRPGの場合、キャラクターの強さはレベルで表されるが、それを上げるには経験値を積むしかない。僕らの場合もM-1グランプリに3回出て、THE MANZAIにも出て、ほかにもさまざまな番組に出て経験値を積んでいるから、今は全然緊張しない」と、経験の大切さを強調。
そして、「小さな舞台でもいいから、とにかく経験を積んでいくこと。SNSで作品を投稿するような小さな積み重ねでもいい。ただやっぱり大きい舞台はそれだけ経験値も上がるので、できるだけ挑戦したほうがいい。もっとも何の備えもなく立ち向かっても勝算は少ないので、武器を見つけるなり、作るなりすることが重要。ドラクエも強い武器があれば敵を倒せる」とアドバイスした。
ちなみに今回の参加クリエイターは、前述の通りトーナメント方式のクリエイティブコンペティション「エレコムカップ」への参加が予定されている。同コンペは、観客が見守るなか20分という制限時間内にひとつのイラスト作品を完成させてその評価を競い合う「リミッツ」形式で行われる。塙氏は「20分で描くイラストのなかで、『これだけはほかの人に負けない』というものがひとつかふたつあれば戦い抜けるはず。ぜひ頑張って!」とエールを送っていた。