――本書では、新自由主義的なシステムの中での生きづらさについても書かれています。とはいえ、芸能界もかなり弱肉強食、実力主義なイメージがあります。
やっぱりからんでても、強い人が多いなと思いますね。妥協をしなかったり努力家だったり、対人に関して強いっていうのは感じますね。でも、別にそれは自分の性質がそうじゃないっていうことであって。以前はうらやましかったり目指したりしてましたけど、今は遠い星の話みたいに、あんまりピンとこなくなっています。 でも、持論をしゃべってるのを聴いたりしてても、どうしても依存してしまうような人に寄り添って、言葉を紡いでる人は少ないっていうか(笑)。もちろん、寄り添ってコメントされていると思う方もいらっしゃいますけどね。
――それこそ若林さんは、『激レアさん』や『あちこちオードリー』などを見ていると、少数派の人たちにも寄り添っているイメージがあります。
実は寄り添うという気持ちを念頭に置いたことはなくて、単純に興味があるんですよね。面倒くさい人間で、メシとか食べに行っても、その人の子どものころから今日までを聞くのが好きで、すげえ面倒くさがられるんですけど(笑)。なんか、ただ単純に聞くのが面白いんですよね。
――あとがきでは、「ずっと内面ばかりを覗き込んで他人を見てこなかったが、他人への興味が急激に湧いてきた」という旨が書かれてましたが、他人への興味を持つようになったのは、最近のことなんでしょうか。
たしかに、こうやって聞いていただけると、もしかしたらキューバに行った4年前では、『あちこちオードリー』でああいうふうにできてないかもなって、今思いましね。ナルシストであるし、自意識過剰であるし、自分のことばっかり見てましたよね(笑)。内面が髪型だとしたら、何度も鏡を見て直しているような感じで。
■仕事での変化「あまり先を見なくなった」
――若林さんは、今年の上半期TV番組出演ランキングで上位にランクインするなど、お仕事の面でもとても好調です。旅などを通して変化があったのでしょうか。
質問と合ってるかわからないんですけど、テレビ出演本数とかわかりやすい価値としてニュースになると思うんですけど、よほどの天才じゃない限り、時代が流れて年を重ねていくと、若い人に変わっていくと思うんですよ。またいずれ、50歳とか60歳とかになって、仕事がない自分たちに戻ると思うんです。「また仕事がない時期がこの先来る」と考えたときに、「きょう1日が特別なんだな」「もう背伸びせずにやるしかない」っていうふうに変わってきて、あまり先を見なくなった感じですね。
――若林さんといえば、最近noteもスタートさせましたね。
頭が良くないわりに言いたいことがある人間なので、テレビにおいては非常に整えて、少しでもダメージをくわらないようにしゃべってしまうんです。単純に叩かれるのにおびえてるんですよね、言いたいことあるくせに。お笑い芸人としてあと何年ぐらいテレビでお仕事させてもらえるのかなと思うと、せめてラジオリスナーやライブに来てくれてる人には、整えてない言葉を今のうちに届けておきたいなと。
――ここまでのnoteでの反響はいかがですか。
SNSとかは、叩かれてる人や悩んでいる人に対して「応援してくれるサイレントマジョリティーの人を想像しなきゃ」って言ったりしますけど、そんなの想像できないですよね。叩く言葉って強いし、サイレントなわけだから、想像するのって非常に難しいと思うんですよ。
僕はライブをやったりして応援してくれる人がいるのは分かってたんですけど、noteのコメント欄を見ると、その人たちが生活をしているんだなっていうのが手に取るようにわかりました。普段の生活をしている人が、ラジオ聴いてくれたりテレビを見てくれてるんだなと思うと、非常に励みになりました。サイレントが可視化されたということだと思うんですけど、非常にやって良かったなと思います。