女優の松本まりかが、フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)のナレーション収録に臨んだ。今回読んだのは、11・18日に2週連続で放送される『禍の中でこの街は』。新型コロナウイルスに襲われた新宿二丁目のショーパブを経営するコンチママ(72)たちの奮闘に密着した作品だ。
デビューから約20年でブレイクを果たした矢先にコロナで仕事がストップしてしまい、喪失感や絶望感を味わったという松本。コンチママの姿と自身をどう重ねたのか――。
■苦境の二丁目の人々に「ものすごく共感」
コンチママが経営するショーパブ「白い部屋」は、コロナで3カ月にわたり休業を余儀なくされた。その間、店の収入は途絶え、月に130万円の固定費が重くのしかかり、赤字は膨らみ続ける状況。コンチママは店の存続をかけて金策に奔走するが、長年、店を支えて来たベテランキャストたちが将来の不安を抱え、店を離れることを決意してしまう…。
そんな今回のナレーション収録を終え、「今、自分に必要な映像でした。最近はテレビとかもなかなか見られなくて、自分の中でインプットが少なく、アウトプットばかりだったので、すごく欲していたんです。そんな状態の中で、このディープな生き様を見られてものすごい感じることがありました」という松本。
なぜ“自分に必要な映像”だったのかを聞くと、「私はこれまでの20年間、なかなか映像のお仕事が多くなく、時間にゆとりがある時期もあったので、今回こうやってコロナで仕事ができなくなっている方たちがいるということを知れて、ものすごく共感できたし、今の自分がすごくありがたいことだというのを改めて感じました。とても必要なタイミングでこの題材を与えてもらえたと思うんです」と答えた。
■20年経ってやっと手に入れたものが…
番組では、コロナ禍のピンチに立ち向かっていくコンチママや仲間たちの姿が描かれる。松本も、今年放送されたドラマ『竜の道 二つの顔の復讐者』(カンテレ・フジテレビ系)がコロナで撮影中断になったことについて、「その喪失感たるや、絶望感たるや…。もしかしたらもうやれないんじゃないかという不安もあって、本当にショックでした」とコメントしていた。そこから、どうやって気持ちを持ち直したのか。
改めて、当時の心境を「いやぁ、きつかったですね。やっぱりずっと20年間、本当に綱を渡るような感じで1つ1つ仕事をやってきて、今年になってやっと少し安定してお仕事のお話が頂けるようになってきたのかもと感じ始めていたときでしたから。20年経ってやっと手に入れたものができなくなるなんて、『神様はなんて試練を与えるんだろう』って思ったんです」と振り返りながら、「自粛期間はそこでやさぐれず、自分を鍛えようと思ったんです」という。
「喪失感や絶望感があっても、今回の『白い部屋』の人たちみたいに、仕事がなくて転職しなきゃいけないとか、家がなくなってしまうとか、借金しなきゃいけないという状態ではない。もっともっと困っている人たちがいるんだから、そうした人たちの苦しみを少しでも感じられる環境に、自分を厳しく置こうと思いました」と決意した松本。
具体的には「人に会うことは大好きなんですけど、友達にも絶対に会わないと決めました。もし自分がコロナになって、相手役の方にうつしてしまったら、自分のせいでまた撮影が中断してしまうなんて、絶対にできない。だから、あの2カ月間は1人で淡々と、自分より苦しい人たちのことをいかに想像できるかというのを課していました。そんな偉いことじゃないんですけど、忘れがちになってしまうので」と明かした。