アウトプットとインプットで、クリエイター成長の両輪に
――今回は4会場+オンライン会場と、いつもと違った形式での開催ですが、注目ポイントはどこでしょうか?
別所:それはなんといっても、「オフィシャルコンペティション supported by Sony」。世界中から集まった、現在進行形で成長しながら映画づくりをしている映像作家たちの、画家でいうならデッサン画のような作品たちです。インターネットにも無数の映像作品がありますが、個人の好みや言葉の壁のためにどうしてもジャンルは偏ります。映画祭ではアジアから南米、北欧まで、いろいろな国のいろいろな価値観、表現、物語、人生に、幅広く、しかも目の前で出会えます。そこを一番見ていただきたいですね。
いま世界で活躍している映画監督や俳優の活躍の一歩目がショートフィルムであることは少なくありません。有名になってからも好んで出演する人もいます。今年は「パラサイト」のポン・ジュノ監督の作品や、ジョニー・デップの出演する作品も上映される予定です。しかも、昨年から試みていたオンライン上映を、今年は本格的に実施することになりました。オフラインの会場に来られなくても、多くの作品をご覧いただけます。
そういう作品群の中で、「シネマトラベル」と僕は呼んでいるのですが、映画を通じたいろいろな旅を楽しんでほしいと思います。
冨田:宝探しみたいですね!
――本当ですね。オンライン上映では、会場と同じものを視聴できるのですか?
別所:オフィシャルコンペティションはそうです。ただ、リアル会場とオンラインではイベントを変えているので一部異なっています。
――会場へ行くことならではの楽しみもあるわけですね。
別所:もちろんです。僕たちも、感染防止対策をしっかりしたうえで、リアルな現場で何ができるのか、試行錯誤を続けていくべきだと思っています。リアルとオンラインをつなぐイベントもありますし、リアルだけにこだわって実施することもありますよ。渋谷では、ビルの上にある屋外フットサル場に大きなスクリーンを設置して、非常に換気の良い環境で上映する予定です。
今できる、僕たちなりの楽しみかた、映画との付き合いかたを、行動として表現していきたいと思っています。
――ソニーがサポートする初めての映画祭でもありますが、冨田さんはどんなところに期待していらっしゃいますか?
冨田:映画祭は非常に多くの要素で構成されていますよね。例えば、アカデミー賞へつながるオフィシャルコンペティションもそのひとつで、これはクリエイターが自分の作品を世に送り出す「アウトプット」といえます。
それとは逆に、いろいろなクリエイターをお招きして、創作に対するマインドを語っていただくような、シンポジウムやトークセッションも用意されています。若いクリエイターからすると、それらは先輩からさまざまなことを学べる「インプット」の方向にあるもの。成長するのに必要な「アウトプット」と「インプット」、両方の場が用意されていることに意義があると思います。
斎藤工さんや、『新聞記者』の藤井道人監督のオンライントークイベント、「Creators’ Junction partnered with Xperia」と題して、映画監督の河瀬直美さんとアーティスト・ミュージシャンの常田大希さん(King Gnu / millennium parade)をお迎えするセッションなど、若いクリエイターにとって良い刺激を得られる場になることを楽しみにしています。
あとは、2021年に新設される「スマートフォン映画作品部門 supported by Sony」に向けて、スマートフォンによる作品づくりがどんどん当たり前になっていってほしいですね。弊社のXperiaシリーズでも、21:9というフィルムに近い画角で撮影できるプロ用カメラのテクノロジーを注入したモデルを提供していますので、多くのクリエイターに使っていただき、いろいろなフィードバックをもらっていきたいと考えています。