「IP68の期待値」を超えるか? 旅先でラフに扱ってみた

スマートウォッチとして機能的には必要十分レベルにあるといえるWatch 1だが、耐久性/防塵防水性はどうだろうか。折も折、Go To トラベル キャンペーンに便乗して夏の伊豆へ出かけることになり、そこで海水に浸しても無事かどうか検証することにした。

ホテルにチェックインして早々水着に着替え、いざビーチへ。左手首のWatch 1ともども一気に首まで海水に浸かる。波がくるとタッチパネルが勝手に反応することを除けば、動作はごく普通。泳ぐこと10分、何も起こらない。読み物としては一騒動起こってほしいところだが、伊豆の海と同じ“ベタ凪”の状態だ。

しかし、写真を撮ろうと波打ち際にいたところ、思わぬ事故が。うっかりWatch 1を落としてしまったのだ(偶然ですよ)。当然砂まみれになり、磁性ありの充電端子には砂鉄がびっしり取り付いた。IP68準拠の防塵防水とはいえ、海水や砂鉄の付着は性能保証の対象外、故障したとしても文句はいえない。

  • Watch 1

    Watch 1をうっかり波打ち際に落としてしまった……

そこへ再び波が。伊豆の海は透明度が高く、水中のWatch 1がはっきりと透けて見える。陽の光が射し込み、いつかどこかで見たような……「下町のナポレオン」を標榜する焼酎のCMを彷彿とさせる絵面だ。これは写真に収めねば。

シャッターチャンスを待つこと5分。寄せては返す波に幾度となく揉まれるWatch 1を見守りつつ、ようやく納得いく写真を撮ることができた。もちろん、脳内BGMはビリー・バンバン。

  • Watch 1

    5分ほど波に揉まれ(揉ませ?)、伊豆の海の透明感を演出

それから小一時間ほど泳いだが、Watch 1はまったくケロリとしている。充電端子に取り付いた砂鉄は、水着でゴシゴシやるとだいたい落ちたが、これでいいのか。いいのだろう、支障なく動いている。タッチセンサーが自己容量方式なのか、波に反応して画面が勝手に動く(いつの間にか心拍数を表示しているなど)ことはあるものの、粉塵の侵入が完全に防護され水面下での使用が可能というIP68の期待値を超えるタフさがあることは確かだ。

  • Watch 1

    充電端子に砂鉄がびっしり付着したものの、水着で拭き取れば支障なく使えた

その翌日にはホテルのプール(もちろん塩素入り)に入れられたり、大浴場のお湯(40度前後)に数十分浸されたりと、引き続きWatch 1はやられ放題の目に合うが、誤動作の兆しすらない。しかも充電完了から3日を経過したにもかかわらず、バッテリー残量は45%というエナジーセーバーぶりだ。

それなりに値が張るから乱暴に扱えず、1日1回の充電が欠かせないスマートウォッチばかり利用してきた身には、Watch 1のタフネスさがかなり新鮮に感じられた。

ひとつは持っておきたい「ジェネリック・スマートウォッチ」

週に1回、1時間のペースで充電するために腕から外したことを除けば、約1カ月にわたり昼夜を分かたず、文字どおりの密着取材を敢行したわけだが、“着けっぱなし”対応のスマートウォッチには以下の3つの装備・機能が求められていることを実感した。そしてWatch 1はすべてを満たしている。

1つめは「タフさ」。この言葉には防塵防水性能とバッテリー持久性という2つの意味があるが、前者を高いレベルで満たしていないと各種のデータ測定精度が低下する——心拍数や移動距離、睡眠時間の測定は"着けっぱなし"が大前提だ——ため、IP68の期待値を超えるタフさが欠かせない。そして“着けっぱなし”を支えるのがバッテリー持久性だ。ごく普通に使って週1回の充電で済むのだから、毎日の充電から開放されると考えるだけでも気がラクになる。

  • Watch 1

    Watch 1は歩数計としても使える。走行距離や消費カロリーも同時にチェックできる

2つめは「通知転送」。スマートウォッチを名乗る腕時計の多くに採用されている機能で、特に目新しさはないが、Watch 1はこちらも対応している。スマートフォンへの着信をバイブレーションで知らせてくれるほか、LINEやTwitterといったSNSアプリの通知も即座に転送してくれる。家にいて水を飲もうと冷蔵庫まで歩くとき、洗面所へ行くときまでスマートフォンを持ち歩くことはないが、Watch 1はそんなわずかなスキも見逃さず、1秒足らずのタイムラグで通知を届けてくれた。これも“着けっぱなし”だからできるワザだ。

3つめは「樹脂」。バンドを含め、腕時計はアルミやステンレスなど金属製のほうが質感が高いことは確かだが、周りの品々に知らず知らずのうちに傷をつけてしまうもので、実際ノートPCのパームレストが傷だらけというスマートウォッチユーザーは多いはず。Watch 1は樹脂製なので、MacBook Proに傷ひとつつけることなく、この1カ月を過ごすことができた。

不満がまったくないわけではない。通知のフォントサイズが固定で、1画面あたりの文字数が最大27字(全角9字×3行)と少なめなこと、選択できる文字盤が5種類で増やせないこと、Watch 1単体ではアラームを設定できないこと(スマートフォンアプリで行う)、などと使い勝手の部分には改良の余地がある。今後、ユーザーの要望に応えてくれることに期待したい。

それにしても、この充実度で4,000円を切るとは安すぎて不安になるレベルだが、海水に浸してもお湯をかけてもまったく動じず、バンドの留め具(樹脂製)の塗装が少し剥がれた以外、変化らしい変化はない。数万円もするスマートウォッチは傷つけないよう気を遣ってしまうが、1年で1日あたり10円ちょっとのコスト感のWatch 1ならどれだけ雑に使っても構わない気がするし、実際躊躇なく手荒に扱ってしまった。しかも通知転送の恩恵を受けながら。

Watch 1のように、タフに使えて基礎機能もしっかりしており、それていて安い「ジェネリック・スマートウォッチ」は、もっと幅広いユーザに受け入れられる余地があるように思う。

  • Watch 1

    バンドの留め具部分の塗装は少し剥がれたが、これはこれで味があるかも